シンデレラ・ゲーム【R-18】

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 今日も昼食は学食のかけうどんだ。
おばちゃんからトレーを受け取り、いつもの席に腰を下ろす。

「航大」
「ん」

 相手の顔を見ずに返事をする。相手はどうせ涼だ。

「今日もうどんだ」
「そういうお前こそ」

 涼は笑いながら具無しカレーが乗ったトレーを航大のうどんの隣に置いた。

「な、どうだった?」
「どうだったって何が?」
「例のゲーム。した?」
「一応」
「で? どうだった?」

 興奮気味に航大に詰め寄る涼。
涼はゲームの話になるといつもこの調子だ。

「どうだったって言われても、俺恋愛ゲームとかしたことないからよく分かんねえ。ただ女の子と話すだけ……あっ」

 昨晩の課金システムを思い出す。
これに関しては説明時に何も聞いていない。涼に文句を言ってやらねば。

「あっ! そだそだ、これ先輩から」

 文句を言う前に、涼が一枚の封筒を航大の前に差し出した。中を覗くとそこには一万円札が入っていた。

「俺に?」
「ああ。しばらく必要になるだろうからって。なに? 課金システムでもあんの?」
「んん、まあ……」

 ここまでされると文句の付けようがない。航大は出かかった言葉を飲み込み、熱々のうどんをすすった。


ーーー


「幕の内弁当に850円? そりゃぼったくりだな」

昨晩プレイした内容を一通り話すと、涼は少し引いたような顔でそう言った。

「だろ? だから今日お前に文句言ってやろうと思って」
「はは、先に切り札出して良かったわ~」

 涼は最後のひと口を放り込むと、食った食ったと腹をさすった。

「クリアできそう?」

 涼の問いかけに、航大はさあ?と首をひねった。これに関しては本当に自信がない。

「そもそも恋愛ゲームってどこまでいけばクリアなわけ? 一応親愛メーターみたいなもんはあったけど」

 すると涼が思い出したように言う。

「退屈しないような仕掛けはしてあるって言ってたけどな。メーターが一定数溜まればバトルモードが出るとかなんとか」
「めちゃくちゃなゲームだな」

 自分のしたいことをとにかく全部詰め込みまくったゲーム、そんな印象だった。

「まあまた色々聞かせてくれよ。参考にできるところは参考にしたいし」

 嘘だ。
涼はゲーム制作に関しては自分の腕に絶対的な自信を持っている。それゆえに自分以外の人間……いや、自分よりの作るゲームなど興味もない。

 航大は薄っぺらい笑顔を浮かべる涼を横目で見ながら、冷水を一気に飲み干した。


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