どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

第二十六話

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自分、というものは、一体何で構成されているんだろう。
そう、搭の中で考えた事がある。
きっと、他人の存在なんだろうな、なんて最初は思った。
他人と関わりを持つこと。
それによって、他人の目から見た自分が作られて、それが段々と輪郭を帯びていくんだろうと。
そう言うものの塊が本なんだろうなと。
けれど、僕には他人という存在がいない。
ずっとこの搭で独りだ。
観測者なんて僕しか存在しない。
そんな今の僕を構成するものはきっと記憶だ。
昔の僕ではなく。
今の僕が持つ記憶。
それが今の僕の思考、性格を形作っている。
例え話ではなくて、実際にそうなのだ。
逆にそれ以外僕と言う存在の証明が出来なくて。
どうすれば良いのかわからないんだ。
だから、昔の僕と今の僕は別人だと思っていた。
だけど、色んな人と関わるようになって、知りたいと思ってしまったのだ。
昔の自分というものを。
理解してみたくなってしまった。
(だけど今は、怖いという感情以外浮かばない)
知った瞬間、自分が自分じゃなくなるのは嫌なのだ。
僕は、今のままが良い。
僕のままがいい。
僕じゃなくなるのが怖い。
今の僕が消えてしまうのが怖い。
死とは違う恐怖がそこにあって。
自分の存在が消えるのってこんなに怖いことなんだ、なんて思った。
「あのさ、理久とはどういう契約を交わしたの?」
雪がふと、そう聞いた。
そういえば、契約の内容ってあんまり人に話した事がないなって思いながら。
「友達になってって契約した」
本当はもう少し重い内容だけど。
だって、お互いの生涯をかけた契約だもの。
でも、そこまで話さなくて良いかなと思って、それくらいに留めておいた。
そう言うと、美空と雪は目を見開いた。
まるで意外だと言いたげに。
仕方ないじゃないか。
「だって、友達いないし、独りだし。いや、美空は友達以上の...って恥ずかしいから言いたくない。とにかく不安だったんだよ」
あの時、理久と契約していなかったら。
雫とも仲良くなれてなかったし。
理久と契約してよかったと思っている。
逆に理久と契約していなかったら。
っと僕はひとりぼっちで、あの暮らしの再上映をしていただろうから。
「あの理久と契約したって聞いたからさ、俺どんな契約したのかって気になってたんだよ。そういう感じなんだ。少し安心した」
雪がそういった。
心から安堵しているとでも言いたげな顔。
「あの理久?」
気になったから聞いてみた。
すると雪は頷きながら、
「うん。なんか世界滅亡、とか。なんかそういうスケールのデカい事」
まぁ、そういうの願わないって分かってるし、知ってるけどさと付け加えられる。
あの理久が?
全然そんなイメージないけど。
だって、ちょっとおっちょこちょいだし、優しいし、面倒見が良いし...。
たまに怖い事を言うけれど。
そんな恐ろしいもののイメージはない。
「みんなのイメージの理久って僕の知ってる理久と同一人物?」
なんて聞くと頷きながら、
「優しいのは凪の前だけだよぉ。僕には滅茶苦茶厳しいよぉ。思い出しただけでなきそ」
なんて雫は言う。
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