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四章 雪闇ブラッド

美空の過去と今

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まぁ、エクスカリバーというよりも、聖剣の原石が。
前に理久にその事について聞いてみれば。
「確かに眠ってるけど…聖剣ってのは持つものによってその威力が変わるからねぇ。相当強いやつが持たなきゃ魔王には勝てないんじゃない?」
なんて言っていた。
美空に聖剣を探しに来たのかを聞いてみれば、違うと首を振った。
「聖剣は俺よりもふさわしい奴がいますから。それに、エクスカリバーはもう持ち主が決まってるでしょう?」
多分颯太の事を言ってるんだろうなと思った。
確かに颯太は強い。
もう最強の勇者なんじゃないかとささやかれているくらいに。
ちなみに、こんな風に会話を交わしている美空は、窓から入ってきた。
鍵の掛かった窓から。
そう、鍵のかかったというところに注目してほしい。
ドン引きレベルの行為だけど、彼は生徒会長の為、学園中の施設の鍵を持っているのだから。
こういうことは簡単に出来るのだ。
まぁ、そうはいっても普段は持ち出したりしないし。
僕の部屋の鍵以外持ってきてないと言っていた。
「職権乱用なんじゃないのこれ…。大丈夫なの…?」
「普段が激務なんですからこれくらい許されないと割に合いませんよ。それに俺、女子に興味ないんで、女子に使わないし。凪先輩以外興味ないです」
生徒会長になって、すべての鍵を与えられるという事を言われたときに、同じ生徒会の女子が、私の部屋にその鍵使って入ってきてもいいからね、なんて言ってきたのを聞いて、気持ち悪いと感じたと言っていた。
というか、そもそも女子全員が気持ち悪いと。
多分それは美空のお母さんの影響があるんだろうなと思った。
美空の母親は厳格な人だ。
美空に歌の才能があると知った瞬間、すぐに他の時間を取り上げて、歌にすべてを費やさせたらしい。
さらに、美空の事をそういう目で見てきた時もあったらしく。
美空は母親の事を颯太の事もあり、もともとそこまで好きじゃなかった。
だからその時は拒絶し、僕の塔へと逃げてきてずっと震えていた。
曇りなき眼でそう言われると、頷かざるを得ないけど、その発言かなりヤバいからね?
まぁ、美空はそういう事情もあるから仕方ないし。
美空が僕限定の変態というのは知っているけど。
だからこういうことしてもあんま怒れないんだよなぁ。
だって僕にしかないし。
むしろ、美空の愛情表現の一種だから。
あまり怒ってしまうのもなぁと思っている。
もともと美空って不器用だし。
そう思っていると美空が無言で僕に抱き着いてきた。
どうしたの?
不安になったの?
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