どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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二章 美空ミカエル

ミカエルとのひととき

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気にしなくても良いのに。
そう思いながら服を見る。
ミカエルとお揃いのセーラー服。
「魔法で一瞬で着替えちゃいましょうか」
ミカエルが指を弾くと一瞬で僕の服が変化した。
満足そうに笑うと、僕の隣に座る。
僕を縛り付けていた先ほどまでのミカエルと同一人物とは思えなかった。
美味しそうなタルトをナイフとフォークで切り分けて、僕の口元に運ぶ。
僕は口を開けて食べる。
すると嬉しそうに笑うのだ。
まるで親鳥と雛の餌付けのよう。
この場合僕が雛になるんだけど。
「俺、ずっとこうやって過ごしたかったんです。こうやって過ごす事が出来て幸せです。...ずっとこのままだったら、なんて」
「でも、ミカエル、君は...」
「分かってます。呪いだから消えなきゃいけないってことも。...、美空が死ぬ前にちゃんと消えます。だから...、俺と心中してくれませんか?そうしてくれたら、俺は、満足して消えれます」
なんて、酷く悲しげな顔で言うものだから、どうして、と聞いてしまった。
どうして僕と心中したいの。
僕なんかにそんな価値無いよ。
僕と死ぬと何か良い事あるの?
呪われている僕に。
「僕と心中したって良いこと無いよ。それなら僕が君を苦しまないように殺してっ...」
そう言うと、ミカエルは僕の口に人差し指を当てる。
ダメですよ、なんて言って。
僕の頭をそっと撫でる。
大人が子供に言い聞かせるみたいに。
「そんな悲しい事言っちゃダメですよ。殺してもらうのはちょっとしてほし...いや、なんでも無いです。心中する価値ないとかあり得ないです」
そう力説した。
「俺は凪先輩の事が大好きなんです。俺が大好きな凪先輩の事馬鹿にして欲しく無いんです」
そして、ミカエルは僕にキスをした。
タルトの味が混ざり合う。
唾液の混じり合う音が聞こえる。
その行為に頭の中の片隅にしまった記憶が思い出させられる。
あぁ、なんで忘れてたんだろうな。
どうしてだっけ。
原因すら思い出せないけど、君の事だけ思い出しちゃって。
そのキスで思い出してしまった。
この感触で。
生々しく感じる現実が僕の脳の鍵をこじ開けた。
まるで魔法みたいだ。
わかり易い魔法の世界みたいで。
どうして美空を大事な人と思っていたのか。
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