凡人は美形悪役に転生するもんじゃない

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19 おまけ話2後編 魔物卵と浴室の魔法陣

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 ――……!
 ――……さま!
 ――……カイラー!
 ――カイラー様!

 何だか騒々しい。あぁ、気絶したのか俺。エイリアンもとい魔物のキシャーって声かもしれないなこれ。こんな近くで五月蝿いくらいに聞こえるのはそいつが至近距離におわすせいだろうなーハハッ。

「うっ……ぅう、やめろ、俺を食べても、美味しくないぞ……」
「「スカイラー(様)!」」

 あ、人の言葉だなこれ。

「……ぉ、お前、ら……?」

 俺を覗き込むのはブラッキーとグリーンだ。二人の背後には見慣れた寝室の天井がある。良かった~、最期いやいや最初に見たのが魔物じゃなくて。

「やっと起きたな……! スカイラーは僕を心労で殺す気かよ? もうこんな心配させんな!」
「目覚める前兆でしたのか、急に苦しそうにされたのでびっくりしましたよもうっ。ですけど気が付かれて良かったですよスカイラー様あぁっ!」

 使い慣れたベッドに横になりながら、俺は少し鼻声のブラッキーからはがばりと抱き着かれ、涙と鼻汁塗れのグリーンからは両手を握られた。

 腹は……膨れてはいない。すっかり元通りだ。ならやっぱり孵化したのか。

 つまり、もう、卵がくっ付いていない! 笑えないコメディー状態は脱したんだなやったぜスカイラー!!

 あれ程引っ張っても取れなかったのが嘘みたいだよ。生まれたからにはもう魔力を吸い取られもしないだろうし、あ~良かった~~!
 天にも昇る心地だ。安心した。しかし矛盾するようだがまだ安心はできない。

「心配かけて悪かった。もう大丈夫だから」

 言いつつ俺は室内をキョロキョロと見回す。

「それなら何よりですけど、何かお探しですか?」
「いや、生まれた魔物はと思って」

 変な間があった。

「えぇと、生まれた魔物……ですか?」

 グリーンは不思議そうに首を傾げる。
 俺を離したブラッキーも怪訝そうに俺を見る。

「魔物の卵ならそこにあるけど、まだ生まれてはないな」

 視線で示されたそこへと目をやれば、室内のテーブルの上には確かに黒い卵が置かれていた。

「え……? どうしてだ? 何で卵が孵っていない? どういうことだ? 今まで俺の腹にくっ付いていただろ? いつ離れたんだ?」
「「腹にくっ付く?」」

 見事にハモったブラッキーとグリーンだが、二人は困惑しきりに顔を見合わせた。この二人のタイミングもバッチリで、やっぱりこいつら何だかんだで馬が合うよなと思った。






「――……え? 嘘だろ? 三日も?」

 二人に改めて状況を尋ねれば、何と何と何っっっと俺はバスタブで昏睡して、三日も意識がなかったそうだ。

 無論、目にする現実の通りに魔物の卵は孵っていない。

 湯船には沈んでいたそうだが、俺の腹にくっ付いたりはしていなかったそうだ。
 わけがわからない。俺は確かに酷い目に遭った。感覚だってやけにリアルだったのに……。

 三日寝ていたと言うからあれは夢だったとするのが最適解なんだろうが、俺としては納得が行かなかった。

 それに、夢を見るのはあるにしても、いくら疲れていたからと三日も眠り続けるなんて異常だ。

「魔法だって使っていなかった……」
「スカイラー、大丈夫か?」
「何か気に掛かることでもございましたか?」
「あのな、実は……」

 俺は包み隠さず浴室からのかくかくしかじかを二人へと話して聞かせた。

 俺の真剣な告白にベッド脇の二人は考え込むようにした。
 俺の主張を単なる夢と片付けず、何らかの異常が生じた可能性を考慮してくれているんだろう。
 純粋に嬉しかった。
 普通なら三日も寝ていた奴からあーだこーだと主張されても真面目に取り合わず、夢だから気にするなと一笑に付すところを、二人は真剣に受け止めて答えを探してくれている。
 本当に、得難い二人だよ。

