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第2話 街での1日
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街の入り口に着くと、検問所があった。
でも、僕にはこの世界で身分を証明できるものが何もない。不法入国で捕まってしまうかもしれない。
そんな一抹の不安を抱えながら、検問所に入った。
中には、3人の職員らしき人がいた。
1人は黒を基調とした、金などの装飾の付いた質のいい服を着ており、あとの2人は同じ生地だと思われる黒い服に、胸当てやヘルメット、脛あてなどの簡単な鉄鎧を付け、腰には剣を携帯していた。
「軽い身体検査だけ受けてもらいます。所持品を全て台の上に置き、両腕をあげてください」
言われたままに所持品(地図と魔法薬の瓶のみ)を台の上に置き、手をあげる。
「では失礼します...」
足先から頭までくまなく服の上から触診された。結構くすぐったかった。
「特に何もありませんね。ひとつお聞きしますが、この体に付着している黒色のヘドロのようなものは何ですか?」
「魔物に襲われたときに付けられまして、粘性が強いみたいで剝がれなくて、困っているんですよ」
そう僕が言ったとたん、職員3人の顔が青ざめて、集まって何かをひそひそと話し始めた。
「この黒色、粘りつく性質、魔力の強さ。間違いなくアレだよな?」
「あぁ、多分アレだと思う」
「採取した方がいいのか?」
「その前に、ギルドに報告しないと被害が出るかもしれん」
聞こえてきた話の内容的に、このヘドロ、想像以上にマズイものなのかもしれない。
せっかくここまで来たのに、追放とかになったらどうしよう...
どうやら話し合いは終わったようで、こちらに戻ってきた。
職員3人のうち1人はどこかに行ってしまい、2人になっていた。
「このヘドロ、採取させてもらってもいいか?」
「まぁ、別にいいですけど......」
職員は慎重な手つきでヘドロをはがし、瓶に詰めていった。その間僕は、魔物の特徴、遭遇した場所などを事細かに聞かれていた。まるで職務質問や事情聴取のようで、僕は何もしていないはずなのに、悪いことをした気分になっていた。
「以上で身体検査は終わりです。このヘドロ瓶ですが、地図のこの場所に魔法店があるので、そこに行って店主に渡してください。話は通しておきます。」
かなり時間を取られた気がする。もうそろそろ20時ぐらいなんじゃないだろうか。
そして、魔法店に瓶を渡せとのお使いをさせられた。なんでだよ。
幸いそこまで遠くなく、ものの数分で着いた。
中では、眼鏡をかけた中年のイケオジがカウンターで頬づえをつきながら店先を眺めていた。
「やぁ、こんばんは。君が例の子だね?」
「はい、多分僕が例の子です」
「では、その瓶を頂けるかな?」
「はい、どうぞ」
「ふむふむ、これは、かなり上質なボルベドスの体液だね。よく生還できたね、君。運がいいのかねぇ?」
「そんなにやばい魔物なんですか?」
「あれは怖いねぇ、遠距離では黒砲を連射して消し炭にしてくるし、近距離ではヘドロで足を鈍くし、爪で掻き殺してくるからね。それに加えて、並大抵の魔法は弾くし、鎧みたいに硬いのなんのって...だから、討伐ランクもC,Bと、かなり上位な魔物だよ。ここ最近は発生報告も上がってきていなかったというのに...」
「そんなに危険な魔物だったのか...」
「まぁ、その体液は濃度の高い魔力を潤沢に含んでて、闇属性の魔法薬にするとかなりの効能が期待できるんだ。この量があれば濃度60%で6本ぐらい作れそうだ...君にも3本ほどあげよう。明日の朝にでも取りに来なさい」
「はい!ありがとうございます!」
「それから、タダでもらうのは申し訳ないから、中金貨を2枚あげよう」
「いいんですか!?」
「いいよ。この質のものを扱うのは初めての経験だし、なにより、あの魔物に立ち向かった勇気を褒めるって理由もあるからね」
そうした会話をしてから、僕は魔法店を後にした。
「まさか、ただの汚れだと思っていたものが金貨に化けるとはなぁ」
金の価値はまだ分からないが、この金があれば、少なくとも今日寝るところには困らなさそうだ。
でも、まだ寝るには早い。ギルドにでも行ってみよう。
さっき貰った地図を頼りにしばらく歩いていると、バカでかい建物が見えた。多分これがギルドだろう。
