6 / 291
一章
初めてのお客さん?
しおりを挟む
初めてダンジョンの外に出て以来、毎日食料確保のために外出した。
ここ数日調査してわかったことだが、俺のダンジョン周辺には、あんまり強いモンスターは生息していないみたいだ。一番強そうなのといっても、せいぜいノーマルゴブリンが群れで行動しているくらいだ。
俺たち吸血鬼にとってノーマルゴブリンなどいくら出会っても敵ではない。
おかげで安心して食料確保のために外出することができた。
アプルゥの実とトロ芋を採取し、川魚を捕獲し、出会ったゴブリンの血を吸ってレベリングに励む。ここ数日、そんなことばかりしていた。
奪ったゴブリンの血から、【獣の視覚】、【獣の聴覚】、【獣の味覚】といったスキルを新たにラーニングすることができた。
【獣の視覚】はMPを消費して視覚を強化できるスキルで、前に獲得した【獣の嗅覚】と同系統のスキルである。【獣の聴覚】と【獣の味覚】も同じで、その聴覚版と味覚版といった感じのスキルだ。
いずれも戦闘に直接役立つスキルではないが、ないよりはマシである。いつか使う時もあるだろう。スキルが増えて嬉しいばかりである。
スキルだけじゃなく、レベルも成長している。
毎夜エリザと血の吸い合いをして戯れたこともあり、俺とエリザのレベルは10にまで上がった。
レベルが上がったことと、スキル【吸血】のボーナス効果により、ステータス値が成長した。HPとMPの最大値が50を超え、直接確認はできないが、力などのマスクデータのステータス値も増えていると思われる。
僅かな成長かもしれないが、前よりかはちょっとだけだけど死に辛くなったと言える。
ダンジョン周りにザコしかいないといっても、いつ強敵に遭遇するかわからない。少しでも成長できているのは心強いな。
もっともっと強くなって、この世界最強の存在を目指して頑張っていこうと思う。最強のホテルマン吸血鬼目指して頑張っていくぜ。
◆
「いよいよか。あと三分で聖域がなくなるな」
転生してから一週間経ち、いよいよダンジョンの聖域が取っ払われる日がやって来た。
つまり、これからはダンジョンに侵入者がやって来る可能性があるということである。俺たちの経営する宿の開店初日とも言える。
数日前から大量に食料を確保しておいたので、しばらくは食料獲得のために外出する必要はない。
大事な拠点であるダンジョンに何かあると怖い。しばらくは、念のためにダンジョンから一歩も出ない予定である。
「日付が変わったな。今からいよいよダンジョンに侵入者がやって来るかもしれないのか。気を引き締めていこうぜエリザ」
「はい頑張りましょう」
聖域指定が解かれる当日。日付変更時から、俺はエリザと交代で寝ずの番をして過ごした。めっちゃ警戒するものの、何事もなく時間だけが過ぎていく。
「キィキィ!」
「騒がしいな。蝙蝠たちが騒いでる? 侵入者か?」
「そのようですね」
このまま何事もなく一日が終わるかと思ったら、昼頃になって侵入者がやって来ることとなった。
「もしかしてお客さんかな? 初めてのお客さんが来てくれたのかも!」
「うふふ、童子のようにはしゃぐご主人様、可愛らしくて素敵ですわ」
蝙蝠たちの警戒音を聞き取った俺とエリザは、食事を中断して窓から外の様子を伺う。もしかしたら宿のお客さんがやって来たのかもしれないと、そう期待して外の様子を伺ったのだが……。
「良い匂いだ!」
「飯の匂いだ!」
「こんなところに人間の家があるぜ!」
凶悪な面をしたゴブリンが十五匹、俺たちの家を取り囲んでいた。どうやらお昼御飯の匂いに釣られてやってきたらしい。
「女だァ!」
「女の匂いもするぜェ!」
「ヒャッハー!」
先日森で出会ったゴブリンとは、全然違った雰囲気のゴブリンである。
