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2.クソゲー
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仰向けのまま現状を整理する。
ここはRPGの世界、きっと。自分は主人公、きっと。魔王を倒してエンディングが目標、きっと。
事実を並べる。
魔王に一瞬で負ける。剣も肉体も役に立たない。最初に戻っている。
よくよく考えてみると、いきなり始まって魔王を倒してエンディングなんてRPGに面白味はない。
今時、フリーゲームだってもう少し工夫を加えるだろう。ゲームを始めて、魔王に会って倒すなんてストーリーに何の面白さもない。というかストーリーになってない。
主人公が魔王を倒す動機とか、魔王が城を襲う動機とか、が必要なはずだ。
すでに「魔王が出た」「魔王に攻め入られた」「王様が危ない」「城はメチャクチャだ」がすでに方々で繰り返されている。
ゲームは始まっている。
頭で考えてもしょうがないか、と半ば自棄になりながら立ち上がった。
とりあえず、情報が必要だ。動機なり目的なり、いくら考えても情報がないと仮説に仮説を重ねた薄い考察しかできない。
気持ちを切り替え、手始めに一番近くにいた「魔王が出た」の人を観察する。
麦わら帽子に長袖シャツとオーバーオール、くわを肩にかけ、いかにも農家である。表情はない。常に瞳孔を開いてセリフの時に口を開く。口を閉じて歩いて、セリフの時には止まる。方向を180度変えて歩く、止まってセリフ。
機械的でまさしくモブの動きだ。
他の3人も同様の表情、動作をしている。
「あの、すいません」
試しに「魔王が出た」の人に話しかけてみる。
「魔王が出た」
方向を180度変えて歩いていってしまう。
モブはモブらしく、話しかけられたところで一切行動を変えない。
薄々わかっていたとはいえ出鼻をくじかれ、肩を落として落ち込んだ。
この後の行動を考える。
また城に行って魔王に瞬殺されてもしょうがないし、街を一通り回って動機なり魔王を倒す方法なりを探すのがベターだろう。
腰を持ち上げる。軽快に立つことができすぎて、体がよろめく。
この体に慣れる必要性も感じる。同時に前の体にも思いを巡らすが、深くは考えない。考えたくない。
驚いたことに、道は城へと向かう一直線の道しかなかった。脇道は一切なく、道沿いには家が隙間なく並んでいる。
家は一軒一軒が大きく、6軒しかない。両脇に3軒ずつ、見た目は全く同じ2階建。
ぶら下がった看板から宿屋、武器屋、防具屋らしき家はわかった。あと1軒、看板からは判別できない家があり、あと2軒は看板すらなかった。
あともう一つ気づいたことがある。
鞘とは反対の腰の脇に小さな小袋が2つくくりつけられてある。重量がなくて感覚的に気づけず、ふと見下ろしたら目に入った。
1つの袋には銀貨が5枚。もう一つには葉っぱが5枚入っていた。
葉っぱに関しては、薬草でないかと予想する。しかし見た目はただの葉っぱであり、どう使えばいいかわからない。RPGだったら使えば回復するが、実際どうやって使っているのかわからない。
傷口に貼るのか?食べるのか?考えてもわからない。試しに食べて毒でもあると嫌なので、とりあえず袋に戻した。
1番近いのが武器屋と思われる家だったので、そこに向かう。看板には剣の簡単なイラストが書いてある。窓が無くて中を伺えない。いきなり入るのもぶしつけかと思い、トビラをノックする。反応はなく、そろりとトビラを開けて入る。
何もない。
いや、何もないってことはない。カウンターがあってその奥には男の人がいる。だがただそれだけだ。
小物や装飾が一切ない。殺風景。
カウンターに近づき、男の人と向かい合うと、男の口が開く。
「どんなごようですか?」
口を閉じる。
他のモブ同様に表情がない、目は開きっぱなし。
さて、どうしたものか。 待ったところで選択肢なんて出てこない。
RPGの世界を想像する、選択肢があるとすれば。
「買いにきました」
「どれをご所望ですか」
男が間髪入れずに聞く。
どれって聞いてくるわりには選択肢がない。メニューくらいはくれてもいいんじゃないか、とか思い不満顔になるが、男は微動だにしない。
試しに「剣」と言ってみるも無反応。槍、ナイフ、銃、キバ、杖…一通り試すが無反応。