入口から中に入ると中は吹き抜けのある広いエントランスがあり、奥に受付のカウンターがある。壁に掛けられている時計は、20時半を回ったところだった。
それでもなお人は多く、酒に酔っている人もいたりして、騒がしい空間だった。
別に、人には興味がないのでさっさとやることを済ませてここを出よう。そしてふかふかな布団でぐっすり寝よう。
そして、カウンターへ行くと受付嬢から話しかけられた。
「こんばんは、初めて見る方ですね。今日はどのような要件ですか?」
「ギルドのことを少し教えていただけませんか?」
「はい。ギルドでは、身分証明の発行などの行政処理と、冒険者登録による依頼受注ができます。魔物素材の取引、依頼の発注などの場合でも冒険者登録は必要なので注意してください」
「じゃあ、身分証明の発行と冒険者登録をお願いします」
「身分証明の発行は銅貨20枚、冒険者登録は銅貨10枚を頂戴します」
「じゃあ、これで」
そう言って、さっき貰った中金貨1枚を出す。
受付嬢の顔がぎょっとした後、信じられないという顔で見られた気がするが、気のせいだろう。
慌てた様子で出された釣り銭はちょっとした山になっている。
「で、では、ステータスをもとに登録を行うので、ここに手をかざしてください」
そこには石のようなものが置いてあり、右手を模した絵がほんのり光っていた。手をかざすと、さっき平原で見たステータスがそのまま表示された。
「あなた...まだ10歳なんですか!?高身長なので16歳ほどかと...にしてもレベルが低くないですか?10歳なら最低でも4や5はあると思うんですが...」
「あ、あはは...」
「ステータスにも名前がないようですが、どうしますか?」
「じゃあ...
ファリグ・レタールで登録してください」
「わかりました。では、これが身分証明の紙と、冒険者の印のバッジです。冒険者ランクはEです。Aランクを目指して頑張ってください」
これで、僕も立派な冒険者だ。
しかし、さっき10歳なら最低でもレベル5ぐらいはあるって言ってたな...
やっぱり、このステータスは低すぎるんだろう。
明日は、さっき手に入れたお金を使って服や武器を買ってから、魔物狩りにでも行こうかな。あ、あと魔法店に薬を取りに行くのも忘れないようにしないと。
そして、手頃な宿屋を見つけた。宿泊費は銅貨3枚だった。これで、僕の手持ちは中金貨1枚、小金貨9枚、銀貨19枚、銅貨17枚になった。部屋に入って、そのまま倒れ込むように就寝した。
* * *
次の日。起きたら朝の7時だった。足がバッキバキに痛い。そりゃそうだ、昨日はかなりの長距離を走ったり歩いたりしたんだから。
でも、痛みはあるものの、なぜか動けるので、約束していた通り、魔法店に行くことにした。
魔法店に行くと、巨体のイケオジ店主が待ち構えていた。
僕を見るなり興奮した様子で、
「本当にありがとう!!君のおかげですごい魔法薬ができたんだ!!」
と手を握って子供のように大はしゃぎしていた。昨日の貫禄ある雰囲気は一体どこに置いてきたんだか。
そしてそのまま店内へ連れ込まれて、話をすることになった。
「それで、どんな薬ができたんですか?」
「よく聞いてくれたね!聞いて驚くなよ?この薬は、闇属性の魔力を底上げするだけじゃなくて、闇属性そのものの発現もできてしまう代物なのさ!」
「発現ってのは一体なんなんですか?そしてそれのどこが凄いんです?」
「はぁ、この凄さがわからんのか、君は。普通、闇とか聖の属性は、生まれ持ったものでしかなく、あとから発現することはないんだ。でもね、この薬はそれを可能にしてしまうんだよ」
「つまり発現っていうのは持ってない属性が新しく使えるようになることで、この薬の場合は闇魔法が使えるようになるってことですか?」
「まぁ、そういうことだな。ただ、副作用で体が中から壊れて苦しむことになったり、死ぬこともあるし、発現しない可能性すらある。けどそれは発現の可能性と比べたら些細な問題に過ぎない」
「それ、些細な問題で済ませていいものじゃなくないですか?」
「まぁ副作用は怖いけど、発現の可能性だけ見たら、すごい薬ってことだね。いるかい?」
副作用の怖さを語った直後に「いるかい?」ってなんだよ。
あんな説明されたら貰うの躊躇っちゃうでしょうが。
でも、なんか闇って強そうじゃん。前の世界で言ってたら厨二病確定だけどな...
