どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

文字の大きさ
313 / 425
四章 雪闇ブラッド

来世なんて願っても

しおりを挟む
そう思わず呟いてしまった。
キメラはギャオ、ギャオ、と力無く鳴いている。
キメラを買うことは出来なくも無い。
けれどそれは命に対する冒涜ではないか、なんて思う。
目の前のキメラが望んでいるのは穏やかな眠りだろう。
死にたいのだろう。
だってこのまま生き続けた所で他者に利用されるだけだ。
それならいっそ一思いに死んでしまいたい。
そんなキメラの気持ちが痛い程伝わってしまって。
キメラになるべく痛みを与えぬように殺してあげようと思った。
次こそ安らかな眠りを。
神経が脳へと痛みを伝える前に回路を断つ。
そうする事で痛みを感じずに空へと旅立てるだろう。
「来世こそ幸せになれるとええな」
そう呟いて、残った遺体を火で焼いた。
色とりどりの炎を眺めながら、ふと思った。
どうして僕は凪を救う為に動いているんだろう。
別にそんな事する必要無いのに。
理久に連絡すれば良いのに。
バカだなぁ、なんて思ってしまう。
だって、そんな事しなくて良いじゃないか。
そんな事するからキメラと僕自身を重ねてしまうんだよ。
重ねて悲しい気持ちになってしまうんだよ。
どうしてわざわざ凪に見られそうな位置で、処理して。再発防止しないんだろう。
再発防止していたらこいつもきっとこんな苦痛味わう事なかったかもしれないのに。
そう考えると相当酷い奴だと思ってしまって。
「ごめん…、本当にごめんなぁ…」
遺灰の前でポロポロと涙がこぼれ落ちていく。
まるで見られたいとでも言いたげに。
そんな風に立ち位置を工夫して。
こんなの、やってる事が変わらないじゃないか。最低じゃないか。
そう思ってしまうのだ。
僕も皆と変わらないくせに、妙に達観したふりをして。
変わらない獣じゃないか。
傷つけて平気じゃないか。
そう思いながら帰路へと歩く。
ふらふらとして、妙に現実味がなくて、夢心地のようで。
正直どう帰ったかなんて覚えていない。
ふらふらとした足取りで自分しかいない家へと向かったのだけは確かだ。
別に良いかと蓋をして、ベッドに潜り込む。
そうでもしないと一度意識した心の声は鳴り止みそうになかった。
免罪符を作っていただけで僕も皆と同じだった。
同じ汚いものだった。
改めて認識すると酷い現実だなぁ、と笑ってしまいそうだ。
でもそれが事実だ。
キメラが最期に僕に向けた笑み。
まるでありがとうとでも言いたげな顔。
それは本当は僕に向けちゃあいけないんだよ。
だって君は僕のせいで不幸になったのだから。
気づいてしまうとどんどんわかってしまうのは。
僕が自虐が得意だからだろうか。
ふと顔を横にずらすと実家の写真が目に入った。
まだ家族仲も良かった時に撮った写真。
今よりも幼い僕は、雪と手を繋ぎながら嬉しそうな顔して笑ってた。
あの頃は良かったな、なんて少し思ったりする。
誕生日の時くらいにしか実家に帰っていない。
なるべく近づきたくないと思ってしまうのだ。
その理由はあんなことがあったから。
きっと家にいても僕は邪魔ものだろうから。
それなら行かない方が皆のためになると思って行かなくなっていた。
あとはどうしても僕が必要な時にしか。
例えば式典だとか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年後。 静は玲に復讐するために近づくが…

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

処理中です...