「鉄の剣」自分の装備に気づき、言ってみる。
「鉄の剣は100ゴールドになります。」
間髪入れずに返答がきた。返答が早すぎて一瞬息がつまる。驚きつつ、返答がきたことに安心する。
安心ついでにもう一つ試す。手持ちの銀貨5枚をカウンターの上に置く。
無反応。
まぁ、銀貨5枚が100ゴールドの価値になるとは思わなかったが、せめて「足りないです」くらいの反応が欲しかった。
渋々銀貨を袋に戻す。
男は反応を示さない。全く変わらない。
そのあともいろいろな武器の単語を試したが、男から音声が発せられることはなかった。暖簾に腕押し。
結局、成果は少ないまま武器屋をあとにした。
武器屋を出るときも男は不動、無言だった。
気を取り直して隣の防具屋らしき店に入ったが、武器屋以上の衝撃にぶち当たった。
防具屋らしき店もシンプルにカウンター+男というスタイルだった。
「どんなごようですか」
「買いにきました」
「あなたにお売りできる物はありません」
男は口を閉じる。音がなくなる。誰も何も動かない。時が止まる。
パタン
防具屋…、防具屋らしき店の扉を閉め、外に出る。夕陽が街をオレンジに染めている。綺麗だなぁ。
ちなみにあの後、何を尋ねても防具屋の男はうんともすんとも言わなくなり、置物と変わらなくなった。あなたがこの店で出来ることは何も無いですよ、と言うが如く。
さて、途方に暮れる。正直なところ武器は鉄の剣があるからそこまで悲観しなくてすんだ。しかし防具は…。現状はTシャツとGパン。
どんなに楽観的になっても守備力+5とかしかならなさそうな紙装甲である。せめて防具はゲットしたかった。
しかしここまで主人公に不遇なRPGがあるだろうか。
そもそもなんでFPSなのか、選択肢も出てこないし、数値も表示されないし。
世界観はそこはかとなくRPGだが、いらないリアル感がある。
そういえばお腹が空いてきた、眠気もある。
あれ?世界が暗転する。
最初から始める。
眼を開けると青い空と大きな門が見えた。
仰向けの身体を起こすと門の向こうに城が見えた。
典型的な城。配管工が何個か潰しそうな城。
腰の剣と筋肉隆々の身体、イケメンの顔、TシャツとGパン
こんなクソゲー誰がやるんだ。
ここはRPGの世界、きっと。自分は主人公、きっと。魔王を倒してエンディングが目標、きっと。
事実を並べる。
魔王に一瞬で負ける。剣も肉体も役に立たない。最初に戻っている。
よくよく考えてみると、いきなり始まって魔王を倒してエンディングなんてRPGに面白味はない。
今時、フリーゲームだってもう少し工夫を加えるだろう。ゲームを始めて、魔王に会って倒すなんてストーリーに何の面白さもない。というかストーリーになってない。
主人公が魔王を倒す動機とか、魔王が城を襲う動機とか、が必要なはずだ。
すでに「魔王が出た」「魔王に攻め入られた」「王様が危ない」「城はメチャクチャだ」がすでに方々で繰り返されている。
ゲームは始まっている。
頭で考えてもしょうがないか、と半ば自棄になりながら立ち上がった。
とりあえず、情報が必要だ。動機なり目的なり、いくら考えても情報がないと仮説に仮説を重ねた薄い考察しかできない。
気持ちを切り替え、手始めに一番近くにいた「魔王が出た」の人を観察する。
麦わら帽子に長袖シャツとオーバーオール、くわを肩にかけ、いかにも農家である。表情はない。常に瞳孔を開いてセリフの時に口を開く。口を閉じて歩いて、セリフの時には止まる。方向を180度変えて歩く、止まってセリフ。
機械的でまさしくモブの動きだ。
他の3人も同様の表情、動作をしている。
「あの、すいません」
試しに「魔王が出た」の人に話しかけてみる。
「魔王が出た」
方向を180度変えて歩いていってしまう。
モブはモブらしく、話しかけられたところで一切行動を変えない。
薄々わかっていたとはいえ出鼻をくじかれ、肩を落として落ち込んだ。
この後の行動を考える。
また城に行って魔王に瞬殺されてもしょうがないし、街を一通り回って動機なり魔王を倒す方法なりを探すのがベターだろう。
腰を持ち上げる。軽快に立つことができすぎて、体がよろめく。
この体に慣れる必要性も感じる。同時に前の体にも思いを巡らすが、深くは考えない。考えたくない。
驚いたことに、道は城へと向かう一直線の道しかなかった。脇道は一切なく、道沿いには家が隙間なく並んでいる。