使えるかもしれないなら使ってみたいかもなぁ...
「じゃあ...もらいます」
その後、魔法の属性の話などをしてもらった。魔法の属性は、大きく分けて10種類ある。
無、火、水、電、風、土、氷、星、聖、闇属性だ。
その中でも、陽の魔力、陰の魔力という極が存在する。
つまり全属性それぞれに、陽極魔法、陰極魔法、そして、陽と陰を組み合わせた双極魔法があるということだ。
そういった説明を聞いた後、体力薬、魔力薬、回復薬などの魔法薬をいくつか買って、店を出た。
日が結構昇ってきていた。結構時間を使ってしまったようだ。
長居してしまったことを反省しながら、服屋に来た。
前の世界では見たことがないようなデザインの服が店先にたくさん並んでいる。中には前の世界の服屋と同じように、吊るされた服が所狭しと掛けられている。
普段使いの服と、冒険用の破けない丈夫な服。そして胸・腕・足に付ける軽量の皮鎧を買った。
全身を鎧で覆うこともできたが、機敏や筋力のステータスが低い現状で重い装備を付けると動けなくなってしまうのでやめた。
そして、小さめのバッグを買った。見た目こそ小さいものの、魔法によって小型の魔物ぐらいなら丸ごと入る大きさに拡張されているらしい。空間魔法がかかっている分、銀貨8枚とかなり値が張ったが、いい買い物だった。
そのあとは武器屋に来た。店先には刃先に模様の付いた大小様々な剣や刀が並べられていて、中からは熱気と金属を打つ音が漏れている。
並べられた剣の中から、比較的小さめな、短刀の類のものを見つけた。持ってみると、とても手に馴染んで、振り回しやすい。金属の重さはあまり感じなかった。
しかし、価格を見てみて絶句した。銀貨15枚という値札がつけられていたのだ。空間魔法付きのバッグですら銀貨8枚だったのだ。これがその倍近いとはとても信じがたい。
その他の武器も見てみた。波のような跡のある大きな大剣や、小型の投げナイフのようなもの、反った刀身が特徴の日本刀のようなものまで、非常にユニークなものがたくさんあった。
しかし最終的に、最初に選んだ短刀が一番扱いやすいという結論に至ったので、これを買うことにした。
あぁ、金貨があるとはいえ、服やバッグに使った分と比べると、懐が苦しくなってくる...
そんな気持ちに折り合いを付けて、支払いをしていると、店の人から話しかけられた。
「君、このダガーをほんとに買うのかい?」
「はい、買いますけど、何かまずいことでも?」
「いやいや、まずいなんてことはないさ。ただ、この剣は値は張るし、人を選ぶ代物だからさ...」
「人を選ぶ、というと?」
「君はこのタイプの剣を見るのは初めてなのかい?
