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第1章 転生&雫 編
授業が始まった。
しおりを挟む私は……ゆっくりと目を開く。視界には見慣れない天井。そして、隣には保健室の先生が椅子に座っているのが見えた。
「まぁまぁ、ようやく起きたの?大丈夫かしら?あなた気絶してまた運ばれてきたんだけど、その事は覚えてる?」
保険の先生は私が起きた事に気が付くと声を掛けてくれた。
「えっと……い、いえ。全然覚えてません。誰かとぶつかって……気付いたらここに寝てました。」
「そうなの……?すごくもったいない。…………って、これは本音ね。まぁ、わかりました。今日は一応休んで行きなさいね。お母さんには連絡しとくから。」
「わ、わかりました。何から何までありがとうございます。」
先生は「いいからいいから。」と言って私の親に電話をかけるために保健室を出ていった。
「……………………っ。」
私はガバッと布団を被った。なんだろう、今は頭の中では大混乱が起こっている。
あの男の人?の事を思うだけで顔が熱くなり、心臓がドキドキする。何でだろう!?
私は意外に早く意識を取り戻していた。でも、その時は男の人に丁度おぶられている時で、体と体がすごく密着していた。
それに気付いた時は、顔が一気に熱くなり心臓もドキドキし始めた。声を出さなかったことだけは自分を褒めたい。
それで……私はその男の人に声を掛けて、この人から降りようと思った。でも……何故か声が出ない。ギュッと彼に身を任せてしまう。な、なんで!?
この人ともっともっと密着したい。今離れるのは惜しい。後で絶対後悔する。
その時は自分でも分からないくらい気分が謎に高揚していた。そのため、変な事も思ってしまった。
結局、そのままおぶられた状態で保健室に着いてしまった。
今まで起きていた事を知られるとなんだか、その後この人に自分を運ばせたなんて思われ、嫌われたくないと思ってしまった私は、気が付いていないフリをするため目を瞑り体の力を抜き脱力した。
その後、お姫様抱っこでベットまで運ばれるとは思わなかったけど、自分にとってとても有意義な時間だった。
私、神崎 葵は生まれた頃から不幸体質である。どんな事をしても失敗し、周りに迷惑を掛けてしまう。
そのため、幼稚園の時は自分のせいで友達の子に大きな怪我を負わせてしまった事が原因で葵は極力人と関わらない事にしていた。もう自分のせいで傷付く人を見たくないためだ。
そのため葵は小、中、そして高校生になった今でも友達がおらず、孤立の学校生活を送っていた。
でも、葵はそれに適応していた。
でも、極力関わらないようにしていたとしても、つい誰かに迷惑をかけてしまう時もある。どうしても巻き込んでしまう。こんなダメで頼りにならない。自分はもう嫌いだった。
葵は時たま、夢を見る。
白馬にまたがる、カッコイイ王子様が自分を迎えに来てくれる……そんな少女マンガのようなドラマチックな夢だ。
でも、そんなものはただの夢。自分には永遠に、そんなハッピーエンドなんてものは来ず、王子様は現れないものだと確信していた。
……でも、私は王子様を求めて、この学校に来た。
たまたま自分の住んでいる地域の学校に男の人がいたのだ。
もしかしたら自分がその婚約者の中に入れるかもしれない、という淡い期待は持っていた。でも、ほとんど諦めている状態だった。
だが、今日ぶつかったのは男の人だった。いつも不幸体質で巻き込んでしまう人に運命で男の人が選ばれてしまったのだ。
あの時は相当、焦った。初めて見た男の人。それが自分の夢に出てくる王子様によく似ていたからだ。
一瞬で自分はその人の虜となってしまう。
こんなの初めての感情だった。
「あぁ……せめて名前ぐらい聞きたかったです。でも、また会える気がします……私の……“王子様”」
葵は布団の中その王子様のことを思い続け、1人で勝手に悶えていた。
☆☆☆
俺はとぼとぼと歩いて教室に戻った。さすがに来た道を戻るだけだったので迷うことは無い。けど、はぁ……なんかすごく疲れた。
教室に入るとクラスの皆は既に体育着から制服に着替えていて担任の奈緒先生が既に授業を始めていた。
「ずいぶん遅かったですね。何かあったんですか?」
これで「女の子とぶつかって遅れました。」なんて言ったら問題になって、ぶつかった女の子が特定され、責められてしまうかもしれない。そんな気がしたので適当に誤魔化すことにした。
