どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

来世なんて願っても

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そう思わず呟いてしまった。
キメラはギャオ、ギャオ、と力無く鳴いている。
キメラを買うことは出来なくも無い。
けれどそれは命に対する冒涜ではないか、なんて思う。
目の前のキメラが望んでいるのは穏やかな眠りだろう。
死にたいのだろう。
だってこのまま生き続けた所で他者に利用されるだけだ。
それならいっそ一思いに死んでしまいたい。
そんなキメラの気持ちが痛い程伝わってしまって。
キメラになるべく痛みを与えぬように殺してあげようと思った。
次こそ安らかな眠りを。
神経が脳へと痛みを伝える前に回路を断つ。
そうする事で痛みを感じずに空へと旅立てるだろう。
「来世こそ幸せになれるとええな」
そう呟いて、残った遺体を火で焼いた。
色とりどりの炎を眺めながら、ふと思った。
どうして僕は凪を救う為に動いているんだろう。
別にそんな事する必要無いのに。
理久に連絡すれば良いのに。
バカだなぁ、なんて思ってしまう。
だって、そんな事しなくて良いじゃないか。
そんな事するからキメラと僕自身を重ねてしまうんだよ。
重ねて悲しい気持ちになってしまうんだよ。
どうしてわざわざ凪に見られそうな位置で、処理して。再発防止しないんだろう。
再発防止していたらこいつもきっとこんな苦痛味わう事なかったかもしれないのに。
そう考えると相当酷い奴だと思ってしまって。
「ごめん…、本当にごめんなぁ…」
遺灰の前でポロポロと涙がこぼれ落ちていく。
まるで見られたいとでも言いたげに。
そんな風に立ち位置を工夫して。
こんなの、やってる事が変わらないじゃないか。最低じゃないか。
そう思ってしまうのだ。
僕も皆と変わらないくせに、妙に達観したふりをして。
変わらない獣じゃないか。
傷つけて平気じゃないか。
そう思いながら帰路へと歩く。
ふらふらとして、妙に現実味がなくて、夢心地のようで。
正直どう帰ったかなんて覚えていない。
ふらふらとした足取りで自分しかいない家へと向かったのだけは確かだ。
別に良いかと蓋をして、ベッドに潜り込む。
そうでもしないと一度意識した心の声は鳴り止みそうになかった。
免罪符を作っていただけで僕も皆と同じだった。
同じ汚いものだった。
改めて認識すると酷い現実だなぁ、と笑ってしまいそうだ。
でもそれが事実だ。
キメラが最期に僕に向けた笑み。
まるでありがとうとでも言いたげな顔。
それは本当は僕に向けちゃあいけないんだよ。
だって君は僕のせいで不幸になったのだから。
気づいてしまうとどんどんわかってしまうのは。
僕が自虐が得意だからだろうか。
ふと顔を横にずらすと実家の写真が目に入った。
まだ家族仲も良かった時に撮った写真。
今よりも幼い僕は、雪と手を繋ぎながら嬉しそうな顔して笑ってた。
あの頃は良かったな、なんて少し思ったりする。
誕生日の時くらいにしか実家に帰っていない。
なるべく近づきたくないと思ってしまうのだ。
その理由はあんなことがあったから。
きっと家にいても僕は邪魔ものだろうから。
それなら行かない方が皆のためになると思って行かなくなっていた。
あとはどうしても僕が必要な時にしか。
例えば式典だとか。
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