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第2章 林間学校&葵 編
林間学校スタート
しおりを挟む林間学校の買い物をしてから数日。
「──今日から3日間、絶対に林間学校を成功させるぞ!」
「「「「「おおおおぉぉっっ!!!!」」」」」
朝早くから集まった俺達生徒会と実行委員会の面々は大きな円陣を組み、実行委員長の掛け声に皆が合わせた。
今日から待ちに待った学校行事……林間学校が始まる。毎日放課後に残ってせっせと用意をして来た俺達はこの林間学校にかける思いは人一倍強い。
俺含め皆はやる気と緊張、興奮の3つの感情でいっぱいいっぱいの表情をしていた。
「では、各々割り振られた役割をきちんと果たしつつ林間学校を全力で楽しんで下さい。先生もできる限りサポートしますので。────では、解散!」
最後に奈緒先生から喝を入れられ、皆がそれぞれの持ち場に移動した。
俺も大量の荷物(おやつや着替え、トランシーバなど)を持ち、同じ班の夜依と葵と一緒にバスを待った。
「ん……どうした、葵。体調が悪そうだけど?」
バスを待つ間、少し時間があったので歯をガタガタと鳴らしながら震える葵に俺はそっと声を掛ける。
「い、い、い、いえ。だ、だ、だ、大丈夫ですよ。
わ、わ、わ、私は優馬くんと夜依さんのいる班の班長なんですからね!!」
そう葵は大きな胸を強調しながら強がるが……正直今のままなら不安だ。緊張しすぎてまともに動く事すら出来ないだろう。
「大丈夫だよ。別に班長だからって気負わなくていいし、葵の事は俺と夜依がキッチリサポートするから。だから気楽に行こう、な!」
笑顔で、葵を安心させる為に言葉を並べる。
「は、はい。よ、よ、よろしくお願い、します!!
わ、わ、私頑張りまふから!!」
「あ……」
「か、噛んじゃいました……」
こりゃ、もう少し気遣わないとダメだな。
俺は葵に積極的に話し掛けつつ、気遣いながら俺達のバスは出発したのであった。
☆☆☆
「…………はぁ、ちょっといいですか?」
「どうしたの、夜依?」
「何故この座り配置なんでしょうか?1回抗議させて下さい。」
バスに乗って数分。夜依が俺に対して強めな抗議をして来た。
「え……座り配置?別に普通だと思うけど。」
だって、バスでは班で固まってる座らなきゃならなかった訳だし。もしかして……3人用の座席に窓側から葵、俺、夜依という座り順番が気に食わなかったのだろうか?
「もしかして、バス酔い?だったら葵と場所を変わって窓側に座ったら?」
「…………はぁ、いえ。もういいです。すみません。我慢します。」
「バス酔いを?」
「あー、はいはい。そうですよ。」
若干キレ気味に答える夜依。
「なんだよ……?」
勝手に抗議して、勝手に黙ってしまう夜依。なので本当の真実が分からず、不思議でしょうがない俺。
でもまぁいいか。あの夜依が簡単に諦めたって訳だし、別に大した事じゃ無いんだろうな。
そんな事を俺は考えながら、バスは目的地へ向けて尚進んだ。
☆☆☆
バスは街を抜け、山道を上り、辺り一面が森で囲まれた所まで来た。
どうやらここが目的地らしく、バスを降りると眼下には広大な大自然が広がっていた。
周りを見ると辺り一面が木、木、木で、耳を澄ませば鳥の鳴き声なんかも微かに聞こえる。大きく深呼吸をしてみると冷たく澄んだ空気が肺いっぱいに流れて、とても清々しい気分になる。
「くはぁ……最高!」
つい言葉が溢れてしまう。それぐらい気持ちが絶好調なのだ。やっぱり自然とは素晴らしいな!
ウッドデッキなんかを大人になったら購入して、婚約者の人と静かに隠居生活を送る……なんていいのかもな。
と、俺の将来の選択肢を1つ増やしてしまう程だった。
☆☆☆
俺達はバスを降りて少し歩き、林間学校が行われる施設まで来た。
ここは……“林の楽園”という公共施設で、複数ある山の全てが敷地というありえないくらいデカい施設なのだ。
今いるここも、この施設の駐車場で一体何台車を止める予定なんだと質問したいくらいの大きさである。
後から調べた事だけど、この施設は国の大事な会談などでもたまに使われるらしく、非常に重要な施設なのだ。
「──皆さん、点呼を取り次第、林の楽園のオーナーに全員で挨拶をしに行きますので、くれぐれも無礼の無いようにして下さい。あなた達は本校の看板を背負った生徒なのだと自覚して下さいね。」
奈緒先生が真剣な表情で全生徒に喝を入れた。
まぁ、身長の問題でまともに喝が入った生徒は少ないような気もするけど……
それから俺達は班で固まって点呼を取り……全員で林間学校のコテージに向かった。
コテージもやはりかなり大きく、オーナーと従業員用の為だけのコテージなのに旅館並みの建物だった。
その建物の前にキチンと整列し、オーナーが来るのを待つ事にした。
──数分後。
「よう来たの。」
杖をつきながらゆっくりと現れた白髪の老人。声はガラガラで手もしわくちゃ。腰が相当曲がっており、身長がかなり低く見えるその女性。でもどこか気品さと風格に溢れており、正しくこの人がここのオーナーという感じがした。
「ワシはここのオーナーの森じゃ。月ノ光高校の諸君。歓迎するぞぃ。」
この人がここのオーナー。ここのトップか。
ニッコリ笑いながら歓迎してくれる森さんを見て、とても優しそうだなと思った。
「ご無沙汰しています、森さん。」
「おー、奈緒さんかい。久しぶりじゃの。」
初めに奈緒先生がすぐに挨拶をし、続いて実行委員長が学校を代表して挨拶をする。
俺達は実行委員長の声に合わせて、なるべく大きな声で元気よく挨拶した。
「──それでは、ここで林間学校の開校式を始めたいと思います。」
どうやら、森さんの挨拶の後にすぐに開校式をし、すぐに班で別れて行動させるつもりらしい。
という事で急遽林間学校の開校式が始まった。司会は奈緒先生で、森さんは微笑ましく俺達の事を見守っていた。
初めに行われたのは、実行委員長からの挨拶で実行委員長は唐突な開校式のはずなのに無難に話をしていた。
「──では、次は生徒会から林間学校の全体スケジュールをもう一度確認してもらいます。」
「「「「え?」」」」
奈緒先生の生徒会指名に、周りにいた生徒会の俺達はビクッと身震いした。いくらなんでも急すぎるだろ。しかもなんで生徒会!?生徒会は実行委員会を手伝ってはいるけど、どちらかと言えば裏方の存在なんだぞ!?
