239 / 425
四章 雪闇ブラッド
城から帰れたら良いね
しおりを挟む
その瞳に浮かぶのは動揺と、ほんの少しの恐怖と、期待の色。
頭を撫でてあげる。
少し震えたけど、猫みたいにすり、と身を寄せる。
よろしゅう、と頭を下げると、つられて頭を下げる。
真似っこするのが好きなようで。
まるで赤子みたい。
大人のやる事なすこと何でも真似する赤子。
赤子から急に成長して、呪いに知識を入れられたばかりなんだろうな、なんて思う。
ふふ、と思わず笑みが溢れる。
守ってあげなきゃ、なんて思ってみたり。
上から目線だな、なんて思ってみたり。
なんだか、コロコロ思いが溢れてくる。
なんだろう、これ。
「あの、父さんと母さんの姿がないんだけど。どこに行ったのか知ってる?」
そう言って、周囲を探す目の前の凪。
その様子は可愛らしくて。
閉じ込めてしまいたいなんて気持ちが少しだけ浮かんで、すぐ押し殺した。
(何考えてんの、僕。初めて赤子を見たからって...)
「君の父さんと母さんなら...。恐らく君の元居た場所に帰ったんやないかなぁ?」
きっと、君のご両親は君が死んだと思っているだろうし。
呪いだってその様子だと今知っただろう。
だとしたら、生まれながらに持っていたわけでもないだろうし。
だとしたら両親は君がこの瞬間呪いを手にしただなんて一切予想出来ないはず。
そしたら君が死んだと思うのは至極当然の結果で。
そうなると君の国で葬式でも開かれているんじゃないかな。
そこまで思考を進ませて、君の両親は君を死んだと思っているよと告げるか告げないかを悩んだ。
告げるのは簡単だけど、ショックが大きいだろう。
事実はそっと包んで捨てた方がいい時だってあるだろうし。
知りたくないだろうし。
僕がそう言ったら、凪は無言で黙ってしまった。
考えているのかな。
どうせ考えたってまともな事が浮かんでこないよ。
もしも、僕が同じような事になったら。
まずは家族から解放された喜びで踊るだろう。
だって、僕はあいつら嫌いなんだもの。
そのあと、散々踊って、踊り疲れて、疲れた脳みそで今後の生活を考えて。
無理やり身につけた社交術で社会に溶け込んで気ままに生きる事だろう。
そんなことを考えていれば、凪が口を開いた。
「...、お父さんとお母さん。城に戻ればまた会えるよね」
そうやな、なんて返す。
でも目覚めたての彼に帰り道を突破できるだろうか。
呪いの効果すら分からないのに。
幼いその足で帰れるのか。
魔王城周辺であれば安全だろうね。
その辺りなら比較的襲ってくる魔物もいないし。
人間界へ向かう道なんて友好的な魔物しか行かないし。
頭を撫でてあげる。
少し震えたけど、猫みたいにすり、と身を寄せる。
よろしゅう、と頭を下げると、つられて頭を下げる。
真似っこするのが好きなようで。
まるで赤子みたい。
大人のやる事なすこと何でも真似する赤子。
赤子から急に成長して、呪いに知識を入れられたばかりなんだろうな、なんて思う。
ふふ、と思わず笑みが溢れる。
守ってあげなきゃ、なんて思ってみたり。
上から目線だな、なんて思ってみたり。
なんだか、コロコロ思いが溢れてくる。
なんだろう、これ。
「あの、父さんと母さんの姿がないんだけど。どこに行ったのか知ってる?」
そう言って、周囲を探す目の前の凪。
その様子は可愛らしくて。
閉じ込めてしまいたいなんて気持ちが少しだけ浮かんで、すぐ押し殺した。
(何考えてんの、僕。初めて赤子を見たからって...)
「君の父さんと母さんなら...。恐らく君の元居た場所に帰ったんやないかなぁ?」
きっと、君のご両親は君が死んだと思っているだろうし。
呪いだってその様子だと今知っただろう。
だとしたら、生まれながらに持っていたわけでもないだろうし。
だとしたら両親は君がこの瞬間呪いを手にしただなんて一切予想出来ないはず。
そしたら君が死んだと思うのは至極当然の結果で。
そうなると君の国で葬式でも開かれているんじゃないかな。
そこまで思考を進ませて、君の両親は君を死んだと思っているよと告げるか告げないかを悩んだ。
告げるのは簡単だけど、ショックが大きいだろう。
事実はそっと包んで捨てた方がいい時だってあるだろうし。
知りたくないだろうし。
僕がそう言ったら、凪は無言で黙ってしまった。
考えているのかな。
どうせ考えたってまともな事が浮かんでこないよ。
もしも、僕が同じような事になったら。
まずは家族から解放された喜びで踊るだろう。
だって、僕はあいつら嫌いなんだもの。
そのあと、散々踊って、踊り疲れて、疲れた脳みそで今後の生活を考えて。
無理やり身につけた社交術で社会に溶け込んで気ままに生きる事だろう。
そんなことを考えていれば、凪が口を開いた。
「...、お父さんとお母さん。城に戻ればまた会えるよね」
そうやな、なんて返す。
でも目覚めたての彼に帰り道を突破できるだろうか。
呪いの効果すら分からないのに。
幼いその足で帰れるのか。
魔王城周辺であれば安全だろうね。
その辺りなら比較的襲ってくる魔物もいないし。
人間界へ向かう道なんて友好的な魔物しか行かないし。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結済】どんな姿でも、あなたを愛している。
キノア9g
BL
かつて世界を救った英雄は、なぜその輝きを失ったのか。そして、ただ一人、彼を探し続けた王子の、ひたむきな愛が、その閉ざされた心に光を灯す。
声は届かず、触れることもできない。意識だけが深い闇に囚われ、絶望に沈む英雄の前に現れたのは、かつて彼が命を救った幼い王子だった。成長した王子は、すべてを捨て、十五年もの歳月をかけて英雄を探し続けていたのだ。
「あなたを死なせないことしか、できなかった……非力な私を……許してください……」
ひたすらに寄り添い続ける王子の深い愛情が、英雄の心を少しずつ、しかし確かに温めていく。それは、常識では測れない、静かで確かな繋がりだった。
失われた時間、そして失われた光。これは、英雄が再びこの世界で、愛する人と共に未来を紡ぐ物語。
全8話
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む
木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。
その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。
燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。
眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。
それが妹の名だと知っても、離れられなかった。
「殿下が幸せなら、それでいい」
そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。
赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎月影 / 木風 雪乃
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる