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オレオレオ

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3.INN

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さて、恒例の状況整理の時間だ。
①魔王は倒せない
②空腹もしくは眠気でゲームオーバー
簡単だね。

2回のゲームオーバーで得られた情報なんてほとんどない。むしろ難易度が増しただけだ。
というか、リアルよりハードじゃないですか?
リアルだって、何も食わなくても寝なくても1日くらいはもつはずだ。それがちょっと活動しただけでバタンキューとは。
こんな逞しい肉体してるのにひ弱すぎ。

立てない、立ちたくない。
しかし、「魔王が出た」「魔王に攻め入られた」「王様が危ない」「城はメチャクチャだ」がうるさい。
うるさくて、立ち上がる。停止している頭を仕方なく動かす。
とりあえずの目的はできた。
ごはん食べれるところ、寝ることができるところを探す必要がある。
闇雲だった前回よりは明確な目的だ。
さて、そうと決まれば行き先は1つ。
宿屋っぽい家へ向かおう。

宿屋っぽい家は看板にINNと書かれている。何かの略なのかは知らないが、とにかく宿屋なはずだ。
勢いよく扉を開ける。もはや恐るるものなどない。
武器屋、防具屋がなんとも言えない殺風景なレイアウトだったので、宿屋も似たようなものなのではないか、と少しの疑惑を持っていたが、そんなことはなかった。
銭湯のように入り口前にカウンターがあり、左右に廊下が伸びている。カウンターには番頭さんのように女の人が立っている。

「勇者様、おかえりなさいませ。」
女の人が開口一番挨拶をし、頭を下げる。
声に抑揚はなく、表情も無い、これまでのモブとそこら辺は変わらないが、温かみを感じた。
「どのような御用ですか?」
女の人はまばたきをせずに聞いてくる。もちろん選択肢なしで。
「泊まりたいです」
さっきまで感じなかった腰の銀貨の重みが、金がないことを主張してくる。鉄の剣100ゴールドの悪夢が甦り、冷や汗がほほを伝う。
「勇者様には特別な部屋を用意してあります。お代はいただいておりません。お好きにお使いください。」
女の人が一気に言ったせいで言葉の内容が情報となって頭に入るのに時間がかかる。
「お代はいただいていない」って言った?いただいてないって、タダ?タダってこと?え?…タダってこと?
頭が混乱しながら解を導く。おもわず
「ありがとうございます」と頭を下げてしまった。

「ふぇ~」
ベッドに顔からダイブし、思わず気持ち悪い声が出る。肉体的疲労はほとんど無いが、精神的疲労は思ったより溜まっていたようで、一気に弛緩する。
部屋は正面入って右側の廊下の一番奥、いわゆる角部屋をあてがわれた。
ちなみに寝床の問題と同時に食事の問題も解決した。この部屋のカギを渡すとともに女の人が「昼食は和食でよろしいでしょうか」と聞いてきたからだ。
もちろんOKの返事をし、2時間後に届けるという言葉を確かに聞いた。
問題が簡単に解決してしまった。門の前で絶望に浸っていたのが、クソゲーだと嘆いていた時が、遠い過去のように感じる。
仰向けになる。天井の木目を見ながら今後のことを考える。

振り出しに戻った、というのが現状だろう。
また魔王を倒す動機とかを見つける必要がある。
しかし、落ち着いてみるともっと根本的な疑問も浮かぶ。
少なくとも、自分はゲームの外の人間である。いくら記憶がなくたって、ゲームの知識があることを考えればこれは確定でいいだろう。
そうなると、何故RPGの世界に入ったのか?というのが根本になる。
まぁ、正直、自分はリアルでは根暗ひきこもりなんじゃないかと思う。よくある薄暗い部屋でポテチをポリポリしながらゲームして、ネットして、寝て、ゲームして…、みたいな生活をしてたのではないかと思う。イケメンに本能的に嫌気がさしたり、肉体がうまくマッチしなかったり、はそれが影響しているんではないかと。
そんな自分が何故RPGの世界に入ったのか?

仮説①夢
起きたら、薄暗い部屋パターン。もしそうなら打ち切りを疑わなくてはならない。

仮説②臨床実験
現実味があるのは社会復帰プログラム的な。
ゲームを通じて社会性を養うなんて、ありそうな話だし、最初のハードモードのような始まり方も説明がつく、もし現実の自分が想像したような根暗ひきこもりなら、そのようなプログラムの対象になってもおかしくない。

仮説③最新ゲームのデバッカー
1人称視点のRPGなんて聞いたことないし、やたらとバグが多い気がするし、となるとデバッカーの可能性はある。というか、デバッカーだったらいいな、と思う。願望丸出しだが。
もしデバッカーだったら、長いバグ報告書を出せそうだ。

つらつらと仮説を並べてみたが、どの説にせよ、魔王を倒すのが最終目標になりそうである。
となると、やっぱり情報が必要か。

コンコン
規則正しいノック。小さすぎず大きすぎない音が心地よく耳に響いた。
考えたいことは多いけど、良い匂いが鼻を刺激し脳に充満する。
とりあえずゲームオーバーを阻止できそうなだけで第一歩なはずだ。
腹が減っては戦はできぬ。というし。

ここはいったんセーブ?
なんてね。
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