記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第279話 それが一番おかしかった

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「…………何を言ってるんスか? 裏切ってるに決まってるでしょ? オレは最初からジャコウの――」
「本当の上司であるジャコウのことは呼び捨てか。だからますます俺には見えねえんだよ。お前が……"本気でギャングレオ盗賊団を裏切っている"ようにはな……」

 俺の言葉を聞いたサイバラの表情からニヤケ面は消え、どこか焦燥の色が見え始める。

「お前が【虎殺しの暴虎】ではないかと俺が考えるようになるより前――いや、それ以降のお前の行動を振り返ってみても、俺にはお前が"完全に裏切っている"ようには見えねえんだ」
「……それはどういう意味スか?」

 サングラス越しにでも分かるサイバラの突き刺さるような眼光。
 俺はそれに応えるように疑問を一つずつぶつけていった。

「お前はルクガイア暗部の人間ではあるが、ジャコウに忠誠は誓っていないな?」
「ハッ! 誰があんなウジ虫野郎なんかに素直に従うもんスか!」

「だったらなんでこれまでギャングレオ盗賊団に潜伏し続けていた? ジャコウが怖かったか?」
「そんなわけないでしょうが! オレはオレでギャングレオ盗賊団を"利用したかった"からずっと潜伏してたんスよ!」

 サイバラにはジャコウの命令以上に何か個人的な目的もあったのか。
 それが何であれ、俺が聞きたいことは別にある。

「だったらお前がギャングレオ盗賊団で馬鹿やりながら楽しくやってたのも、全部"利用するため"の演技に過ぎなかったってことか?」
「……ええ。その通りッスよ」

「他の幹部からも頼られ、なんだかんだで部下にも信頼されてきたのも全部か?」
「…………そうッスよ」

「俺達が"円卓会議"で王宮から脱出する時にサポートしてくれたのもか? お前の直属の部下三人をギャングレオ城の崩壊から身を挺して助けたこともか?」
「…………」

 俺の質問にサイバラの口数はどんどん減っていき、ついには黙り込んでしまった。

 俺は――サイバラが黙り込んでしまったと思われる"最大の理由"をぶつけた。





「サイバラ。お前は本当はギャングレオ盗賊団を裏切りたくなんかなかったんだ。密偵として潜伏していながら、ギャングレオ盗賊団の一員として過ごしていくうちにお前自身も――」
「黙れぇええええ!!!」

 俺の言葉を遮るように、サイバラが怒号をかぶせてきた。

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ――黙れぇええええ!!!」

 サイバラは壊れたように俺の言葉を遮り続ける。
 これほど感情を露にするところを見ると、やはり俺が言ったことがサイバラの本心だったようだ。



 『ギャングレオ盗賊団の一員でありたい』――

 それこそがルクガイア暗部構成員であり、【虎殺しの暴虎】と呼ばれる男――サイバラの本心だった。



「ゼロラぁ……! てめぇに……てめぇにこのオレの何が分かるって言いやがるんだぁ!? 知った風な口を利くんじゃねぇ! 過去も――記憶もねえくせによぉお!!」

 俺の言葉に怒り心頭となったサイバラは、拳銃を取り出して銃口を俺へと向けてきた。
 ――魔幻塔で俺とマカロンに向けたのと同じものだ。

「サイバラ……。そもそもお前はどうしてジャコウの配下になったんだ? お前の過去に何かあったというのか?」
「オレぁ……このルクガイア王国内で見れば結構な大罪人でねぇ……! それを免除してもらうためにジャコウなんていうウジ虫野郎なんかの配下に収まってたんスよぉ……!」

 ルクガイア暗部としてジャコウの配下になっていることは、サイバラにとっても本心ではないようだ。

「ついでだぁ……ちょっとぐらい教えてあげるッスよぉ……! このオレが……"何でジャコウなんかに従ってる"のかをよぉ……!」

 そしてサイバラは少しずつ語り始めた。
 己の"忌まわしき過去の記憶"を――
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