僕の前、私の後ろ

オレオレオ

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大石健太の部活

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黙々と1人でストレッチしていると、近くをサッカー部が列をなして走り去る。
全員でウォーミングアップをすることが理解できないのは陸上という個人競技をやっているからなのか、そんなことを考えながら、走り去ったサッカー部の連中を目で追う。
集団競技のくせに各々は様々な海外の?チームのユニフォームに身を包み、髪の毛も各々がカッコよく見えるようにいじられていて、後ろ姿だけでも個性を放っていた。
そんな中で短髪でどこのチームのユニフォームでもないトレーニングウェアを着ている健太は、逆に異彩を放っていた。時折隣の広輝に笑顔で話しかけていて、その横顔が私の心をくすぐった。


日直の日から、劇的に何かが変わることはなかった。
健太とはいつもの様に接し、話す。
モヤモヤは処理されずに残り日に日に増幅していた。もはやどんな結末になってもいいから、この感情に終止符を打ちたかったが、あの日以来2人きりになる機会なんてなく、その機会を自分で作る勇気もなかった。

もし今、あのサッカー部の列に走って突っ込んで、健太の手を掴んで思いの丈を叫べたら…、とか想像したりして。

「だぁれ見てるの!」
座り込んでストレッチしている背中に恭子が抱きついてきた。恭子は私の目線を追うようにほっぺた同士をくっつける。
「ふむ、広輝?」
見当を外した恭子に少しホッとする、同時に無意識のうちに健太をずっと目で追っていた自分に気づき、顔を赤らめる。

「ん?あれ?え?」
そんな私の顔を見た恭子が口元をニヤつかせ、目を見開く。
「へぇー」
恭子は目許を崩さずに、顔に悪戯な笑顔を浮かべる。
「広輝狙いなの?」
恭子が耳に囁く。
「ち、違うよぉ。」
そんな恭子の顔を正面に見据えて言う。実際違うのだから、その言葉に嘘はない。

「ふぅーん、じゃあ何見てたの?」
恭子はニヤついた形相のまま聞いてくる。
恭子の目が真実を知っているそぶりを見せる。
「いや、ね、サッカー部って、かっこいい子が多いな、って。」
しどろもどろに答えになってるかわからない応答をする。
「んー、まぁねぇ。」
恭子は視線をサッカー部に向ける。
「人気だよね、サッカー部。だいたいの奴が付き合ってる人いるし、チャラチャラしたのばっかかと思えば健太みたいな硬派な奴もいるし、取り揃えは豊富だよね。」
恭子の口から出た健太という言葉に心がドキリと反応するが顔に出さないように、声色に出さないように注意する。
「ね、サッカー部人気だよね。」

そのまま話題はサッカー部の誰が付き合っている、といった話しで盛り上がり、ろくなウォーミングアップが出来ず、練習では散々だった。



恋愛は人をダメにするのだ、と恭子と言って笑った。
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