なんで大勢の前に立たなきゃならないのだ!?
一応、俺は楽しみ過ぎて林間学校の全スケジュールは頭に入っているのが幸いだけど……周りの生徒会の人達は大丈夫だろうか。
「それでは生徒会を代表して、神楽坂 優馬くん。説明をお願いします。」
「…………っ!?………はい。分かり、ました。」
はぁ……だと、思ったよ。だってさっきから奈緒先生と目が合ってたからな。
小さなため息をついた後、皆の前に立った俺。
全生徒の期待と熱烈な視線が俺に集中する。
俺は覚悟を決め、頭にインプットした全スケジュールを簡単に切り崩しながら説明を始める。
「まず今日の1日目は、開校式が終わった後にテント設営をし、それが終わったら昼食を挟みます。続いて2日目に行うキャンプファイヤーとBBQで使う薪拾いを近くの森林で行い、少しの自由時間の後に夕食のカレーを班で作る予定です。これが1日目です。
2日目は、班ごとに朝のハイキングに行ってもらいます。ハイキングが終わったらすぐに朝食を食べ、近くの川でイカダで川下りをした後、昼食を食べ、自由時間の後に班ごとにBBQをします。BBQをし後片付けが終わったらキャンプファイヤーを全生徒で行い、最後に夜の肝試しを行います。これが2日目です。
3日目は施設の掃除とテントの撤去の後に閉校式を行います。午前中には全てのスケジュールが終了します。
……簡単な説明でしたが、これが林間学校のスケージュール内容です。ですが人数的に全班一斉に1つのイベントが出来ないので、各班ごとに自由時間や昼食の時間がバラバラになってしまうと思いますが、臨機応変に対応してください。これで説明を終わります。ありがとうございました。」
かなりの長文説明でよく噛まずに言い切れたと思う。俺は心の中で自分を褒める。褒めて褒めて褒めまくる。
沢山の拍手の中、俺は皆にお辞儀し自分の居た場所に戻った。
「それでは次に森さん。よろしくお願いします。」
「分かったのじゃ。」
ん、また森さん?一体何をするんだろう。
森さんは名前を呼ばれると、ゆっくりと歩いて再び俺達の前に立った。
「ワシからは、テント設営の場所と倉庫の使い方、それからここにいる危険な生き物の事を色々と説明するのじゃ。」
あー、なるほどなるほど。オーナーとしての責務か。
森さんはテント設営の場所がここから近いという事と倉庫には危ない道具もあり使い方には充分気をつけて欲しいという事を説明してくれた。
「最後に、この山には危険な生物が2種類程いるのじゃ。」
森さんは今までの気楽な表情を一気に変え、真剣な表情で俺達に話し掛ける。その表示は確かに威厳のある顔で、俺達はその変わりように眉唾を飲む。
「1つは熊、じゃが熊は滅多に人目に現れる事は無い臆病な生き物なのでまぁ大丈夫じゃ。それに熊よけの対策をきちんと心掛けておれば問題ないはずじゃ。じゃが次の生物は、とにかく危険なやつなんじゃ……」
森さんは一旦言葉を切ると、1度深呼吸をして再開した。
「そいつは“蚊”じゃ。その蚊に刺されると急な発熱と嘔吐、徐々に意識が朦朧として行き、最悪衰弱死するというかなり危険な蚊じゃ。更に厄介な所は蚊じゃから刺された事に気付きにくいという所じゃ。痒みも痛みもほぼ無いに等しいからの。じゃが心配することも恐れることもない、その蚊は虫除けスプレーや蚊取り線香などにめっぽう弱く、簡単に撃退できる。それに事前にワシら職員が総出で山の至る所に殺虫剤を撒いて置いたからほとんど身の危険はないじゃろう。じゃが、油断は禁物じゃという所を常に考えておいて欲しいのじゃ。」
森さんはそう話終えると、一礼した。
蚊……か。恐ろしいな。
よし……虫除けスプレーの効果で常に身を纏うように心掛けないとな。
「では、これで開校式を終わります。皆さん、思い出に残るような楽しい林間学校にしましょう!」
奈緒先生の閉会の言葉に生徒全員が返事をし、開校式は終わった。
──俺はまだ知らない……この林間学校が辛く悲しいものになると。
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