Fatal scent

みるく汰 にい

文字の大きさ
15 / 38

14話

しおりを挟む
「ほんとに似合ってる?大丈夫か?」
『俺が選んだんだから似合うに決まってる』
「変なとこない?」
『大丈夫だってば、"ただの同僚"と出かけるだけだろ』
「確かにそうだけど…」
『大丈夫だよ兄さんなら、俺もう仕事始まるから切るね』

 遠くで『すずめさん今行くんで!』と叫ぶ心が無慈悲にも電話を切る。確認は何度してもしたりないのに家を出る時間は迫っていて、半ば諦めた清水が鏡を見る。今日は東雲と水族館に行き、東雲の家に泊まる予定だ。


 左腕の腕時計は9:00、待ち合わせの場所に行くと東雲が誰かと話していた。口説かれているのだろうか、少し困ったように眉を下げた東雲は苦笑いで、でも東雲と並んでも霞まないほど綺麗な人に気持ちが後ずさる。やはり東雲と付き合うのはああいう人だろうな

「おにーさん可愛っすね、一人?」

 遠くから終わるのを待とうと眺めていると後ろからいきなり声をかけられ腕を掴まれる。突然のことに驚いて振り払おうとするが清水より背の高い男は腕を強く掴んで離してくれない。

「なに、なんですか」
「カラーってことは…オメガ?」

「ラッキー」ともらしながら見定めるように上から下まで視線が動く。舐めるような視線に不快感が止まらず、弱々しくやめてと話す清水の声なんて虫の声の如く届かなくて募る恐怖心に体が震え出す。嫌だ、嫌だどうしよう、怖い、こわい

「フリーっしょ?良いじゃん俺と行こうよ」

 話の聞かない男が強く握った腕を引っ張り東雲から遠ざかる。

「しののめ、こわい…っ」
「清水っ!」

 焦ったような声がしたと思うと掴む腕が引き剥がされ相手の腕が捻り上げられる。後ろを見ると見た事のない顔をした東雲が静かに睨み抱き寄せられた。

「行こう清水」
「東雲」

 東雲に掴まれた腕が痛い、でもさっきみたいな不快感はなく、伝わる東雲の温もりに安堵する。

「清水、ごめん大丈夫?怖くない?」

 震える肩を抱きしめながら頭を撫でられる。落ち着かせようと動く手にぎゅうっと抱きついた。もう怖くない、東雲がいる。

「大丈夫、もう怖くない……ありがとう」

 腕を離し東雲の顔を見ようと上を向くと、東雲から軽い口付けを落とされる。

「震えも止まったね?本当に良かった」
「東雲が来てくれて良かった、ありがとう」

 今度はくしゃりと頭を撫でて笑う東雲に、先程の睨みつけるような顔の面影はもう無かった。

「清水の服可愛いね」
「ほんと?嬉しい、悩んだかいがあった」
「俺とのデートのために悩んでくれたの?」
「……東雲かっこいいし、浮かないように」
「嬉しい、似合ってるよ」

 歯の浮くような会話をしながら水族館へと向かう途中、繋いでいいのか分からない手が彷徨っていると東雲から握られる。絡められた指をきゅっと握って東雲の腕を抱くように近づいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

極道鬼神一家若様の初恋

梅川 ノン
BL
極道鬼神一家の若様鬼神祥吾の初恋は一目惚れから始まった。相手はカフェの店員榊結人。 結人は司法試験合格を目指す東大生だった。 水と油のように住む世界が違う二人。しかし祥吾の思いは誰にも止められない。 突き進む祥吾と、戸惑い抗う結人。 二人の恋の行方をお楽しみください。

試情のΩは番えない

metta
BL
発情時の匂いが強すぎる体質のフィアルカは、オメガであるにもかかわらず、アルファに拒絶され続け「政略婚に使えないオメガはいらない」と家から放逐されることになった。寄る辺のなかったフィアルカは、幼い頃から主治医だった医師に誘われ、その強い匂いを利用して他のアルファとオメガが番になる手助けをしながら暮らしていた。 しかし医師が金を貰って、オメガ達を望まない番にしていたいう罪で捕まり、フィアルカは自分の匂いで望まない番となってしまった者がいるということを知る。 その事実に打ちひしがれるフィアルカに命じられた罰は、病にかかったアルファの青年の世話、そして青年との間に子を設けることだった。 フィアルカは青年に「罪びとのオメガ」だと罵られ拒絶されてしまうが、青年の拒絶は病をフィアルカに移さないためのものだと気づいたフィアルカは献身的に青年に仕え、やがて心を通わせていくがー一 病の青年‪α‬×発情の強すぎるΩ 紆余曲折ありますがハピエンです。 imooo(@imodayosagyo )さんの「再会年下攻め創作BL」の1次創作タグ企画に参加させていただいたツイノベをお話にしたものになります。素敵な表紙絵もimoooさんに描いていただいております。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

処理中です...