武器や装備には使用者との相性が重要になるものもあってね。相性がいい人が使うと伝説の装備のような強さを発揮することもあるんだ」
「そしてこの剣の場合は、オルティナイトという、アダマンタイトとレギオナイトの合金からできていてね...魔力をまとわせやすくて、刃が鋭くて摩耗しにくい。さらに非常に軽いという、魔法と物理の連携がしやすい武器なんだ」
「なるほど...」
「じゃあ、これ、一応研ぎなおしておいたから。この革の鞘にでも入れておきなさい」
「はい!ありがとうございました!」
これで冒険に必要な物は全部揃った。物を揃えるだけで小金貨が2枚なくなるとは思いもしなかったなぁ。
この世界の物価が高いのか、それとも僕が贅沢なのか、どっちなのかは分からないけど。
せっかく昨日大金をもらったというのに、この調子だとすぐなくなってしまいそうだ。
あとは、ギルドで依頼を受注して、いざ狩りに行くだけだな。
と思っていたのだが、買い物が終わって気を抜いた瞬間、痛みが盛り返してきた。
ファンタジーな世界に興奮して痛みを忘れていたらしい。
せっかくこんな世界に来たんだから筋肉痛ぐらいはどうにか治ってほしいものだ。
そんな文句を言っても、今日は動けそうにないので、一日休んで明日狩りに行こう。
でも、僕にはこの世界で身分を証明できるものが何もない。不法入国で捕まってしまうかもしれない。
そんな一抹の不安を抱えながら、検問所に入った。
中には、3人の職員らしき人がいた。
1人は黒を基調とした、金などの装飾の付いた質のいい服を着ており、あとの2人は同じ生地だと思われる黒い服に、胸当てやヘルメット、脛あてなどの簡単な鉄鎧を付け、腰には剣を携帯していた。
「軽い身体検査だけ受けてもらいます。所持品を全て台の上に置き、両腕をあげてください」
言われたままに所持品(地図と魔法薬の瓶のみ)を台の上に置き、手をあげる。
「では失礼します...」
足先から頭までくまなく服の上から触診された。結構くすぐったかった。
「特に何もありませんね。ひとつお聞きしますが、この体に付着している黒色のヘドロのようなものは何ですか?」
「魔物に襲われたときに付けられまして、粘性が強いみたいで剝がれなくて、困っているんですよ」
そう僕が言ったとたん、職員3人の顔が青ざめて、集まって何かをひそひそと話し始めた。
「この黒色、粘りつく性質、魔力の強さ。間違いなくアレだよな?」
「あぁ、多分アレだと思う」
「採取した方がいいのか?」
「その前に、ギルドに報告しないと被害が出るかもしれん」
聞こえてきた話の内容的に、このヘドロ、想像以上にマズイものなのかもしれない。
せっかくここまで来たのに、追放とかになったらどうしよう...
どうやら話し合いは終わったようで、こちらに戻ってきた。
職員3人のうち1人はどこかに行ってしまい、2人になっていた。
「このヘドロ、採取させてもらってもいいか?」
「まぁ、別にいいですけど......」
職員は慎重な手つきでヘドロをはがし、瓶に詰めていった。その間僕は、魔物の特徴、遭遇した場所などを事細かに聞かれていた。まるで職務質問や事情聴取のようで、僕は何もしていないはずなのに、悪いことをした気分になっていた。
「以上で身体検査は終わりです。このヘドロ瓶ですが、地図のこの場所に魔法店があるので、そこに行って店主に渡してください。話は通しておきます。」
かなり時間を取られた気がする。もうそろそろ20時ぐらいなんじゃないだろうか。
そして、魔法店に瓶を渡せとのお使いをさせられた。なんでだよ。
幸いそこまで遠くなく、ものの数分で着いた。
中では、眼鏡をかけた中年のイケオジがカウンターで頬づえをつきながら店先を眺めていた。
「やぁ、こんばんは。君が例の子だね?」
「はい、多分僕が例の子です」
「では、その瓶を頂けるかな?」
「はい、どうぞ」
「ふむふむ、これは、かなり上質なボルベドスの体液だね。よく生還できたね、君。運がいいのかねぇ?」
「そんなにやばい魔物なんですか?」
「あれは怖いねぇ、遠距離では黒砲を連射して消し炭にしてくるし、近距離ではヘドロで足を鈍くし、爪で掻き殺してくるからね。それに加えて、並大抵の魔法は弾くし、鎧みたいに硬いのなんのって...だから、討伐ランクもC,Bと、かなり上位な魔物だよ。ここ最近は発生報告も上がってきていなかったというのに...」
「そんなに危険な魔物だったのか...」
「まぁ、その体液は濃度の高い魔力を潤沢に含んでて、闇属性の魔法薬にするとかなりの効能が期待できるんだ。この量があれば濃度60%で6本ぐらい作れそうだ...君にも3本ほどあげよう。明日の朝にでも取りに来なさい」
「はい!ありがとうございます!」
「それから、タダでもらうのは申し訳ないから、中金貨を2枚あげよう」
「いいんですか!?」