 そんな大切な二人をこれ以上は煩わせたくない。俺はどう言われても多分完全には納得できないだろうし、だからと言って駄々をこねるみたいにして事を大きくするつもりもない。

 よし、深く考えないことにしよう。
 結局、俺は体のどこも痛くも何ともないんだし。
 かくかくしかじか……は全部俺の夢だった、ああそうだった。

 そんな決意を俺が密かにした時だ、視界の端の半透明な浮遊物が、ああいやいつの間にか部屋の隅の方に居て俺たちの話を聞いていた観葉植物、じゃなかった古風幽霊ノンレイスが、ゆっくりと俺の正面に移動してきた。

「どうしたノンレイス卿?」

 白いくるくる巻き毛の幽霊はいつもの如く手品のように羊皮紙を出現させると、それに何やら書き付けたのを俺たちへと翻す。

「えーと何なに、ふむふむ、……って、えっそうなのか?」

 ノンレイスの書き付けによると、あの浴室天井の幾何学模様は旧式魔法の魔法陣らしい。
 あぁ、先日の魔法鎖みたいに旧式魔法だから魔法を魔法だと的確に感知できなかったのか。

 しかも魔法陣は不完全なもので、足りない部分を俺がそうしたみたいに書き足すことで完成するんだとか。
 詰碁とは異なるがある種のパズル問題らしい。昔の魔法学習の一つだそうだが、例えばトイレに単語を書いて貼っておくとかそれとどこか似ているな。幾度と目にするうちに自然と覚えたり考えたりする。

 そして俺たちが驚いたのは、足りない箇所を補足すると魔法が発動すると言う点だ。

「発動!? ならまさか……」

 俺の視線へとノンレイスは妙な重々しささえ孕んでしかと頷き返した。
 謎は全て解けた。
 何てこった、俺のちょっとした好奇心で足りない一本を正解したために魔法が発動して、まんまと三日も夢の中……と言うわけだった。

 夢見の旧式魔法で眠っていたとは言え、何だ本当に夢だったのか。拍子抜けした。

 だが魔物卵を収納指輪から出したのは夢の中ではなかったとすると、一体どこからが夢でどこまでが現実だったのか、境目が全く判然としない。そんな曖昧な部分も含めての夢見魔法なのかもしれない。自覚ができないと言うところがちょっと恐ろしいな。

 つくづく世界はまだ見ぬ謎に満ちていると言うか、この世界の魔法の歴史もまた奥深い。

 この屋敷には他にもその手の魔法陣設問があるから興味があれば探して解いてみるといいともノンレイスは言葉をくれた。興味がないわけではないが、自分の身を削って検証するのは是非とも遠慮したい。

 まぁ種明かしをされれば何だそんなことかとは思うが、ぶっちゃけ風呂で溺れていたら危なかったよな。いつもよりも長湯なのを案じて見に来てくれたらしいブラッキーには感謝だよ。

 ノンレイスが言うと言うか書くには、そもそもあの部屋は元は浴室ではなかったそうだ。かつての住人の私室だったならなるほど納得だ。勉強のためかそれとも不眠症でも患っていてそれの解消のためか。
 そこで眠っても問題なかったから夢に入る魔法なんて仕掛けられていたんだな。
 だとしても、さすがに三日は長いと言ってやりたいっ。

「はぁ~~あ、夢で良かったぁ~~。キシャーッと食べられなくて本当に良かった……っ」

 思わず涙ぐむ俺を、三人は温かな眼差しで見守ってくれていた。
 出したままにしていた卵も、テーブルの上で気にするなと小さく揺れていた。

 ………………揺れた?

