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「のんちゃん!いやのん様!璃暖様!頼む!今日はど~してもはよ帰らなあかんねん!だからお願い今日は!代わってくれん!?ココア奢るから!」
目の前で懇願する西村に思わず笑いが込み上げる。別にこんな懇願しなくたって自分に出来ることなら代わるのに。
自動販売機のココアを買おうとしながらやけに必死な西村が面白くて、いいよという言葉を飲み込んでしまう。
「足りん!?じゃあもう一本!?」
既にココアを抱えた西村がさらに自動販売機にお金を入れて2本目を買おうとする。いつの間に買ったの?というか待って待ってそんなに飲めない。なんなら最近はココアより抹茶ラテの方が、と慌てて訂正しようとしたとき、後ろからすらりと伸びた腕が抹茶ラテのボタンを押す。
……え?
「西村、清水はココアより抹茶ラテの方が好みだと思うよ」
「えっそうなん!?ココアのイメージやったぁ」
「最近は抹茶ラテ、だよね?」
いつもは笑いかけてこない、話もしない東雲が自ら話に入ってきた。不思議体験だ。なんでぼくの好みを知ってるんだろう?
朝に見たぼく以外に見せる笑みを携えながらさも当然と話しかけてくる東雲に驚きつつ、うん…と小さく返す。
自動販売機から抹茶ラテを取りだした東雲は、はいどうぞ、と清水に抹茶ラテを渡して、スマートに電子決済でブラックコーヒーを買うとどこかへ行ってしまった。
やはり仕事の出来る人間は飲み物の買い方さえもやけにこなれて見える。
けれど去り際の一瞬、いつもの冷ややかな視線を送られたことに気付かないわけがなかった。なんなんだ?
「のんちゃん東雲と仲良なったん?」
以前から東雲はたぶんぼくが苦手だと思う、と言っていたからか西村が不思議そうに聞いてくる。ちなみに仲良くなった覚えは無いしあんなに優しく話しかけられたこともない。こんな質問をしてくるということは西村からは見えてないんだろう、ぼくが睨まれたことなんて。
「わ、わかんないけど……なんか機嫌でも良かったんじゃない?」
西村に貰った抹茶ラテで抑制剤を喉の奥に送り込んで去っていく東雲の後ろ姿を見る。同僚や先輩に捕まり話す姿はさっき見せていた笑顔で、余計に頭にはてなが浮かんでいく。
なんでぼくは最近こんなに悩んでばっかりなんだろうか、藤堂のことも引き摺って、会社では同僚によくわからない態度をとられて。
今年はもしかして厄年?なんて軽く考えながらまた業務に戻る。
よし、西村の分まで頑張るか~
「東雲はええねんのんちゃん今日変わってくれる!?」
あぁ、いいよって言い忘れてたな、と思いながら「いいよ、代わる。抹茶ラテごちそうさま」と話すと西村の顔がぱあっと明るくなる。
こうやって西村みたいに明るく素直であれば…とまた考えだしてしまいそうになるのを抑えてデスクへ座った。
目の前で懇願する西村に思わず笑いが込み上げる。別にこんな懇願しなくたって自分に出来ることなら代わるのに。
自動販売機のココアを買おうとしながらやけに必死な西村が面白くて、いいよという言葉を飲み込んでしまう。
「足りん!?じゃあもう一本!?」
既にココアを抱えた西村がさらに自動販売機にお金を入れて2本目を買おうとする。いつの間に買ったの?というか待って待ってそんなに飲めない。なんなら最近はココアより抹茶ラテの方が、と慌てて訂正しようとしたとき、後ろからすらりと伸びた腕が抹茶ラテのボタンを押す。
……え?
「西村、清水はココアより抹茶ラテの方が好みだと思うよ」
「えっそうなん!?ココアのイメージやったぁ」
「最近は抹茶ラテ、だよね?」
いつもは笑いかけてこない、話もしない東雲が自ら話に入ってきた。不思議体験だ。なんでぼくの好みを知ってるんだろう?
朝に見たぼく以外に見せる笑みを携えながらさも当然と話しかけてくる東雲に驚きつつ、うん…と小さく返す。
自動販売機から抹茶ラテを取りだした東雲は、はいどうぞ、と清水に抹茶ラテを渡して、スマートに電子決済でブラックコーヒーを買うとどこかへ行ってしまった。
やはり仕事の出来る人間は飲み物の買い方さえもやけにこなれて見える。
けれど去り際の一瞬、いつもの冷ややかな視線を送られたことに気付かないわけがなかった。なんなんだ?
「のんちゃん東雲と仲良なったん?」
以前から東雲はたぶんぼくが苦手だと思う、と言っていたからか西村が不思議そうに聞いてくる。ちなみに仲良くなった覚えは無いしあんなに優しく話しかけられたこともない。こんな質問をしてくるということは西村からは見えてないんだろう、ぼくが睨まれたことなんて。
「わ、わかんないけど……なんか機嫌でも良かったんじゃない?」
西村に貰った抹茶ラテで抑制剤を喉の奥に送り込んで去っていく東雲の後ろ姿を見る。同僚や先輩に捕まり話す姿はさっき見せていた笑顔で、余計に頭にはてなが浮かんでいく。
なんでぼくは最近こんなに悩んでばっかりなんだろうか、藤堂のことも引き摺って、会社では同僚によくわからない態度をとられて。
今年はもしかして厄年?なんて軽く考えながらまた業務に戻る。
よし、西村の分まで頑張るか~
「東雲はええねんのんちゃん今日変わってくれる!?」
あぁ、いいよって言い忘れてたな、と思いながら「いいよ、代わる。抹茶ラテごちそうさま」と話すと西村の顔がぱあっと明るくなる。
こうやって西村みたいに明るく素直であれば…とまた考えだしてしまいそうになるのを抑えてデスクへ座った。
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