「えっと。保健室の場所が分からなくて、迷ってました。この学校広くてまだ全然慣れていなくって。」
「そうなんですか、分かりました。確かにここの学校はバカみたいに広いですもんね。さぁ、早く席についてください。授業を再開しますので。」
「はい。わかりました。」
俺は自分の席についた。
確か奈緒先生は数1の先生だったはずだ。
それは教科担当一覧に書いてあるのを確認していた。
俺は、カバンから用意してあった数1の教科書とノートを取り出し、開く。
お、これわかるやつじゃん……
まだ全然簡単だな。
家でずっとやっていた勉強は無駄では無かったらしい。途中から参加したにもかかわらず内容が全て理解することが出来き、奈緒先生が効率良く授業を進めて行ったが楽々ついて行くことが出来た。
──キーンーコーンーカンーコーン
学校のチャイムが鳴り奈緒先生の授業が終わった。
ふぅ、もうひと踏ん張り。
俺はこのままもう1時間授業をし、ようやく昼休みになった。
授業が終わり、昼休みになった途端。クラスの女の子達が俺の周りにノートや教科書を持って集まって来た。
え?……え!?何?
なにがなんだかよく状況が分からず、意味もなく動揺する俺。
あー、カッコ悪いな。
「優馬君、さっきの授業で分からない事があった?よければ私が教えるよ。」
「いやいや、私の教え方上手いし丁寧だから、私が教えるよ。」
「私の方が完璧に教えられるよ。」
……と俺に授業の内容を更に深く教えるために集まってくれたようだ。でも俺は高校3年生までのは勉強は完璧に終わっている。普通の男だったら分からなかったかもしれないけど、俺は別に分かるんだよなぁ。
「あ、う、うん。じゃあ……お願いしよっかな。」
俺は空気を読める男だ。今断ったらその話しかけてきた女の子を傷付けてしまう事になる。それは何としても避けたいところだったので、教えてもらう事にした。うん……復習の復習になるからいいだろう。
そこから数分……しっかりと教えてもらった。女の子なりに分かりやすく纏めて教えてくれたので、すごく分かりやすかった。やっぱり俺みたいに凡人で必死の努力で勉強を完璧にしたやつなんかより、生まれた時から秀才や天才で、それにも関わらず努力に励み、難関の月ノ光高校に入学して来た子達。この子達と俺の頭では性能もスペックもまるで違うんだろうな。
俺はここら辺の範囲を完璧にする時は、何日も掛かったのに、どうやらこの子達は授業の時間で自分の知識としているようだった。
たまに……俺は才能を羨むことがあった。
「ありがとう。とっても、分かりやすかったよ。また頼むかもしれないけどいいかな?」
「うん。任せて。」
「また教えるね。」
「でも優馬君、理解するのがやけに早かったね、もしかして初めから分かってたりして……?」
「あ、い、いやー、勿論わからなかったよ。皆の教え方が上手かっただけだよ。」
「そう?それならよかった。」
女の子達は俺に感謝されて頬を赤く染め、喜びながら俺の席から離れていった。
「はぁ……」
俺は疲労のため息を吐いた。
ちょっとなぁ……気遣いはすごく嬉しいんだけど……ちょっと、神経を使うからしんどいなぁ。
☆☆☆
次の授業は確か……芸術という教科で、美術か音楽の選択だったはずだ。
この選択は学校が始まる前に決めるもので俺は美術を選択していた。理由は、音楽自体があまり得意では無かったためだ。それに美術は割と好きな教科だったからだ。
美術は美術室、音楽は音楽室で別れての移動教室だ。
俺は教科書と筆箱を持ち美術室に向かった。
あ、勿論、美術室までの道が分からなかったので美術の教科書を持っているクラスメイトについて行った。
美術室に着き、指定されていた席に座る。
美術室の机は普通の机より大きい、そして椅子も丸椅子で、背もたれが無い。この感じ……とても懐かしかった。
美術室は様々な道具があり、2人1組で机が設置れている。後で聞いたが席順は美術の先生の厳正なる抽選で決まったものらしい。
辺りを見渡したが雫や由香子はいないようだった。
あー、2人とも音楽を選択したっぽいな。
正直、寂しかった。まだ気軽に喋る人かいないと不安だし暇だ。
今更、美術を変えて音楽にしたとしたら恥ずかしいし、なんと言ってもカッコ悪い。それに俺と美術が一緒で喜んでいたクラスメイトをガッカリもさせたく無かったので美術から音楽に変える訳にもいかない。
そうだ!まず最初に隣の女の子と仲良くなって今の所不安で暇な美術の時間を楽しく有意義な時間に変えよう!
そう思い、隣に座っている女の子の方を見た。
「………………!?」
正直俺はビビった。
なぜなら、俺の隣にいる女の子は黒髪黒目。綺麗なサラサラの髪が肩まであり、トレドマークなのか月のヘアピンを付けている。この女の子はクラス……いや、俺が今まで見たすべての女性の中で1、2を争うくらい美人だった。さらに雰囲気が清楚系とクール系が混ざった感じだった。もちろん!俺の好みドストライクだった。
「ん……!?」
その子が俺の視線に気づいたのかあからさまに席を離した。
なんでかは知らないけど、明らかに俺の事を避けている。なんでだろう?この世界で出会った女性の中で雫や保健室でぶつかった時のあの女の子みたいな不思議な感じがする。
別に嫌われるような事もこの子にした覚えも無いし、まずこの子とは話した事すらない。
多分俺の勘違いだと思うな。それに、俺は男だからすぐにこの子とも仲良くなれると思うから、たぶん大丈夫だけどね。
「隣の席だね、よろしくね。」
軽くその子に話しかけた。
「…………………」
軽く無視された。
ていうか、視線も動かさないし……っ。
な、何でだろう?
聞こえなかったのかな?それかもっと丁寧に話しかけた方が良かったのかな?
もう一度話しかけてみるか……
「隣の席の神楽坂優馬です。よろしく!」
今度はすこし声を大きく出して丁寧に言ってみた。これなら絶対に聞こえてるだろ!
「はぁ……そんなの知ってますよ。後、今後一切私に話しかけないで下さい。近づくのもダメです。触るのも無しです。」
「え!?」
いきなりの完全拒否宣言ですか……俺が何をしたって言うんだよ。
「えっとその理由を聞かせてくれない?」
「そんなの私は男という生物自体が大嫌いだからです。それに私今言いましたよね、話しかけるなと。」
あ、これはダメだ。完全に拒否されてるや……
これ以上会話が成立しないと思い、俺は話しかけるのを一時諦めた。
その女の子とはそこからの会話は一切無く、美術の授業が終わってしまった。この時間かなり気まずかった。
俺は美術の教科書を持って教室に戻ってきた。雫達はもう既に帰ってきていた。
今日の美術はオリエンテーションで先生の話を聞いて終わったが気まずかったせいで普通より長い時間だった気がする。
「優馬君~~。美術どうだった?音楽はとっても楽しかったよ~~。」
「あ、そうなんだ良かったね。」
由香子が音楽の教科書を、持ったまま話しかけてきた。後ろには雫もいた。
「優馬君の方はどうだった~~?」
「あぁ、うん。まぁまぁかな………」
「曖昧だね~~。何かあったの~~?」
俺は美術でのことを由香子と雫に話した。
「……それって北桜 夜依さんね。私も喋った事は無いけど、普通に大人しい人だと思うけど。何かあるの?」
「私知ってるよ~~。夜依さんはね名家の北桜家の娘なんだよ~~。でも何で男の人を嫌っているのかはわからないけどね~~。優馬君の事を嫌うなんて有り得ないよね~。」
あの女の子は北桜 夜依と言うのか、しっかりと覚えておこう。夜依はこの世界に転生して初めて拒否された女の人だ。男だから全ての事が思い通りに行く訳ではなかった。だけど逆に燃えてきた。この世界に転生してから色んな人に会ったけど夜依みたいなタイプは初めてだった。
いつか絶対に口説いて仲良くなってみせる。
そのために積極的に話しかけないとな。俺は心の中でそう思った。
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