Fatal scent

みるく汰 にい

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36話

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 「清水、市場調査どうだった?」
 「わっ東雲!?市場調査?あぁ森山課長との…えっと良い感じだった!参考になったよ」


 フロアに戻ってきたところであとはどのタイミングで渡そうかと考えていると不意に話しかけられる。見つかる前に隠そうと思っていたプレゼントもしっかりと見られ咄嗟に背後へと隠してしまった。あまりの挙動不審さに不思議そうな顔をする暖を見て、しまったと後悔するがもう遅い。


 「あれ?なにか買ってきたの?」
 「あー…これ?企画の参考になるかなって…森山課長のおすすめらしい」
 「森山課長のおすすめか…センス良いもんね、気に入るといいね」


 にっこりと笑う暖の笑みがなぜか貼り付けたような顔に見えたけど、瞬きの合間にいつもの表情に戻っている。一瞬のことに違和感を覚えるがあまりにも普段と変わらない態度に勘違いかと胸を撫で下ろした。


 「じゃあね清水、無理しすぎないで」
 「ん、ありがとう…東雲はいつ頃落ち着きそう?大丈夫か?」
 「大丈夫だよ、ありがとう。多分あと1、2週間耐えたらかな?」
 「そうか!終わったら……」
 「あっごめん、呼ばれた。行くね、また連絡する」


 どこか旅行でも、と話しかけたところで会話は終わり、暖は行ってしまう。呆気なく終わったささやかな時間に寂しいと感じたところでどうしようもないのに、あまりにもさらっと会話を切り上げられてしまってはさすがに落ち込んでしまう。

 心にぽっかりと穴があいたなんて言葉、陳腐だと思っていたのに今のぼくにぴったりじゃないか。少し話さないだけでこんなに寂しいなんて…
 でもきっと、暖も同じように感じてくれているはず。寂しいと思ってるのはぼくだけじゃない、はずだよな?


 「なぁなぁのんちゃん、森山さんなんか言うてた?」


 百面相をする璃暖にやけに不安げな西村が近付いてくる。なにかを言っていたかと聞かれれば言っていたが璃暖から話すなど野暮なことは出来ないのでなにも、とだけ返す。けれどどうしても悩ましげな西村に解決にはならないが話を聞くことならできると寄り添うが、あまり自分の事を話したがらない西村から返事はない。


 「……何でもないねん、おれの問題やから!」
 「話したらスッキリするかもしれないぞ?」

 作り笑いで話す西村に少しでも力になれたらと言葉をかける。

 「わからん…」
 「えっ…?」

 俯く西村から弱々しい言葉が発せられる。聞こえるか聞こえないかくらいの、小さな言葉が。

 「オメガの璃暖にはおれの気持ちなんてわからんやろ!?」


 __頭を鈍器で殴られたようだった。


 確かに璃暖と西村の間にはオメガとベータという違いこそあれど、今までその差を感じたことはなかった。
 出会ってから今に至るまで親友と呼べる時間を過ごしていたはずなのに、西村はわかりあえないと思っていたなんて。


 「…ごめんね」


 かろうじて絞り出せたのは謝罪の言葉だった。今までそんなことを思いながら一緒に過ごしてくれていたのかとか、それなのに話を聞いてくれてありがとう、オメガの体質で迷惑を掛け続けてごめんとか、言いたいことは山ほどあるのに頭に受けた衝撃がそれ以上を話させなかった。

 ハッと顔を上げた西村の顔は今にも泣きそうで、けれどそれをぐっと飲み込んで去って行ってしまう。


 こんな時、どうすれば良いかなんて叶にしか話せないのに…その叶が離れてしまったらもう誰にも言えないじゃないか。



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