どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

複雑な気持ち

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再発防止しないんだろう。
まるで見られたいとでも言いたげに。
見られて褒められたいとでも言いたげに。
別に良いかと蓋をして、ベッドに潜り込む。
深く考えたらダメな気がして。
誕生日の時くらいにしかもう実家に帰っていない。
実家には気づいたら全く寄り付かなくなってきた。
帰ったって悲しい気持ちになるだけだし。
あとはどうしても僕が必要な時にしか。
僕が帰らなくては行けない時にしか帰ってない。
自分で買った家は柔らかいベッドがあって。
あの家にはガサガサした質素なベッドでしかないのに。
体を重力に任せて、ベッドに全身を放りこんだ。
凄い居心地が良くて。
そのまま眠りについた。
それが一番良い気がして。
微睡の中、凪の顔を思い浮かべた。
期待はこれで最後にするから。

きっと凪の中の俺は女の子の形をした生き物なんだろうなと。
勝手に椅子に座りながら思う。
本を読んでいる凪を見つめながら。
魔王城の部屋の中。
俺はそう思った。
まだ過去の回想中である。
理久のために用具を準備しながら。
スケート場にいるけれど。
頭の中は過去の思い出の追憶中。
あの時。
あんな風に宣言した後、凪は言った。
あぁ、と思いつきを話すように、そういえばとか切り出して。
軽い調子で言ったのだ。
そうそう、
「私じゃなくて俺で良いし。あの時の口調のままで良いよ。むしろその方が好きかな」
と笑いながら言った。
そう言った凪は本気で言っているんだってことは見て取れて。
そっか、としか返せなかったけれど。
こいつ本当は俺の正体に気づいているんじゃと思ったけれど。
俺の事を気遣う姿勢のままだから。
あぁ、こいつまだ俺の事女だと思っているのかと。
そんな風に思い直してみたり。
少し笑いそうになるけれど。
けれど優しいのは事実だから。
ほんの少しだけ惹かれてみたり。
そんな自分に対して何やってるんだと呆れてみたり。
凪の気遣いは些細なものだったけど、俺の心を溶かすにはぴったりだったみたいで。
俺が座る椅子には常にクッションをひいていたり。
俺が少しでも居やすいように室温に気を使ったり。
興味あるんだって言ったものを取り寄せてくれていたり。
「お前って女子にモテるだろ」
そう言うと、凪は首を傾げて、
「どうせ来るんだったらさ、いい気持ちでいてほしいじゃん。つまりそういうこと。モテたことなんてないし、咲以外の女子と関わったことなんてない」
そう言ってみせた。
きっと女だったら惚れてるんだろうなと思うような動作をするので。
その度に複雑な気持ちになるから。
惚れてしまいたくなるから。
でも、俺が女だから優しくしてるんだろとか思っちゃうから。
わざと雑な動作をしてみる。
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