記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇

第146話 一応の勝利

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「オジャル伯爵? なぜあなたが拙者達の戦いを止める?」

 オジャル伯爵は階段を急いで下りると、俺達の前で床に手を着き土下座を始めた。

「頼むでおじゃ! ここに匿われているオークを捕らえに来たでおじゃろう!? 後の責任はまろがとる! どうか……どうかここは王国騎士団と黒蛇部隊を率いて退却してほしいでおじゃ! 頼む!!」

 オジャル伯爵は涙を流しながら何度も床に頭を打ち付ける。オジャル伯爵が言うオークとは以前戦った友人のオクバのことなのだろう。
 伯爵という身分でありながら、不器用にも友のために必死に懇願してくる。

「……伯爵様にそこまでされちゃ、俺達も退くしかね~な~? バルカウス~?」

 オジャル伯爵の様子を見て、ジフウはバルカウスに進言する。

「……オジャル伯爵に頼まれては仕方あるまい。王国騎士団も黒蛇部隊も撤退するぞ」

 不服そうな顔をするバルカウスだが、これ以上は無意味と判断し、ジフウの進言に同調する。

「だがよ、お前ら撤退するつったって、この鉄格子はどうするつもりだ?」

 触って確認してみたが、鉄格子はかなりの硬さだ。操作装置はさっきポールが壊してしまったし……。

「それじゃ、最後に出番がなかった俺のとっておきも見せておくか。離れてろ、ゼロラ。――<龍の宣告>」

 俺に鉄格子から離れるように促した後、ジフウの左腕に青い風魔法が纏われる。バルカウスの横やりでジフウが使わなかった技だ。

「王国騎士団の連中よ。死にたくなかったら鉄格子から離れておけ」
「え……?」

 そんなジフウの言葉に騎士達が反応する間もなく、その左腕はすでに鉄格子目がけて振り払われていた。

「<青龍の左>!!」


 ――ギャァオォン!!


 ジフウの左腕がまるで龍の咆哮のような轟音を響かせると、龍の爪で薙ぎ払われたかのように鉄格子が吹き飛ばされていた。

「ジフウ隊長。騎士どもも技の巻き添えさくらっとうばい」
「別にいいだろ。ここで見たことも『頭を打ってよく覚えてない』ってことにでもしとけ」

 騎士達は一応無事なようだが、<青龍の左>の衝撃による余波で倒れるか気絶するかとなっている。
 なんとか動ける騎士が動けない騎士を担いで撤退を始めた。

 <龍の宣告>からの<青龍の左>。<黒蛇の右>をも上回る圧倒的な破壊力。どうやら今回もジフウとの戦いはお互いに全力を出しきれずに終わってしまったようだ。

「再戦の機会を楽しみにしてるぜ、ゼロラ。ウハハハハ!」

 後ろ向きに俺へ目配せすると、ジフウは高笑いしながら黒蛇部隊を連れて王国騎士団と一緒に撤退していった。

「黒蛇部隊隊長ジフウ……。底の見えねえ恐ろしい男だ」

 だがこれで一応の勝利と言っていいだろう。
 ジフウ達が撤退したのを確認した俺は泣き崩れているオジャル伯爵に声をかけた。

「オジャル伯爵。俺はバクト公爵を助けるためにここへ来た」
「なんと!? バクト公爵を助けにでおじゃるか!?」
「お前はおそらくオクバの奴を助けるためにここにいるんだろ? お前とは色々わだかまりもあるが、今はバクト公爵の元へ案内してくれ」

 ラルフルの件、ミリアの件、マカロンの件。こいつとは因縁の間柄だが、今はそんなことは関係ない。

「……わ、分かったでおじゃる。ついて来るでおじゃる」

 オジャル伯爵も俺が敵ではないことは理解したようで、バクト公爵がいる部屋へと案内してくれた。



 階段を上った先、屋敷の最上階。その奥にバクト公爵がいる部屋があった。部屋の扉の前には護衛と思われるサングラスを付けた二人のガタイのいい男が立っていた。

「こ、この者はゼロラという男でおじゃ。敵ではないでおじゃ。ど、どうか通してほしいでおじゃ」
「少しお時間を」

 必要最低限のことだけを言って、護衛の一人が部屋の中へと入った。
 少しするとバクト公爵への確認が取れたのか、部屋の外に戻ってきた。

「どうぞ二人とも、お入りください」

 許可は得られたようだ。俺とオジャル伯爵は部屋の中へと入っていった。
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