 俺は一気に緊迫MAXになった視線を即座に卵へと戻した。
 三人も俺に促されてやや困惑気味にテーブルを振り返る。

「んなーっ!? こここ今度こそリアル孵化なのか? キシャー到来なのか!?」
「落ち着けスカイラー、ここ三日ずっとあの調子だからあれ。あんたまだ起きたばっかだし、大人しく寝てろって」
「ブラッキーの言う通りですよ。今は卵よりもスカイラー様御自身を気にして下さい」
「そ、そうなのか? わかったよ」

 二人から怖い笑みを向けられたのでとりあえず聞き分けよくしておこう……とベッドに潜ろうとしたその時だ。
 室内にピキピキピキ、と乾いた嫌な音が上がった。夢の中でも聞いたあの恐怖の音が。
 見れば黒い殻の表面に亀裂が入り、それは次第に太く大きくなっていく。

「あれはーッッ!」

 確実に孵化する兆候を前に、俺に動かない選択肢はなかった。もしも二人に何かあったなら俺は俺を赦せない。

 全力でベッドから飛び出て卵と二人との間に入り、必要なら盾にだってなってやると腹を決めて臨戦態勢を取った。

「おいスカイラー何やってるんだよ!」
「逃げましょうスカイラー様!」
「いいからお前らは下がれ!」

 気色ばんで叫んだのとほぼ同時、卵が大きく真っ二つに割れたかと思えば、中から得体の知れない存在が俺を目掛けて真っ直ぐ飛び出してきた。

 無論、俺は内心気が気じゃない。
 ぎゃーっついに現実に「キシャー!」が来たあああーっ!

「「スカイラー(様)!」」

 喉が凍り付きろくな声も出せない俺の顔面に未知なる魔物が覆い被さる。寄生されるのか食われるのかはわからない。せめて二人に危害を加える俺になるのだけは避けたい。

「んんんぬ~~~~ッ!」

 パニックになった俺はとにかく異物を剥がそうと、イメージとしては顔にタコが張り付いた奴がそうするみたいに必死に両手で抵抗した。刹那。

「ん~っ…………んん?」

 予想外にも柔らかい。そして毛深い。いやもふもふだ。

 俺が両手で掴んだら軽くて簡単に顔から剥がれてくれたそいつと俺は、真面に互いのつぶらな瞳同士を合わせた。
 パチパチパチと同じタイミングで互いに瞬きもする。

「何お前、魔物……だよな?」

 心底困惑する俺の左右に血相を変えたブラッキーとグリーンが並んで、俺の掲げ持つそれを見つめ少し気が抜けたようにして眉を寄せる。

 一方、俺の手のそいつは今にも掴みかからんとする姿勢で止まった二人を見るや、危ない相手と認識したのか毛を逆立て威嚇。加えてその瞬間何かガスのようなものを噴出させた。

 その際ふかふかの尻尾を上げたから、たぶん尻だろうそこから。

 次の瞬間、二人は揃って「うっ」と呻くと顔色を変えて鼻を押さえた。
 え、何が起きているんだ?
 俺は全然平気なんだが。

「キュウ~~アッ!」

 見た目に違わず可愛い鳴き声のそいつは、敵を撃破したとでも主張するみたいに、やけにドヤ顔だった。





 現在卵の殻はくしゃりと潰れ、一見無残にも見える状態で部屋の床に放置されている。
 肝心の中身はと言うと、あの夢のように俺の腹……ではなく何と首回りにくっ付いていた。

「あーハハハ、冬はマフラー要らずだなー、ハハハ……」

 正確には、天然毛皮のふわふわもふもふが纏わり付いている。

「スカイラー様っ、その臭い魔物をどうにかして下さいようっ! お傍に近寄れません! このままでは公務にも差し障ります!」
「そうだよスカイラー、そいつこっちの鼻をもぐ勢いの臭さなんだよ。グリーンは魔力ないから臭さレベルはそこまででもないだろうけど」
「ちょっと何一人だけ被害者ムーブなんですか! 私だってちゃんと臭いですよ! 嗅覚狂いそうですよ!」

 鼻を押さえて口呼吸するグリーンをどうでも良さそうにブラッキーは一瞥してから、俺と魔物へと真面目な眼差しを向けてくる。

「そいつ毛皮はほとんど黒いし、卵から生まれたんだから魔物なんだろうけど、どう見てもスカンクだから臭いのかもな。スカイラーが臭いを感じないのは源泉の時から同じだから、まーそういうもんだと考えればいいか」

