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23話
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「おはよう清水」
「わっ、東雲、おはよう」
後ろから声をかけられて肩が跳ねる。昨日のみっともない自慰のせいで東雲に対する良心の呵責を感じぎくしゃくとした態度を取ってしまってなんとなく自分だけが気まずく感じる雰囲気にいたたまれなくる。
「のんちゃん東雲おはよ~さん」
なんてタイミングの良いんだ!
「おはよう西村!業務のことで聞きたいことがあるんだ!」
「えぇ?仕事熱心やな~のんちゃん」
「じゃあ!」と東雲に手を振って自分の席へと座る。その態度に何かを察したらしい勘の良い西村がニヤニヤと変な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「のんちゃんまだ仲直りしてないんやろ~」
「なっ、別に喧嘩してるわけじゃない」
「勝手に不安になってるだけやもんな~」
勝手に……確かに勝手と言えば勝手だけど。
「だってなんて切り出したら良いかわからないんだ」
「のんちゃんも言うてたやん東雲は聞いてくれるって」
「そうだけど、怖いものは怖い」
東雲のことをちゃんと好きだから、怖いんだ。
「でもええの?そうやって避けとったらかっさらわれるで」
ほら、と西村が指した先には東雲と腕を組む男。最近異動してきたらしい彼は東雲の後輩らしく、周りから見ても完全に東雲狙いで永遠と東雲にベタベタ触っている。東雲も東雲だ、簡単に触られて…きっと優しいから拒否出来ないんだろう。
「…わかってる、素直になったほうがいい事も全部」
「素直になれんのはなんでやろな~」
東雲とはまた違う大きな手で頭を撫でてくる西村を軽く睨んで受け入れる。こうやってグダグダ言ってたところで何も変わらないことは分かっているし、こうやって嫉妬するくらいなら素直に話せというのもわかる。
でもやっぱり長年の癖はなかなか消えなくて、まだ自分を蝕んだまま進めないでいる。
「ぼくが触りたいのはこの手じゃないのに」
「え、惚気なん?」
はあと溜息をつきながら頭を撫でる手を取った。男にしては綺麗な手、けれど東雲のすらっと伸びた美しい手とはまた違う、これじゃないと思ってしまう。
「叶だって、握られたい手はぼくじゃないはずだ」
「まぁそうやけど…って、久しぶりにのんちゃんから名前呼ばれた!」
「俺以外の名前を呼ぶなって言う人もういないから」
「あーやっぱ言われてたんか、でもそんなこと東雲言わんのやろ?」
「うん、言わない」
東雲はなにもかもが彼とは違う。強制はしないし、ちゃんと愛も伝えてくれる。けれどぼくは求めるのも求められるのも慣れてないから、また好きな人が離れていくのが嫌だから、そんな自分勝手な感情で東雲を振り回している。電話の時の何か言いたげな声はきっと様子のおかしい清水を心配してのことで、さっきの遮ってしまった話は自分がされたらきっと嫌なことだ。
でも求める気のない相手に求めてほしいなんて言えるわけがない。東雲は優しいからそんなことを言ってしまうと負担になる、やろうとしてくれてしまう。そうじゃなくて、東雲が頼りたいと…触りたいと思って触られたいのに。
ひゅうっと吹いた風が窓を揺らしてカタカタと揺れる。外の天気は清水の心を代弁するかのように雲がかかっていた。
「わっ、東雲、おはよう」
後ろから声をかけられて肩が跳ねる。昨日のみっともない自慰のせいで東雲に対する良心の呵責を感じぎくしゃくとした態度を取ってしまってなんとなく自分だけが気まずく感じる雰囲気にいたたまれなくる。
「のんちゃん東雲おはよ~さん」
なんてタイミングの良いんだ!
「おはよう西村!業務のことで聞きたいことがあるんだ!」
「えぇ?仕事熱心やな~のんちゃん」
「じゃあ!」と東雲に手を振って自分の席へと座る。その態度に何かを察したらしい勘の良い西村がニヤニヤと変な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「のんちゃんまだ仲直りしてないんやろ~」
「なっ、別に喧嘩してるわけじゃない」
「勝手に不安になってるだけやもんな~」
勝手に……確かに勝手と言えば勝手だけど。
「だってなんて切り出したら良いかわからないんだ」
「のんちゃんも言うてたやん東雲は聞いてくれるって」
「そうだけど、怖いものは怖い」
東雲のことをちゃんと好きだから、怖いんだ。
「でもええの?そうやって避けとったらかっさらわれるで」
ほら、と西村が指した先には東雲と腕を組む男。最近異動してきたらしい彼は東雲の後輩らしく、周りから見ても完全に東雲狙いで永遠と東雲にベタベタ触っている。東雲も東雲だ、簡単に触られて…きっと優しいから拒否出来ないんだろう。
「…わかってる、素直になったほうがいい事も全部」
「素直になれんのはなんでやろな~」
東雲とはまた違う大きな手で頭を撫でてくる西村を軽く睨んで受け入れる。こうやってグダグダ言ってたところで何も変わらないことは分かっているし、こうやって嫉妬するくらいなら素直に話せというのもわかる。
でもやっぱり長年の癖はなかなか消えなくて、まだ自分を蝕んだまま進めないでいる。
「ぼくが触りたいのはこの手じゃないのに」
「え、惚気なん?」
はあと溜息をつきながら頭を撫でる手を取った。男にしては綺麗な手、けれど東雲のすらっと伸びた美しい手とはまた違う、これじゃないと思ってしまう。
「叶だって、握られたい手はぼくじゃないはずだ」
「まぁそうやけど…って、久しぶりにのんちゃんから名前呼ばれた!」
「俺以外の名前を呼ぶなって言う人もういないから」
「あーやっぱ言われてたんか、でもそんなこと東雲言わんのやろ?」
「うん、言わない」
東雲はなにもかもが彼とは違う。強制はしないし、ちゃんと愛も伝えてくれる。けれどぼくは求めるのも求められるのも慣れてないから、また好きな人が離れていくのが嫌だから、そんな自分勝手な感情で東雲を振り回している。電話の時の何か言いたげな声はきっと様子のおかしい清水を心配してのことで、さっきの遮ってしまった話は自分がされたらきっと嫌なことだ。
でも求める気のない相手に求めてほしいなんて言えるわけがない。東雲は優しいからそんなことを言ってしまうと負担になる、やろうとしてくれてしまう。そうじゃなくて、東雲が頼りたいと…触りたいと思って触られたいのに。
ひゅうっと吹いた風が窓を揺らしてカタカタと揺れる。外の天気は清水の心を代弁するかのように雲がかかっていた。
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