BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい

文字の大きさ
45 / 46

夏祭りの夜 後編

しおりを挟む
夜空に花火が弾け、境内を赤と金に染める。
屋台の影で身を潜めながらシリウスの胸元で淡く光ったペンダントを凝視する。

【キャンサー・ユラーク 51% → 70%】

(うおっ!? 一気に跳ね上がってる! ……ってことは、萌え確定、キャンサーの告白成功やな!)

胸を撫で下ろし、俺は再びそっと二人の様子を覗き込む。
だが肝心の会話までは聞き取れない。



「……シリウス君。僕は、あなたが好きです」

吐き出すように、それでいて祈るように紡がれた言葉。
その声には、抑えてきた年月の重みが滲んでいた。

短い沈黙。
シリウスはゆっくりと息を吸い込み、真っ直ぐ答える。

「……ごめん。僕はその気持ちには応えられない」

「なぜ……ですか」
キャンサーの声は震えていた。
「僕は本気なんです。ずっと孤独だった僕に、あなたは光をくれた。だから……どうして」

シリウスの瞳が揺らぐことはなかった。
「好きな人がいるから」

「……誰なんです」
キャンサーは一歩詰め寄る。
「あなたはいつも誰かを見ている。僕じゃないのは分かってる。けれど、それでも僕は——」

シリウスは淡い笑みを浮かべ、しかし首を横に振った。

「……本当に、僕だったのかな」

「……え?」

「確かに声をかけたことはある。けど——君を一番支えてきたのは誰だ?
 困ってる時に自然と隣にいて、孤立しそうな時に手を差し伸べてくれたのは。
 ……僕じゃなかったはずだ」

花火が夜空を裂き、キャンサーの横顔を赤く照らす。
言い返そうとしても、浮かぶ記憶はひとつだけ。
救ってくれた笑顔。受け入れてくれた温もり。

シリウスは静かに続ける。
「誤魔化す必要はない。君が誰に惹かれているのか、自分が一番分かってるはずだ。
 ——ただ、僕も退くつもりはない。負ける気もない」

キャンサーは強く唇を噛み、やがて小さく呟いた。
「……そう、ですね」

その背を踵で返し、人混みへと消えていった。



屋台の影でそれを見ていた俺は、胸を高鳴らせていた。
二人がなんだかスッキリした様子でお互いを見ていたからだ。

(あのお互いを見る熱い眼差し……やっぱり告白は成功したんや! 好感度も爆上がりやったし!)

だがその数秒後、キャンサーはまっすぐこちらへ向かってきた。
眼鏡の奥の瞳は、先ほどまでの迷いを完全に捨て去っている。

「……アリエスさん」

呼吸を整える間もなく、手首を掴まれた。
そして——唇を重ねられる。

「……っ!?」

世界が一瞬で止まった。
提灯の灯りも、祭囃子も、夜風の涼しさも、すべて遠のいていく。
残ったのは頬を灼く熱と、暴れる心臓だけ。

ラスが「お、おい!?」と叫び、
スコーピオが「はぁ!? てめぇ何してんだ!」と睨み、
シリウスはただ、揺るがぬ瞳で俺とキャンサーを見ていた。

やがて唇を離したキャンサーは、真っ直ぐに告げる。

「……僕が本当に好きなのは、あなたです」

花火が散り、火花の雨が降る。
その宣言は鮮烈で、胸の奥を焼き尽くすようだった。

ペンダントが光を弾き、数字が跳ねる。

【キャンサー・ユラーク 70% → 82%】

(な、なんで!? シリウスへの告白やなかったんか!?)

信じられない事実に足が震える。



キャンサーは俺の手を強く握ったまま、周囲を見渡す。
ラス、スコーピオ、シリウス——三人の視線を正面から受け止め、力強く宣言する。

「僕はアリエスさんを本気で好きになりました。——だから遠慮しません。正々堂々、勝負します」

場の空気が一気に張り詰めた。

ラスは頭をかき、苦笑混じりに言う。

「……マジかよ」

思わず心の中で叫ぶ。
(そうだよな!? マジでなんなんだこの状況……!行け、ラス!いつもの調子で流してくれ!)

けれどラスの口から出たのは、いつもよりずっと真剣な声だった。
「けど、俺だって負ける気はねぇ。長年ルームメイトやってんだ。あいつのことなら、俺が一番知ってる」

(……な、なんだと!?)


スコーピオは顔を背け、低く吐き捨てる。
「……チッ。面倒くせぇ。でもな、あいつが笑う顔を他に向けさせるとか虫唾が走るんだよ。……だから容赦しねぇ。潰してでも手に入れる」

(え!?)

シリウスは目を伏せてから、静かに顔を上げた。
「……僕も同じだ。誰がいようと、僕の気持ちは揺らがない。だから正面から挑む。最後に隣にいるのは、必ず僕だ」



(な、なんで全員!? 俺は脇役のはずやろ!?)

頭の中で必死に叫ぶ。
けれど数字も、彼らの視線も、揺るがなかった。

(これってもしかして、、



俺がヒロインポジションにいるのか!?)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

原作を知らないblゲーに転生したので生きるため必死で媚びを売る

ベポ田
BL
blゲームの、侯爵家に仕える従者に転生してしまった主人公が、最凶のご主人様に虐げられながらも必死に媚を売る話。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

処理中です...