 生まれた魔物はブラッキーの言うように、黒い毛皮の頭頂から尻尾にかけて白い二本線の入った、姿形だけで判断するならまさに、スカンクだった。

 ずっと保管していた俺の気配だけが感じ慣れたものだったからなのか俺を親か何かと勘違いしているようで、肩に乗ったり俺の長い銀髪でじゃれたりしてさっきから片時も離れようとしない。
 最初、危険な魔物ではと危惧し、気力を消耗していた俺から引き離そうとした二人を敵認定してだろう、魔物はスカンクがそうするようにガスを噴き出した。

 それが俺以外には強烈な異臭に感じられるらしい。

 元より魔物であってスカンクではないから、ガスは臭いガスではなく臭い闇魔法なんだろうが、効能は同じなので違いを論じても仕方がない。
 使い所によったら立派な武器になるとブラッキーが苦々しそうに言っていた。

 しっかしどうするかな、このもふもふ魔物。
 一見動物にしか見えないから魔物を傍に置いているとは思われないだろうが、よくよく気配に着目してみればわかる者にはわかる。
 これは屋敷の外には出せないな。かと言って俺不在で他の誰かに面倒を見させるのも不安だ。

「うーん、卵の元々あった方面の山奥に帰すとか? もうたぶん源泉に悪影響はないだろうし、それもありだよな」
「キュウゥゥー」
「え? 大自然に戻るのは嫌なのか?」
「キュイ!」
「そうか。……って、お前こっちの言葉がわかるのか、凄いな」

 嫌なものを無理矢理置いてきたところで良い結果にはならないだろうな。トラブルの元だ。
 そうだなあ、収納指輪に入れてなら行動を共にできるとは思うが。動物病院に行く時に全然キャリーケースに入ってくれないペットみたいに、悪戦苦闘するかもしれないのを覚悟しておこう。

「なら、出掛ける時は大人しく指輪に入っていてくれるか?」

 一応は意思を確認する俺の囁きかけに、意外にも魔物スカンクは大丈夫任せろ的に「キュアキューア!」と頷いた。
 おおう、こいつ中々にいい魔物じゃないか!

 なら当面の懸念材料はなくなったと言うわけで、とりあえずもう一つ大事なこと、ブラッキーとグリーンの二人は間違っただけで危険人物ではないのだと言って聞かせた。何故かかなり渋々ながらも理解して威嚇するのは止めてくれたよ。ただ、二人には近寄りたくないのか俺の傍に居る時以外は距離を保っていた。





「ああそうでした、うっかり忘れるところでしたけど、無事にお目覚めになられたことですし、スカイラー様への預かり物がございます」

 屋敷の皆にも俺の目覚めを知らせ、着替えて書斎に移動して椅子に腰を下ろした辺りで、グリーンがハッとして慌てた様子を見せた。

「預かり物? 誰からの?」
「皇帝陛下からです」
「……あー、そう。持ってきてくれ」
「畏まりました。少々お待ち下さいね」

 ええとマジで? 皇帝から? 俺に?
 絶縁状だったりして?

「スカイラー、そんなに心配するなって。たとえ贈り物が何だろうと、もしも気分を害するもんなら僕が粉微塵にしてやるよ」
「ははっありがと、心強いな」

 世界で一番の伴侶の思いやりに、俺は寄せていた眉間を広げた。一度出て行ったグリーンは小さな包みを手にすぐに戻ってきた。
 俺の座る書斎机の正面に立ち静かに包みを机上に置く。疑問なのは終始グリーンの表情が明るい点だ。そんな顔のまま口を開く。

「これを陛下よりスカイラー様へ渡すように命じられました。体力回復の最上級ポーションだそうです」
「へ? 何でそれを?」
「実はここ三日の欠勤は、公式にはスカイラー様が過労でお倒れになったと言うことにしておりましたので」
「だからってどうして皇帝陛下が? ……毒入り?」
「私めが直接対面した際のあのご様子ですと、それはないかと。そうは言っても私の主観ですし、一度開けて確かめてみられては?」
「それもそうだな」

 しかし毒物だったなら普通に凹む。まだ無関心でいてくれる方がマシだ。
 内心ドキドキとして包みを開くと、透明なガラスの容器に入った綺麗な黄金色のポーションと、他にメッセージカードが入っていた。その場で魔法で簡単に調べただけだが、ポーションから毒は検知されなかった。

