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12話
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「あのねー俺忙しいからねこう見えて」
サングラスに黒いバケットハットを被った男が清水に話しかける。長身の男は清水の頬を両手で揉みしだきながらムスッとした顔で話している。
「ごめんごめん、でも心しかいなくて」
「別にいいけどさ、兄さんから連絡来るの珍しいし」
「助かる~モデルしてる心なら大丈夫かな」
ぶっきらぼうに立つ男は清水 心。弟であり売り出し中のモデルで俳優のSHINEでもある。モデルとして働いてる心なら似合う服も見繕ってくれるだろうと呼び出したのだ。しかも東雲は自分の部署の人たちと飲み会で、行くなら今しかない。
「え、待って待って、服買いに行くってこと?兄さんが?……まさか藤堂とヨリ戻したわけじゃないよね?」
じろりと睨んでくる視線が痛い。そもそも心はずっと藤堂を嫌っていた。こう見えてブラコン気質なところがあるから兄を盗られて拗ねているのかと思っていたが、同じアルファで色々と思うところがあったのだろう。
「藤堂とはヨリ戻してなんてないよ、ただちょっと服に興味出たから」
「へえ、詳しく教えて。それだけじゃないだろ絶対」
「う、水族館に行こうと思って…」
「誰と?」
「うんと……同僚?」
「絶対同僚じゃないよね、誰?」
「同僚は同僚だって、ただ……」
モゴモゴと口を閉ざす清水を上から冷たい目で見下ろすものだから、東雲との関係を包み隠さず言ってしまう。都合の良い関係で、清水にはそれでもメリットがある、と。
「都合の良い関係ねぇ……?で、そのシノノメサンとはいつ行くわけ?水族館」
「えっと…まだ誘ってなくて」
「は?誘ってないのに服買いに行くの?」
「お、おかしいかな、でも東雲は多分行くって言ってくれるだろうし」
随分と甘やかされてるんだな、と思いながらスーツ姿の兄を見た。アルファやオメガは遺伝的に整った容姿で産まれてくるのが常識で、兄である清水も例外では無かった。が、しかし藤堂と付き合ってから藤堂の好みに合わせて着飾ることをしなくなった兄は見ていられなかった。そんな兄が誰かとのデートの為に自分を頼っているのだ、力を貸さない訳にはいかない。
「はあ、まあいいよ何だかんだ俺は兄さんに甘いから。似合う服見に行こう」
「ありがとう心、助かる」
さすがモデルをしているだけあってか心の選ぶものはどれも清水に似合っていた。東雲とはまた違うセンスを魅せる心に自分は驚くほど服への興味がなかったのだと痛感する。
「とりあえずこれだけ買えば十分でしょ」
「ぼくの持ってる服の総数超えた、買いすぎ」
「良いじゃん、今持ってる服捨てなよ似合ってないから」
「まぁ、これだけ買ったらもう良いか…」
「着回しもできるし兄さんにはぴったりだね」
くく、と笑う心の手と清水の手には大きな紙袋が下げられている。この5年間選ぶことがなかった爽やかな色からシックな柄まで心チョイスの服達だ。これであとは東雲を誘うだけ、いつ誘おうか。
そんなことを考えながら駅に向かおうと歩き出すと、居酒屋から出てきた東雲の姿を遠くで見つける。同僚や先輩に囲まれて輪の中心で話す東雲がなぜか遠く感じてしまう。心に帰ろうと声をかけようとしたその時、聞きなれた声が清水を呼んだ。
「清水、何してるの?」
遠くにいたはずの東雲がにこにことなぜか嬉しそうに近付いてくる。
「買い物に来てた、飲み会ここだったのか」
「うん、もうすぐ解散するとこ…あ、初めまして、清水の同僚の東雲です」
隣にいる心に気がついた東雲が話しかける。
「あんたがシノノメサンね、どーも。うちの璃暖がお世話になってマス」
「心!愛想!」
人に興味がないのかいつものローテンションで心は清水の肩を組み東雲に返事をする。
「ごめん東雲」
「あはは、大丈夫大丈夫、それよりその方は__」
東雲が心を見ながら問いかけた時、近くで「えっ!?SHINEじゃない!?」と騒ぐ声が聞こえてきた。
「うわ、めんどくさい。璃暖帰ろ、家泊めて」
心底面倒くさそうに顔を歪めた心が「SHINEじゃないですー」と棒読みで言いながら清水の手を引き東雲から離れていく。
「えと、また明日!じゃあね東雲」
「う、うん、気を付けてね清水」
少し唖然とした東雲を見ながら軽く手を振って背を向ける。
「シノノメサン、優しそうな人だったね。でもあれ俺のことなんか勘違いしてない?」
「え、勘違いって?」
「弟って言ってないし」
それに、最後の顔…と心が呟く。清水には聞こえてないようで「そうかな?」と首を傾げている。
たまたま会った東雲は兄が昔付き合っていた藤堂よりも全然マシだった。それに東雲の兄をみる視線は都合が良い関係と言う割には…そう思ったからこそあえて兄ではなく璃暖と呼んだし煽ったのだ。
「ま、俺関係ないしいいや」
「なにがだよ」
「いや別に、俺明日早いから寝るね兄さん」
「ん?うん、おやすみ」
