7 / 67
2nd play
(3)
しおりを挟むそれからゲームをスリープ状態にし、ご飯と風呂を先に済ませる。
濡れた頭をタオルで拭きながらスリープ状態を解除すると、ミザリの顔色は先ほどより幾分良くなっていた。
「おにぎりすっごくおいしかった! 航大くん、ありがとう!」
航大はほっと胸を撫で下ろす。あまりにもリアルな飢餓状態で思わず狼狽えてしまったが、これも先輩の思惑だとすればなかなかに腹立たしい。
「航大くんは今日何食べたの?」
「唐揚げ弁当。まあ廃棄だけど」
「わあ、いいなあいいなあ~!」
「ミザリは何が好きなの?」
航大が問い掛けると、ミザリの動きがぴたりと止まる。そしてまた寂しそうな顔でぽつりと呟いた。
「オムライス…… ママが作ってくれる、オムライス」
その表情が何を示しているのか、航大には全く分からなかった。
航大はメニュー画面を開き、アイテムショップに飛んだ。そして数ある食べものからオムライスを探す。それはその中で一番高価なものだった。
「一万円……」
今日先輩にもらったお金がこのオムライスひとつで全額無くなってしまう。
航大はため息をつき、アイテムショップを閉じた。
「ミザリって誕生日いつ?」
「ミザリの誕生日は六月三十日だよ」
PC画面に表示されたカレンダーを見る。今日の日付は六月二日。
「ぐ……今月……」
「どうしたの?」
「いや、オムライス食べたそうだったから。誕生日に、その、買ってあげようかと……」
もごもごと尻つぼみ気味に言うと、ミザリの顔がぱっと明るくなった。
「本当!? ミザリ嬉しい!」
大袈裟に喜ぶミザリを見て、航大も小さく笑う。
「いや、大袈裟じゃない?」
「ううん。とっても嬉しい。だって、それまで航大くんと会えるってことだもん」
胸の奥がしめつけられるようなその笑顔に、航大は唇をぎゅっと結んだ。
これはゲームだ……
そう、これはゲームなんだ……
必死にそう言い聞かせながらも航大はミザリとの逢瀬の時間に少しずつ癒され始めていた。ガラスのように脆くて儚いこの少女を今は見守っていたい。
この時、何故だか強くそう感じた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる