Fatal scent

みるく汰 にい

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4話

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 東雲の顔に思わず後ずさってしまう。
 だって、東雲の目が狩る側のそれなんだ。目の奥にギラついた欲の炎が燃えてるみたいな、そんな瞳。
 嫌いなやつでも、フェロモンの匂いでこうなるのか…?だから、嫌なんだ、匂いなんて、なくなればいいのに、


 「清水、抑制剤は?」
 「ひ、昼に飲んだけど、」

 普段の柔らかい声とは違う、低く唸るような声にぶあっと体が反応する。ぴりぴりとした空気を纏う東雲の欲ついた目が一歩、また一歩と近づいてくる度にずくんっと腹の下が疼いて、本能が叫び出しそうになる、せっかく立ち上がれたというのにまたぺたりと床へ座り込んで逃げられない。体が火照り、顔まで熱くなっていくのがわかる。あぁだめだ、これ、欲しいって思っちゃうやつだ…。

 「ん、もっと濃くなった。フェロモン?だよね?こんなとこで……アルファの俺から逃げもせずに」

 東雲の言葉にきゅうっと心臓がしまる、いつもより早口で、東雲じゃないみたいな東雲がもうすぐそこにいる。疼いた腹から熱を放つようにじわじわと火照りが全身を伝っていく。


 目の前に来た東雲は少し赤くなった顔を手で覆い隠しもう片方の手でネクタイを緩めていて、それすらも様になる、なんとも思っていない相手でも本能が反応してるってだけで心臓がぐにゃりと掴まれたかのように一つ一つの仕草が心に刺さっていく。
 でも仕方ない、アルファだし、何より東雲はかっこいい。いつも睨まれていたから気づけなかったけど、優しさを象徴するかのようなタレ目タレ眉にふわふわとした触り心地の良さそうな髪。こんなイケメンに笑いかけられたら誰だって好きになってしまう。

 でもそんな優しい顔が、ぼくのフェロモンで歪んでいる。もはやエリートと言ってもいい東雲が、平々凡々なぼくに反応してる。それだけでもぼくの体が反応するにはもってこいの材料だった。


 「清水、しみず」

 もはや半分諦めのように東雲の顔を見ていると、甘ったるい声で腕を掴まれた。腕を掴む東雲の手は熱い、いや、ぼくが火照ってるだけか?なんて考えていると、ぐいっと体を引き寄せられ立たされる。

 「しの、のめ……?」

 密着した体はどちらが熱いのかわからないほど熱を発しさらに体の感度を高めていく。腰に回された手は壊れ物を扱うかのように優しく、それでも歯の奥はぎっと食いしばっている東雲の頬に手を触れた。

 「今触られるとまずいんだけど」

 手を重ねぎゅっと握られる。こんな東雲、見たことない。当たり前だ、関わることなんてないと思ってたんだから。扉を開けられた時は流されまいと逃げることを考えていたけれど、今は流されても良いと思っている。こんな可愛い東雲を、もっと見たい、なんて。


 「抑制剤、飲んで」
 「ん、でも、もう意味ない効かないとおもう」
 「なんでそんなこと言うの、試してる?」
 「ちが、だってお昼に飲んだ」

 布越しの腰に東雲のものがごり、と当てられる。こんなになってるくせに、冷静さを失わないように話す東雲はすごい。ぼくはもう熱さで意識が飛びそうなのに。早く熱を出したい、昂るものを奥まで突かれて果てればこの熱も治まるのに。心の中でそう呟いたって言葉には出せない、いくらフェロモンにやられてるからって、ぼくの欲に付き合わせられない。

 欲に負けてしまいそうで目が潤む、放っておいてくれたら自分で慰めて、虚無感に苛まれながら処理できるのに。

 「しののめ、ぼく大丈夫だから、」

 頭まで熱さでやられてきた、呂律が回らず回された手に体重を預けてしまう。それでも、と東雲の目を見た途端__

 「っ!?、ふっ…ん、しの、め」

 いきなり唇を柔らかいもので塞がれた。近くには端正な顔が見える。
 1度では終わらず、何度も何度も食むように角度をつけて繰り返されるキスに、また体の力が入らない。
 それでも支えられて、いや、もはやがっちりと捕まえられて逃げるなんて出来はしない。
 息継ぎをしようと唇を開けば、ぬる、と東雲の舌が入り込んできてあっという間に口内を蹂躙される。

 ぢゅる、と吸い上げられ絡まる舌に息が出来ずとんとんと東雲の肩を叩く。ようやく離されたと思っても一度息を吸えばまた唇を奪われてしまう。


 「清水の匂い、好きだな俺」

 息の上がった清水を東雲はぎゅうっと抱きしめる。もはやアルファの顔を隠そうとしない東雲に、治まらない熱をなんとかしてほしいと自身の昂るそれを擦り付けてしまう。匂いが好きなんて、信じたくないのに

 「ここですると清水の匂いついちゃうから、移動しよう?清水ももう吐き出さないとおさまらないのわかってるよね?」

 東雲の言う通り、最早1人で慰めたとて治まらないことは清水もわかっていた。こくん、と頷けば今度は体重を支えるように清水の体を持ちながら慣れた手つきでタクシーを呼ぶ東雲。2人分の荷物と小脇には清水を抱えてオフィスを出ていく。


 ちょうどビルを出る頃にタクシーが来た。乗車前に運転手の二次性がベータであることを確認した東雲はやはり丁寧に清水をタクシーへ乗せていく。頭がキャパオーバーすぎて、考えることはどうしたら楽になれるかばっかり。そのせいかどこへ行くとか全く聞こえない、ただタクシーの中で握られた手の熱さだけが意識を保つための標のように存在している。あつい、指先だけが

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