せっかく異世界転生したのに弱すぎるんですが!

神木おちば

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第3話 初めての狩り

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 買い物をした日の晩は、ギルドの宿舎に泊まった。
 銅貨1枚とかなり安かったが、寝心地は最悪で、ベッドで寝ているはずなのに床で寝ている感覚がした。

 そして、今はギルドの掲示板を見ているところだ。
 依頼が隙間なく張り出されていて、冒険者でごった返している。

 この世界の依頼のシステムは、
  素材を納品する「納品クエスト」
  魔物を討伐する「討伐クエスト」
 の2つが基本クエストで、他にも職業クエストというのがある。
 討伐クエストは討伐証明が必要となるので注意。
 と教えられた。
 
 僕は今Eランクなので、大型のクエストは受けられない。今できるのは、スライムの素材の納品や、薬草採取、小型魔物の討伐などだ。

 出されている依頼を確認したところで、装備を付けて、いざ出発だ。
 今回が初めての魔物狩りだから、初心者でも狩りやすい魔物が多くいる「ケラフの森」という場所に行くことにした。街からもそこまで遠くなくて、徒歩でも行ける距離らしい。
 魔法の練習もできるといいな。

 魔法のイメトレをしながら進むこと数分。目の前に森が見えてきた。よく見ると、スライムのようなものが草の陰にいたり、動くものの影が見える。
 森に入る前に、短刀を鞘から抜き出しておき、戦闘に備えておく。

 森に入ると、いきなりスライムが飛び出してきた。よく思い浮かべる安定した丸型のスライムというよりは、某ゲームのメタルスライムのような形をしていて、出てくるなり水を噴射して攻撃してきた。

 短剣で切りかかると身が二つに分かれたが、残った身が大きい方はまだ動いており、さっきよりも素早く動き出した。
 なるほど。これは動けない大きさまで切り刻まなきゃいけないか、核のようなものを壊さないといけないパターンだろう。しかも切れば切るほどどんどん動きが早くなるようだ。
 
 追いかけてはぶった切り、また追いかけてはぶった切る。そうやってゲル状の体をどんどん削いでいく。切れば切るほど動きが早くなり、追いつくのでも一苦労だ。スライムも負けじと水を噴射してきて、かかった部分はだんだんとヒリヒリしてきた。

 そうして追いかけっこをすること数十分、ようやく息の根を止めることが出来た。
 身は完全に崩れて、原型を留めていない。そして、観察してみたところ、ニつに割れた小さなボールのようなものが付いていた。どうやら、核のようだ。

 おっと、こうしてちゃいけない。倒したスライムを採取しなくちゃいけない。
 完全に水のようなところは使い物にならないので捨ててしまって構わないが、ゲル状の部分はスライムジェムといって、納品素材になる。

 スライムジェムを瓶詰めし終わったところで、ステータスを確認してみよう。少しは上がってるといいが......

 基礎ステータス
 【名前】ファリグ・レタール
 【種族】人間
 【性別】男
 【年齢】10歳
 【状態】疲労
 【レベル】2 (+1)
 【生命力】76/88 (+12)
 【体力】71/89 (+21)
 【魔力】67/67 (+17)
 【筋力】46 (+18)
 【機敏】65 (+29)
 【器用】40 (+23)
 【運】69 (+7)
 【スキル】『基礎運動能力レベル:1』
 【特殊能力】『獲得経験値補正:1.1倍』『魔力値補正:1.2倍』
 【加護】なし

 装備ステータス
 【重量】超軽量
 【物理攻撃力】167
 【魔力攻撃力】112
 【防御力】26
 【特殊効果】『水属性耐性:弱』『魔法物理攻撃強化:強』

 レベルが1上がっていた。()で書かれているものは、前回見た数値からの変動を表しているようだ。
 そして、まともな装備を身に着けたことによって装備品の効果のステータスも見れるようになったみたい。
 