あの時のゴブリンは気の弱そうな感じだったが、今目の前にいるのは、いかにも悪人って感じの面構えをしている。全員がそうだ。
いや、人ではないから悪人ではないか。悪ゴブリンか。まあ細かいことなどどうでもいいか。
「明らかにお客さんじゃないみたいだな……」
「ふふ、違う意味で歓迎しませんとね」
「そうだな。お客様じゃないなら、人間じゃなくて吸血鬼流のおもてなしをしてあげないと」
訪問者は明らかに友好的な態度ではなかった。お客さんではなくてショックを受けるが仕方ない。
俺たちは外へ出て、招かざる客を迎えることにした。
「グヘヘ! 人間の女だ!」
「凄い可愛いぞ!」
「孕み袋にしてやるぜ!」
「男は殺せ殺せ!」
俺たちが姿を現すと、ゴブリンたちは一斉にエリザの方に注目した。
下衆な視線を浴びせ、その肢体を舐め回すように見ている。下半身の様子を見るに、酷く興奮しているらしいな。
不愉快だ。俺の愛する眷属のエリザをそんな目で見るなんてな。
クズ共が、皆殺しにしてやる。ダンジョンの糧にしてやる。
「ヒャッハー!」
「孕み袋ぉお!」
「犯せ犯せ!」
ゴブリンたちはもう我慢できないといった様子で、持っている棍棒を掲げると、俺たちの方へと向かってきた。
哀れな奴らだ。俺たちが弱そうな人間だと思っているらしい。自分たちのことを狩る側だと思い込んでいるようだな。
その認識、正してあげよう。
「――グヒ」
近寄ってきたゴブリンの顔面に回し蹴りをくらわせてやると、一撃で首が吹っ飛んでいった。
脆いものだな。吸血鬼と小鬼では基本スペックからして違うらしい。
「そんな汚いもの、私に近づけないでくださいます?」
エリザの方を見れば、彼女も豆腐を切るようにしてゴブリンを屠っていた。
完全に玩具扱いして遊んでいるな。嗜虐的な笑みが魅力的だ。猟奇的なエリザも素敵だぜ。
「エリザ、一匹も逃すなよ。ダンジョンの敷地内で全員仕留めるんだ。ダンジョンマナを稼がないとだからな」
「かしこまりましてよ。ご主人様」
最初に突貫してきた二匹を瞬く間に屠ってやると、ゴブリンたちの足が一斉に止まった。
そんなゴブリンたちを、俺とエリザは獰猛に笑いながら追い回していく。
「ひぃいっ、何だこいつらぁあ!」
「ばっ、化け物ぉおお!?」
哀れな獲物共をダンジョンの敷地内で順番に潰していく。一匹二匹三匹――。
ある程度数を減らして余裕ができたら、戦闘中だが吸血に挑戦してみる。侵略者相手に優しく噛んでやる必要はないので、荒々しく牙を突き立ててやる。
「ギャアアア! 力が抜けるぅうう!」
「うーん。不味いなぁ」
血を飲んでみると、酷く不味い味がした。
このゴブリンたち、かなり悪行を重ねているようだ。魂が腐っていて、血が腐っている。この前吸血したゴブリンたちの血がご馳走に思えるくらい、本当に不味い血だった。
――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――力が1増えた。
「不味すぎる。もういいや」
「――ぐひ」
一応レベリングにはなるが、あまり積極的に飲みたくない血である。
スキル【吸血】が発動するくらいまで吸ったら、そのまま牙を深く立てて絶命させてやった。
「こいつら吸血鬼だったのか!?」
「許してくれぇえ! お助けぇええ!」
俺たちの正体が吸血鬼だとわかった途端、ゴブリンたちは命乞いを始めた。
愚かな奴らだ。力の差がわからず挑んだ挙句、命乞いをするなんてな。無様にも程があるだろう。
俺たちの住処を荒そうとした上、エリザに下衆な視線を向けた奴らだ。許す必要なんてない。
それに非童貞みたいだしな。生かしてあげようという気がまったく起こらない。非童貞死すべし。
「吸血鬼の住処を荒そうとしたんだ。その命をもって償いな。非童貞みたいだし、思い残すこともないだろう?」