「いいよ。この質のものを扱うのは初めての経験だし、なにより、あの魔物に立ち向かった勇気を褒めるって理由もあるからね」
そうした会話をしてから、僕は魔法店を後にした。
「まさか、ただの汚れだと思っていたものが金貨に化けるとはなぁ」
金の価値はまだ分からないが、この金があれば、少なくとも今日寝るところには困らなさそうだ。
でも、まだ寝るには早い。ギルドにでも行ってみよう。
さっき貰った地図を頼りにしばらく歩いていると、バカでかい建物が見えた。多分これがギルドだろう。
入口から中に入ると中は吹き抜けのある広いエントランスがあり、奥に受付のカウンターがある。壁に掛けられている時計は、20時半を回ったところだった。
それでもなお人は多く、酒に酔っている人もいたりして、騒がしい空間だった。
別に、人には興味がないのでさっさとやることを済ませてここを出よう。そしてふかふかな布団でぐっすり寝よう。
そして、カウンターへ行くと受付嬢から話しかけられた。
「こんばんは、初めて見る方ですね。今日はどのような要件ですか?」
「ギルドのことを少し教えていただけませんか?」
「はい。ギルドでは、身分証明の発行などの行政処理と、冒険者登録による依頼受注ができます。魔物素材の取引、依頼の発注などの場合でも冒険者登録は必要なので注意してください」
「じゃあ、身分証明の発行と冒険者登録をお願いします」
「身分証明の発行は銅貨20枚、冒険者登録は銅貨10枚を頂戴します」
「じゃあ、これで」
そう言って、さっき貰った中金貨1枚を出す。
受付嬢の顔がぎょっとした後、信じられないという顔で見られた気がするが、気のせいだろう。
慌てた様子で出された釣り銭はちょっとした山になっている。
「で、では、ステータスをもとに登録を行うので、ここに手をかざしてください」
そこには石のようなものが置いてあり、右手を模した絵がほんのり光っていた。手をかざすと、さっき平原で見たステータスがそのまま表示された。
「あなた...まだ10歳なんですか!?高身長なので16歳ほどかと...にしてもレベルが低くないですか?10歳なら最低でも4や5はあると思うんですが...」
「あ、あはは...」
「ステータスにも名前がないようですが、どうしますか?」
「じゃあ...
ファリグ・レタールで登録してください」
「わかりました。では、これが身分証明の紙と、冒険者の印のバッジです。冒険者ランクはEです。Aランクを目指して頑張ってください」
これで、僕も立派な冒険者だ。
しかし、さっき10歳なら最低でもレベル5ぐらいはあるって言ってたな...
やっぱり、このステータスは低すぎるんだろう。
明日は、さっき手に入れたお金を使って服や武器を買ってから、魔物狩りにでも行こうかな。あ、あと魔法店に薬を取りに行くのも忘れないようにしないと。
そして、手頃な宿屋を見つけた。宿泊費は銅貨3枚だった。これで、僕の手持ちは中金貨1枚、小金貨9枚、銀貨19枚、銅貨17枚になった。部屋に入って、そのまま倒れ込むように就寝した。
* * *
次の日。起きたら朝の7時だった。足がバッキバキに痛い。そりゃそうだ、昨日はかなりの長距離を走ったり歩いたりしたんだから。
でも、痛みはあるものの、なぜか動けるので、約束していた通り、魔法店に行くことにした。
魔法店に行くと、巨体のイケオジ店主が待ち構えていた。
僕を見るなり興奮した様子で、
「本当にありがとう!!君のおかげですごい魔法薬ができたんだ!!」
と手を握って子供のように大はしゃぎしていた。昨日の貫禄ある雰囲気は一体どこに置いてきたんだか。
そしてそのまま店内へ連れ込まれて、話をすることになった。
「それで、どんな薬ができたんですか?」
「よく聞いてくれたね!聞いて驚くなよ?この薬は、闇属性の魔力を底上げするだけじゃなくて、闇属性そのものの発現もできてしまう代物なのさ!」
「発現ってのは一体なんなんですか?そしてそれのどこが凄いんです?」
「はぁ、この凄さがわからんのか、君は。普通、闇とか聖の属性は、生まれ持ったものでしかなく、あとから発現することはないんだ。でもね、この薬はそれを可能にしてしまうんだよ」
「つまり発現っていうのは持ってない属性が新しく使えるようになることで、この薬の場合は闇魔法が使えるようになるってことですか?」
「まぁ、そういうことだな。ただ、副作用で体が中から壊れて苦しむことになったり、死ぬこともあるし、発現しない可能性すらある。けどそれは発現の可能性と比べたら些細な問題に過ぎない」
「それ、些細な問題で済ませていいものじゃなくないですか?」
「まぁ副作用は怖いけど、発現の可能性だけ見たら、すごい薬ってことだね。いるかい?」
副作用の怖さを語った直後に「いるかい?」ってなんだよ。
あんな説明されたら貰うの躊躇っちゃうでしょうが。
でも、なんか闇って強そうじゃん。前の世界で言ってたら厨二病確定だけどな...