 引き続き、色々な魔物との戦闘を楽しむことにしよう。
 
 そのとき、突然草陰からスライムと女の子が飛び出してきた。

 「まって!まってってば~!!」

 かなり小さいスライムのようで、追いつくのに苦労しているようだ。距離はどんどん開いている。
 可哀想なので、サクッと倒してあげるととても感謝された。

 「ありがとうございます!スライムのすばしっこさはやっぱり慣れないんですよねぇ...
  それにしても、お兄さんって強いんですね!」

 「ま、まぁ...」

 「私、まだまだ未熟なので、良ければ一緒に魔物討伐してくれませんか?」

 「いいですよ!こちらこそお願いします!」

 心強い...かは置いておいて、仲間ができた。これならスライムも挟み撃ちできるし、効率よく狩りが出来そうだなぁ...

 「あ!魔物が出てきましたよ!」

 出てきたのはイノシシのような、それでいて小型の魔物だった。ぴょんぴょん跳ねながら逃げ回っている。

 「結構かわいい魔物だね。敵意なんてなかったりして...」

 「あ!離れて!危ないですよ!!」

 「あっちぃ!!なんだこいつ!火吹いてきやがった!!」

 「あー、焦げちゃってますねぇ、”ボルボロス”にはうかつに近づいちゃいけないんですよ...」

 こいつボルボロスって言うのか、火が当たった場所がヒリヒリする...
 やけど薬なんてのも売ってたなぁ...買っておけばよかった。

 「じゃあ魔法で私が倒しちゃいますね?」

 「う、うん、頼んだ...」

 「”ウォーターバレット”!」

 そう女の子が言うと、2cmぐらいの大きさの水玉がボルボロスに命中した。
 そしてボルボロスはギャッという悲鳴を上げて倒れた。なるほど、これが魔法なのか。

 「す、すごいね...」

 「これぐらいなら練習すればできますよ!魔法をぎゅっと集めて、前にパァ!と打ち出すイメージでやれば簡単です!」

 魔法ってそんな適当でいいのかよ。こう、魔法陣とかでバーッってやる感じかと思ってた。ホントにただイメージするだけでいいんだなぁ。

 「これ、解体しないといけないから嫌なんですよね」

 「解体?」

 「はい、ボルボロスは、お肉と、皮、火炎袋がギルドで売ることが出来て、頭が討伐証明なんですよ」
 「でも、この生々しい感覚には慣れないし、このナイフも切れ味は良くないので辛いんですよね...」

 「よかったら、この短剣、使う?」

 「ん、ありがとう」

 僕から短剣を受け取った彼女は、慎重ながら大胆に切り裂き解体していく。
 器用な手つきで、骨を外し、内臓を取り出し、皮を剥いていく。そのスピードは凄まじく、マグロの解体ショーを見ているようだった。
 
 「短剣を貸してくれてありがとう!この短剣の切れ味はすごいね!」

 そりゃそうだ。あんな高い金を出して買った剣が、ちょっとやそっとの物が切れなかったら困る。
 ステータスでも物理攻撃力は三桁あるんだからな。

 「じゃあ、もう少し狩ったらギルドに納品しに行きませんか?」

 「そうしたいんですが、鞄が小さくてそんなに物が入らないんですよ...」

 「じゃあ、僕の鞄に入れてしまいましょう。このぐらいの大きさならそこそこ入りますよ」

 「そうなんですか?なら、お言葉に甘えさせてもらいますね!」

 その後、ボルボロスやスライムを沢山狩って、結構素材が集まった。薬草も一緒に採ることが出来て、かなりの収穫だった。

 「そういえば、今まで名前を聞いてませんでしたね!
  お兄さん、名前はなんて言うんですか?」

 「ファリグ。ファリグ・レタールって言います」

 「じゃあ、ファリグさんって呼びますね!私はパルチェ・ソスオリタルって言います!」

 「じゃあ、パルチェさんって呼びますね」

 「ファリグさんっておいくつなんですか?」

 「生を受けてから10年です」

 「なにちょっとカッコイイ感じで言ってるんですか。普通に10歳って言ってくださいよ...
  あと、同い年なんですね、ちょっと意外です」

 「あはは、歳をいつも間違えられるから困ってるよ、まったく」

 「じゃあ、ファリグさん。今日のお礼もしたいので家に来てくれませんか?」

 「いやいや、他人の家に行くのはあんまり慣れてなくて。やめておくよ」

 「んもぅ、そう言わず!お礼をしたいんですから!レディのお誘いを断る男性はモテませんよ!」

 そういえば前世でも人との関わりはあんまりなかったなぁ。まぁ、小さな関わりでも大事にするように生きてみたっていいのかな...