「ひぃっ、ひぃいいい!」
「非童貞だからって死にたくねえよぉお!」
「お助けぇええ!」
残ったゴブリンたちは吸血して弱らせた上で、コウモリたちに止めを刺させる。
俺たちが止めを刺したところで経験値はもらえないので意味ないからな。蝙蝠たちの成長の糧にしてやろう。
「戦闘終了。危なげなく終わったな」
「おめでとうございますご主人様」
「ああ完勝だな」
俺たちの前に横たわる無数の小鬼の骸。
ゴブリン十五匹、あっという間に仕留めることができた。
「153マナゲットか」
ダンジョンログを確認すると、ダンジョンマナが153増えていた。一匹当たり10前後といったところか。
ともあれ、初めてダンジョンマナをゲットできて嬉しい限りだ。これでようやくトイレや風呂などの水周りの設備が拡充できる。やって来たお客さんに最高のおもてなしができそうだ。
「さて。死体はスライムたちにくれてやるとするか」
「そうですね」
仕留めたゴブリンの死骸は、この間獲得したスライムの魔石を使って生み出したスライムにくれてやる。
「スライムたち、たんとお食べ。あ、ゴブリンの魔石だけは食べちゃ駄目だからね」
俺が指示を出すと、スライムたちがゴブリンの死体にワーッと群がっていく。ゼリー状の身体をプルプルと震わせ、消化して食べている。
スライムは時間経過によって勝手に増えるので、ダンジョンに収まらない奴らはダンジョンの外に放逐している。家の掃除用にも、トイレの汚水処理用にも、もう十分すぎるくらい数を確保したからな。
そのうち、ここら一帯に生息しているスライムは、俺のダンジョン産の奴らに入れ替わることだろう。
「今回はスライム警戒網はあんまり役に立たなかったな。蝙蝠たちはよく働いてくれたけど」
俺が生み出したスライムは眷属であり、それが分裂して生まれたのも眷属である。
眷属がやられるとダンジョンログに残る。例えば、「スライムAがやられた」という感じに残るのだ。
どこで誰にどのようにやられたとかはログには残らないのだが、どこでやられたかに関しては工夫することで把握することができる。
例えば、スライムAをダンジョンの東百メートル付近で生活させるようにしておけば、スライムAがやられた際にはそこに敵がいるということがわかる。
ザコスライムはそんな風にして、索敵レーダーみたいに使うことができる。
今回のように敵がスライムを無視してダンジョンにやってくるという可能性もあるので万全ではないものの、それでも保険にはなるだろう。やらないよりはマシである。
どの道増えすぎたスライムの処理に困っているので、余ったスライムはそういう風に使い潰すように運用することにした。
今回、スライムはともかく、蝙蝠はよく働いてくれた。俺とエリザが察知するよりも前に敵の接近に気づいてくれた。
これなら夜間でも問題なく対応できそうだ。
「さて初めてのマナ収入が入ったことだし、ショップでお肉でも買ってお祝いするか。今夜は焼肉にしよう。シャンパンも開けて、俺たちの宿屋の開店記念を祝おうぜ」
「わぁ、素敵ですわ。ありがとうございますご主人様」
初めてのダンジョン戦が何事もなく終わったことを記念して、俺たちは祝杯をあげるのであった。
♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.10)
種族:吸血鬼(ノーマル)
HP:58/58 MP:67/67
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
ここ数日調査してわかったことだが、俺のダンジョン周辺には、あんまり強いモンスターは生息していないみたいだ。一番強そうなのといっても、せいぜいノーマルゴブリンが群れで行動しているくらいだ。
