どうしようもない僕は報われない恋をする

月夜

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四章 雪闇ブラッド

理久は何の為に

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理久は案外すぐに呼び出しに応じてくれて元々想定していたのかなと思った。
理久は何?なんて聞くけどそこまで急かそうとしない。
理久は普段なら急かそうとする癖に。
まるで何が言いたいのかわかってるみたいに。
「なぁ、一週間後に、一度人間の所に返してあげたいんやけど。もう魔法も十分使えとる。問題ないと思うんよ」
なぜ一週間後にしたのかというと、一応準備期間は必要だから。
こちらからあちらの危険な場所へと赴くのだ。
凪の元々居た国は魔王軍の敵対地。
元勇者を生み出していた地。
それは今も同じだろう。
役割が違うだけで。
一応表面的には有効的に見せてはいるがそれは凪の両親だけ。
その兄弟は違うだろう。
確か勇者の弟はかなりよく深い人物だと聞いた。
それを元に考えると再び戦争を始める可能性が高い。
更に、反対派の凪の両親を完全に封じる為に凪はもう死んだことにされてる可能性だってある。
そこまで考えて、一週間の猶予を求めた。
理久は少し考え込むふりをする。
本当はどうするか初めから決まっていたはずだから。
その癖妙に焦らすのだ。
「確かに問題ないね、魔法の方は。だけど状況が状況だからさぁ。なかなか難しいんだよねぇ。まだはっきりするまで帰すわけにはいかない。中途半端はダメだから」
そう理久が言う。
理久の言う中途半端って何だろう?
凪が不利になる可能性を孕んでいるってこと?
それとも。
理久にとって不利になる可能性があるってこと?
例えば。
凪が人間の国に行って、そこで大切に扱われちゃって。
この国よりも母国の方がいいやって言って行っちゃう事?
そういう事なのかな。
それって結構大変だよね。
だってもう帰って来ないかもしれないし。
それに敵対する事確定しちゃうんだから。
でもあんまり遅くなっても。
そう考えていると、空に鴉が飛んでいた。
胸元には赤いスカーフを巻き、口には一通の手紙を咥えている。
こんな時間に手紙を持った鴉が飛ぶなんて珍しいな。
そう思っていると鴉は理久の肩に止まった。
手紙を理久に差し出して、カァ、と鳴く。
その後飛び去っていった。
手紙には蝋もついていない。
ただシールで封がされているだけだった。
理久が外して、ポッケに入れる。
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