明日また色々聞かせてね、と兄に伝えて眠る。今度こそ兄が幸せになれるようにと願いながら。
サングラスに黒いバケットハットを被った男が清水に話しかける。長身の男は清水の頬を両手で揉みしだきながらムスッとした顔で話している。
「ごめんごめん、でも心しかいなくて」
「別にいいけどさ、兄さんから連絡来るの珍しいし」
「助かる~モデルしてる心なら大丈夫かな」
ぶっきらぼうに立つ男は清水 心。弟であり売り出し中のモデルで俳優のSHINEでもある。モデルとして働いてる心なら似合う服も見繕ってくれるだろうと呼び出したのだ。しかも東雲は自分の部署の人たちと飲み会で、行くなら今しかない。
「え、待って待って、服買いに行くってこと?兄さんが?……まさか藤堂とヨリ戻したわけじゃないよね?」
じろりと睨んでくる視線が痛い。そもそも心はずっと藤堂を嫌っていた。こう見えてブラコン気質なところがあるから兄を盗られて拗ねているのかと思っていたが、同じアルファで色々と思うところがあったのだろう。
「藤堂とはヨリ戻してなんてないよ、ただちょっと服に興味出たから」
「へえ、詳しく教えて。それだけじゃないだろ絶対」
「う、水族館に行こうと思って…」
「誰と?」
「うんと……同僚?」
「絶対同僚じゃないよね、誰?」
「同僚は同僚だって、ただ……」
モゴモゴと口を閉ざす清水を上から冷たい目で見下ろすものだから、東雲との関係を包み隠さず言ってしまう。都合の良い関係で、清水にはそれでもメリットがある、と。
「都合の良い関係ねぇ……?で、そのシノノメサンとはいつ行くわけ?水族館」
「えっと…まだ誘ってなくて」
「は?誘ってないのに服買いに行くの?」
「お、おかしいかな、でも東雲は多分行くって言ってくれるだろうし」
随分と甘やかされてるんだな、と思いながらスーツ姿の兄を見た。アルファやオメガは遺伝的に整った容姿で産まれてくるのが常識で、兄である清水も例外では無かった。が、しかし藤堂と付き合ってから藤堂の好みに合わせて着飾ることをしなくなった兄は見ていられなかった。そんな兄が誰かとのデートの為に自分を頼っているのだ、力を貸さない訳にはいかない。
「はあ、まあいいよ何だかんだ俺は兄さんに甘いから。似合う服見に行こう」
「ありがとう心、助かる」
さすがモデルをしているだけあってか心の選ぶものはどれも清水に似合っていた。東雲とはまた違うセンスを魅せる心に自分は驚くほど服への興味がなかったのだと痛感する。
「とりあえずこれだけ買えば十分でしょ」
「ぼくの持ってる服の総数超えた、買いすぎ」
「良いじゃん、今持ってる服捨てなよ似合ってないから」
「まぁ、これだけ買ったらもう良いか…」
「着回しもできるし兄さんにはぴったりだね」
くく、と笑う心の手と清水の手には大きな紙袋が下げられている。この5年間選ぶことがなかった爽やかな色からシックな柄まで心チョイスの服達だ。これであとは東雲を誘うだけ、いつ誘おうか。
そんなことを考えながら駅に向かおうと歩き出すと、居酒屋から出てきた東雲の姿を遠くで見つける。同僚や先輩に囲まれて輪の中心で話す東雲がなぜか遠く感じてしまう。心に帰ろうと声をかけようとしたその時、聞きなれた声が清水を呼んだ。
「清水、何してるの?」
遠くにいたはずの東雲がにこにことなぜか嬉しそうに近付いてくる。
「買い物に来てた、飲み会ここだったのか」
「うん、もうすぐ解散するとこ…あ、初めまして、清水の同僚の東雲です」
隣にいる心に気がついた東雲が話しかける。
「あんたがシノノメサンね、どーも。うちの璃暖がお世話になってマス」
「心!愛想!」
人に興味がないのかいつものローテンションで心は清水の肩を組み東雲に返事をする。
「ごめん東雲」
「あはは、大丈夫大丈夫、それよりその方は__」
東雲が心を見ながら問いかけた時、近くで「えっ!?SHINEじゃない!?」と騒ぐ声が聞こえてきた。
「うわ、めんどくさい。璃暖帰ろ、家泊めて」
心底面倒くさそうに顔を歪めた心が「SHINEじゃないですー」と棒読みで言いながら清水の手を引き東雲から離れていく。
「えと、また明日!じゃあね東雲」
「う、うん、気を付けてね清水」
少し唖然とした東雲を見ながら軽く手を振って背を向ける。
「シノノメサン、優しそうな人だったね。でもあれ俺のことなんか勘違いしてない?」
「え、勘違いって?」
「弟って言ってないし」
それに、最後の顔…と心が呟く。清水には聞こえてないようで「そうかな?」と首を傾げている。
たまたま会った東雲は兄が昔付き合っていた藤堂よりも全然マシだった。それに東雲の兄をみる視線は都合が良い関係と言う割には…そう思ったからこそあえて兄ではなく璃暖と呼んだし煽ったのだ。
「ま、俺関係ないしいいや」
「なにがだよ」
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明日また色々聞かせてね、と兄に伝えて眠る。今度こそ兄が幸せになれるようにと願いながら。
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