どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

祈ったって無駄だ

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言い出せずにいる。
別に良いじゃん。
言ってしまえば。
それで楽になれるのに。
そんな事言わないよ。
言わないって分かってるだろ。
だから。
「じゃあさ、闇奈と誕生日の日の夜、パーティーするんだ。その次の日に来て欲しい。出来たら雪さんも」
そう俺の目をまっすぐ見つめながら言う。
雪も。
どうして急に雪を指定したのだろう。
雪なんて今まで会話に出さなかったのに。
つまり雪を巻き込んで何かを行うという事だろうか。
何をするんだろうという思いと、本当に俺が行って良いのかと思うけど。
けれど、何だか、楽しいことが起こりそうな気がした。
少しだけ、ワクワクしたけれど。
だけど俺が咲と雪だから。
どちらかしか行けない。
だから、
「わかった。でも、雪は忙しいから。当日は俺と雪のどちらかだと思う」
そう言うと、わかったと言う。
当日は雪と咲のどちらで行こうか。
少し悩んだけれど、きっと雪で行くんだろうなと思った。
紅茶の入った白磁のティーカップに手を伸ばす。
そろそろお茶会らしくお茶を嗜もうと思ったのだ。
少し喉が渇いてきた頃でもあったし。
口元に運ぶと、湯気からとても良い匂いが漂ってきた。
ダージリンだ。
紅茶のシャンパンとも呼ばれている高貴な茶葉。
香り高い湯気を放つそれは。
きっと理久の用意したものだろう。
凪にはそんな知識ないだろうから。
おそらく、理久や俺が普段飲んでいるような最高級茶葉なんだろうなと思った。
魔界にて最高級茶葉を選んで。
ティーセットも最高級のものを選んで。
全て凪へ渡すため。
一体どれほど惚れ込んでいるんだろうか。
理久にしては本当に珍しい。
異常事態とも言えるような行動だ。
だって、今までの理久であればそんなことしないだろうから。
たとえ少し気に入った程度であっても、ここまで尽くしたりしないだろう。
きっと愛してるから。
普段母親から聞くフレーズより、少しだけ歪んでいて。
綺麗な気がするのは何故だろう。
金で気持ちを表すわけではないけれど、これは理久なりの求愛行動なんだろうなと思った。
何だか、愛情を知らない子供みたいで歪んでるなと思ったり。
一口、口に含む。
日光に反射して紅く輝く液体。
きっとこんな色だから紅茶だなんて呼ばれたのだろう。
同じ茶葉でも緑色の液体を出すものは緑茶と呼ばれるくらいだし。
口の中に運ぶと、紅茶の味わいが口の中にゆっくりと広がる。
それはとても美味しくて。
なんだか初めて飲んだような気がした。
そんなわけないのに。
ひどく不思議な感覚だ。
淹れたのは凪だ。
初めて淹れたはずなのに。
半年前までは何も知らぬ赤子だったはずなのに。
まるで俺たちと同等のように振る舞う目の前の人物に少しだけ恐怖を滲ませて。
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