 「そうとなったら早く換金を済ませてしまいましょう!ほら、行きますよ!ファリグさん!
  あれ?同い年ならさんって呼ぶよりはくんって呼んだ方がいいですか?」

 「どっちでもいいよ。それにしても、これでいくらになるかなぁ?」

 「わかんないけど、これで銀貨2枚と銅貨7枚分ぐらいにはなるんじゃないかなぁ?
  まぁ、税とかいろいろ取られちゃうから、もらえるのは銀貨1枚と銅貨13枚ぐらいになるんだけどね」

 そんな話をしつつ、ギルドに着き、換金作業を始めた。

 別室に案内されて、狩ってきた成果物を全部出す。係の人がリストにまとめて、そのままお金を渡される。
 それで今日のギルドはおしまい。

 「やっぱりこの時間が長いのよね。もうちょっと早くならないのかなぁ!」

 「それで、金額はどれぐらいだったの?」

 「ファリグ君ってお金しか頭にないの??
  えっとね、銀貨一枚に銅貨が9枚かな」

 「おぉ、大体あってた。すごいね、パルチェさん」

 「まぁ、何回かこういうことはしてるから。あとは、王族だからっていうのもあるかも?多分」

 「ははっ、王族って、そんなの関係ないでしょ...ん?王族って言った?」

 「うん、言ったよ?」

 「え」

 「え?」

 「...ゑ?」

 「そんな驚かなくてもいいじゃん...」

 「だって、身分高い人に話しかけたらよくないでしょ」

 「なにそれ、そんなの言ったら誰とも喋れなくなっちゃうじゃん、あははっ」
 「ほら、あれが私の家」

 そういって指をさした先にはとんでもない豪邸が建っていた。旧世界で比較するとしたら、アメリカの広めの一軒家よりも大きい感じだった。さすがは王族ってだけある。
 っていうか、今から僕あそこに行くの.......?

 「はぁ、またお父さんに叱られるのかなぁ」

 「なんで?」

 「森に一人で行くな!って、止められるんだよね。死ぬことなんかないのにさ」
 「あー、やっぱり家の前で待ち構えてるよ...」

 彼女の視線の先を見ると、確かに屋敷の前の道に二人ほど人影が見える。まぁ、考えるまでもなくパルチェの家族だろう。
 こちらを視認するや否や、すごい勢いで駆け寄ってきた。

 「パルチェ、パルチェか!?どこに行っていたんだ!探したんだぞ!」

 「まったく、ルチェはいつまで父さんを困らせるんだ?」

 凄むような声に、こちらもビックリした。
 多分父親と兄弟か何かだろう。
 まぁ、心配していた気持ちは分からないでもないが、王族が平民の前で子供を叱りつけていいのだろうか...?
 そして、パルチェはというと、

 「はは、ごめんなさーい!」

 それだけ言い残し、逃げるように屋敷の中に消えた。ここに残された僕の気持ちを考えてくれる人は、どうやら誰もいないらしい。かなしいね。
 
 「あのおてんば娘はよいとして...お前はなんだ。どうして俺の娘と一緒にいる?」

 「と、父さん落ち着いて。まだこの人が悪い奴と決まったわけじゃないじゃないか」

 「えと、僕は森で困ってたパルチェさんを助けただけなんですけど...」

 「そうだよお父さん!助けてもらったの!」

 「そ、そうだったか。
  すまない。少し気が立ってしまっていたようだ。礼をしなければならんな。
  どうぞ入って。あとパルチェ、お前はあとで説教だ」

 そう言って僕は屋敷の中へ通された。
 いやぁ、やっぱり緊張するなぁ。



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