家は一軒一軒が大きく、6軒しかない。両脇に3軒ずつ、見た目は全く同じ2階建。
ぶら下がった看板から宿屋、武器屋、防具屋らしき家はわかった。あと1軒、看板からは判別できない家があり、あと2軒は看板すらなかった。
あともう一つ気づいたことがある。
鞘とは反対の腰の脇に小さな小袋が2つくくりつけられてある。重量がなくて感覚的に気づけず、ふと見下ろしたら目に入った。
1つの袋には銀貨が5枚。もう一つには葉っぱが5枚入っていた。
葉っぱに関しては、薬草でないかと予想する。しかし見た目はただの葉っぱであり、どう使えばいいかわからない。RPGだったら使えば回復するが、実際どうやって使っているのかわからない。
傷口に貼るのか?食べるのか?考えてもわからない。試しに食べて毒でもあると嫌なので、とりあえず袋に戻した。
1番近いのが武器屋と思われる家だったので、そこに向かう。看板には剣の簡単なイラストが書いてある。窓が無くて中を伺えない。いきなり入るのもぶしつけかと思い、トビラをノックする。反応はなく、そろりとトビラを開けて入る。
何もない。
いや、何もないってことはない。カウンターがあってその奥には男の人がいる。だがただそれだけだ。
小物や装飾が一切ない。殺風景。
カウンターに近づき、男の人と向かい合うと、男の口が開く。
「どんなごようですか?」
口を閉じる。
他のモブ同様に表情がない、目は開きっぱなし。
さて、どうしたものか。 待ったところで選択肢なんて出てこない。
RPGの世界を想像する、選択肢があるとすれば。
「買いにきました」
「どれをご所望ですか」
男が間髪入れずに聞く。
どれって聞いてくるわりには選択肢がない。メニューくらいはくれてもいいんじゃないか、とか思い不満顔になるが、男は微動だにしない。
試しに「剣」と言ってみるも無反応。槍、ナイフ、銃、キバ、杖…一通り試すが無反応。
「鉄の剣」自分の装備に気づき、言ってみる。
「鉄の剣は100ゴールドになります。」
間髪入れずに返答がきた。返答が早すぎて一瞬息がつまる。驚きつつ、返答がきたことに安心する。
安心ついでにもう一つ試す。手持ちの銀貨5枚をカウンターの上に置く。
無反応。
まぁ、銀貨5枚が100ゴールドの価値になるとは思わなかったが、せめて「足りないです」くらいの反応が欲しかった。
渋々銀貨を袋に戻す。
男は反応を示さない。全く変わらない。
そのあともいろいろな武器の単語を試したが、男から音声が発せられることはなかった。暖簾に腕押し。
結局、成果は少ないまま武器屋をあとにした。
武器屋を出るときも男は不動、無言だった。
気を取り直して隣の防具屋らしき店に入ったが、武器屋以上の衝撃にぶち当たった。
防具屋らしき店もシンプルにカウンター+男というスタイルだった。
「どんなごようですか」
「買いにきました」
「あなたにお売りできる物はありません」
男は口を閉じる。音がなくなる。誰も何も動かない。時が止まる。
パタン
防具屋…、防具屋らしき店の扉を閉め、外に出る。夕陽が街をオレンジに染めている。綺麗だなぁ。
ちなみにあの後、何を尋ねても防具屋の男はうんともすんとも言わなくなり、置物と変わらなくなった。あなたがこの店で出来ることは何も無いですよ、と言うが如く。
さて、途方に暮れる。正直なところ武器は鉄の剣があるからそこまで悲観しなくてすんだ。しかし防具は…。現状はTシャツとGパン。
どんなに楽観的になっても守備力+5とかしかならなさそうな紙装甲である。せめて防具はゲットしたかった。
しかしここまで主人公に不遇なRPGがあるだろうか。
そもそもなんでFPSなのか、選択肢も出てこないし、数値も表示されないし。
世界観はそこはかとなくRPGだが、いらないリアル感がある。
そういえばお腹が空いてきた、眠気もある。
あれ?世界が暗転する。
最初から始める。
眼を開けると青い空と大きな門が見えた。
仰向けの身体を起こすと門の向こうに城が見えた。
典型的な城。配管工が何個か潰しそうな城。
腰の剣と筋肉隆々の身体、イケメンの顔、TシャツとGパン
こんなクソゲー誰がやるんだ。
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漁師の仕事だ。
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