使えるかもしれないなら使ってみたいかもなぁ...
「じゃあ...もらいます」
その後、魔法の属性の話などをしてもらった。魔法の属性は、大きく分けて10種類ある。
無、火、水、電、風、土、氷、星、聖、闇属性だ。
その中でも、陽の魔力、陰の魔力という極が存在する。
つまり全属性それぞれに、陽極魔法、陰極魔法、そして、陽と陰を組み合わせた双極魔法があるということだ。
そういった説明を聞いた後、体力薬、魔力薬、回復薬などの魔法薬をいくつか買って、店を出た。
日が結構昇ってきていた。結構時間を使ってしまったようだ。
長居してしまったことを反省しながら、服屋に来た。
前の世界では見たことがないようなデザインの服が店先にたくさん並んでいる。中には前の世界の服屋と同じように、吊るされた服が所狭しと掛けられている。
普段使いの服と、冒険用の破けない丈夫な服。そして胸・腕・足に付ける軽量の皮鎧を買った。
全身を鎧で覆うこともできたが、機敏や筋力のステータスが低い現状で重い装備を付けると動けなくなってしまうのでやめた。
そして、小さめのバッグを買った。見た目こそ小さいものの、魔法によって小型の魔物ぐらいなら丸ごと入る大きさに拡張されているらしい。空間魔法がかかっている分、銀貨8枚とかなり値が張ったが、いい買い物だった。
そのあとは武器屋に来た。店先には刃先に模様の付いた大小様々な剣や刀が並べられていて、中からは熱気と金属を打つ音が漏れている。
並べられた剣の中から、比較的小さめな、短刀の類のものを見つけた。持ってみると、とても手に馴染んで、振り回しやすい。金属の重さはあまり感じなかった。
しかし、価格を見てみて絶句した。銀貨15枚という値札がつけられていたのだ。空間魔法付きのバッグですら銀貨8枚だったのだ。これがその倍近いとはとても信じがたい。
その他の武器も見てみた。波のような跡のある大きな大剣や、小型の投げナイフのようなもの、反った刀身が特徴の日本刀のようなものまで、非常にユニークなものがたくさんあった。
しかし最終的に、最初に選んだ短刀が一番扱いやすいという結論に至ったので、これを買うことにした。
あぁ、金貨があるとはいえ、服やバッグに使った分と比べると、懐が苦しくなってくる...
そんな気持ちに折り合いを付けて、支払いをしていると、店の人から話しかけられた。
「君、このダガーをほんとに買うのかい?」
「はい、買いますけど、何かまずいことでも?」
「いやいや、まずいなんてことはないさ。ただ、この剣は値は張るし、人を選ぶ代物だからさ...」
「人を選ぶ、というと?」
「君はこのタイプの剣を見るのは初めてなのかい?
武器や装備には使用者との相性が重要になるものもあってね。相性がいい人が使うと伝説の装備のような強さを発揮することもあるんだ」
「そしてこの剣の場合は、オルティナイトという、アダマンタイトとレギオナイトの合金からできていてね...魔力をまとわせやすくて、刃が鋭くて摩耗しにくい。さらに非常に軽いという、魔法と物理の連携がしやすい武器なんだ」
「なるほど...」
「じゃあ、これ、一応研ぎなおしておいたから。この革の鞘にでも入れておきなさい」
「はい!ありがとうございました!」
これで冒険に必要な物は全部揃った。物を揃えるだけで小金貨が2枚なくなるとは思いもしなかったなぁ。
この世界の物価が高いのか、それとも僕が贅沢なのか、どっちなのかは分からないけど。
せっかく昨日大金をもらったというのに、この調子だとすぐなくなってしまいそうだ。
あとは、ギルドで依頼を受注して、いざ狩りに行くだけだな。
と思っていたのだが、買い物が終わって気を抜いた瞬間、痛みが盛り返してきた。
ファンタジーな世界に興奮して痛みを忘れていたらしい。
せっかくこんな世界に来たんだから筋肉痛ぐらいはどうにか治ってほしいものだ。
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