【無理せず養生するように】

 カードには短くそんな気遣いの一文が記されていた。達筆と言われる皇帝の直筆で。

「そういえば、皇帝陛下はスカイラー様からの誕生日プレゼントをとてもお気に召したようですよ。スカイラー様自らで採りに行かれた点も心を打たれたと仰っておりました。それと、お傍付きの方の話ですと、スカイラー様がお倒れになったのを聞いてすぐにこれを用意するよう指示出しをなさったそうですよ」
「へぇ、皇帝陛下が……」

 グリーンは急に皇帝から呼び付けられた時は、自分は死ぬような目に遭うかもしれないと思ったそうだが、行ってみたら全くの予想外でしかも歓迎されたらしい。それでも一生分の緊張感を味わったと話していた。

 皇帝のスカイラーへの感情は薄いとばかり思っていたが、案外そうではないのかもしれない。
 それがスカイラーな俺にとって果たして良いのかどうかは別として。
 ただ、あの皇帝の下、この帝国がより長く平和であれと願う。

 だってまだまだ俺のアイドル皇子としての基盤固めは序盤だ。

 恐怖と脅威、武力的な優位を武器に帝国を支配した本来の悪役皇子スカイラーのやり方とは違うんだ。歩みがゆっくりにだってなる。
 民の心を掴むため、じっくり時間を掛けるつもりだよ。幸いその時間はありそうだからな。
 スカイラーの表面的なものだけではなく、将来帝国を率いる信頼できる人物としての俺を支持してほしいんだ。

「近いうちお礼を言いに会いに行ってみるかな、皇帝……父上に」

 彼みたいなちょーう脇キャラから攻略していくのが、ともすれば俺の天下取りには案外効果的かもしれないよな。

「キュウーア?」
「ははっ擽ったいって」

 少し気分が軽くなった俺の様子を察してか、もふもふ魔物が首回りをぐるぐる駆け回った。繊細な毛先が敏感な首の肌を擦る。目を細めた俺のそんな様子をブラッキーが睨んだ。
 あー、これは後でめちゃ甘えてくるなー。まぁいいが。

 魔物スカンクなんて仲間だかペットだか区切りの微妙な存在が新たに加わって、これからの生活はより賑やかになるだろう。

「ところで、こいつの名前何にしよう?」

 ブラッキーとグリーンそしてまた居たノンレイスに意見を仰ぐと、三人はまだ俺の首元に居座るもふもふ魔物をじーっと見つめた。特にブラッキーなんて親の敵でも見るみたいに。
 いっそお前も何か小動物に化けてみたらどうだと言ってみようか。例えば猫辺りにでも。そうしたらたっぷり撫でくり回して可愛がってやるのに……なーんてのは冗談だが。

 猫にならなくても俺はブラッキーを誰より愛しいと思って撫で回すつもりだから、ちゃーんと機嫌を直してくれよ? なぁ、マイラブ?

 ブラッキーだけが察する俺のそんな甘い意図の視線に、当のブラッキーは期待に漏れず受け取ったようで、瞬時に頬を赤くした。
 はは、こいつって普段飄飄としているが、こんな不意打ちみたいなのにはホント弱いよな。可愛い奴。

 さてと、マジで名前何にしようか。
 スカンク、なんてまんま過ぎるしな。見ているともふもふ具合いに和んでまったりしてしまう。

「ふむむ、チルい……チル、とか?」

 安直過ぎて駄目だろうか。

「なぁ、お前の名前、チルでいい? 嫌なら他を考えるが……」

 両脇を持ち上げて顔の前に掲げながら問えば、魔物スカンクはパチパチと瞬いた。

「キュウゥ~~~ア!」

 ははっ、どうやら合格らしい。

 そんなわけで、今日も俺とブラッキーの幽霊屋敷新婚生活はのんびり時々トラブルな感じで過ぎていく。
 個性豊かなカラフルな仲間たちに囲まれてな。

 ……すっかり体調の戻った俺へと、ブラッキーの嫉妬とか心配とか愛情が爆発したのは、また別の話だ。
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