俺たち吸血鬼にとってノーマルゴブリンなどいくら出会っても敵ではない。
おかげで安心して食料確保のために外出することができた。
アプルゥの実とトロ芋を採取し、川魚を捕獲し、出会ったゴブリンの血を吸ってレベリングに励む。ここ数日、そんなことばかりしていた。
奪ったゴブリンの血から、【獣の視覚】、【獣の聴覚】、【獣の味覚】といったスキルを新たにラーニングすることができた。
【獣の視覚】はMPを消費して視覚を強化できるスキルで、前に獲得した【獣の嗅覚】と同系統のスキルである。【獣の聴覚】と【獣の味覚】も同じで、その聴覚版と味覚版といった感じのスキルだ。
いずれも戦闘に直接役立つスキルではないが、ないよりはマシである。いつか使う時もあるだろう。スキルが増えて嬉しいばかりである。
スキルだけじゃなく、レベルも成長している。
毎夜エリザと血の吸い合いをして戯れたこともあり、俺とエリザのレベルは10にまで上がった。
レベルが上がったことと、スキル【吸血】のボーナス効果により、ステータス値が成長した。HPとMPの最大値が50を超え、直接確認はできないが、力などのマスクデータのステータス値も増えていると思われる。
僅かな成長かもしれないが、前よりかはちょっとだけだけど死に辛くなったと言える。
ダンジョン周りにザコしかいないといっても、いつ強敵に遭遇するかわからない。少しでも成長できているのは心強いな。
もっともっと強くなって、この世界最強の存在を目指して頑張っていこうと思う。最強のホテルマン吸血鬼目指して頑張っていくぜ。
◆
「いよいよか。あと三分で聖域がなくなるな」
転生してから一週間経ち、いよいよダンジョンの聖域が取っ払われる日がやって来た。
つまり、これからはダンジョンに侵入者がやって来る可能性があるということである。俺たちの経営する宿の開店初日とも言える。
数日前から大量に食料を確保しておいたので、しばらくは食料獲得のために外出する必要はない。
大事な拠点であるダンジョンに何かあると怖い。しばらくは、念のためにダンジョンから一歩も出ない予定である。
「日付が変わったな。今からいよいよダンジョンに侵入者がやって来るかもしれないのか。気を引き締めていこうぜエリザ」
「はい頑張りましょう」
聖域指定が解かれる当日。日付変更時から、俺はエリザと交代で寝ずの番をして過ごした。めっちゃ警戒するものの、何事もなく時間だけが過ぎていく。
「キィキィ!」
「騒がしいな。蝙蝠たちが騒いでる? 侵入者か?」
「そのようですね」
このまま何事もなく一日が終わるかと思ったら、昼頃になって侵入者がやって来ることとなった。
「もしかしてお客さんかな? 初めてのお客さんが来てくれたのかも!」
「うふふ、童子のようにはしゃぐご主人様、可愛らしくて素敵ですわ」
蝙蝠たちの警戒音を聞き取った俺とエリザは、食事を中断して窓から外の様子を伺う。もしかしたら宿のお客さんがやって来たのかもしれないと、そう期待して外の様子を伺ったのだが……。
「良い匂いだ!」
「飯の匂いだ!」
「こんなところに人間の家があるぜ!」
凶悪な面をしたゴブリンが十五匹、俺たちの家を取り囲んでいた。どうやらお昼御飯の匂いに釣られてやってきたらしい。
「女だァ!」
「女の匂いもするぜェ!」
「ヒャッハー!」
先日森で出会ったゴブリンとは、全然違った雰囲気のゴブリンである。
あの時のゴブリンは気の弱そうな感じだったが、今目の前にいるのは、いかにも悪人って感じの面構えをしている。全員がそうだ。
いや、人ではないから悪人ではないか。悪ゴブリンか。まあ細かいことなどどうでもいいか。
「明らかにお客さんじゃないみたいだな……」
「ふふ、違う意味で歓迎しませんとね」
「そうだな。お客様じゃないなら、人間じゃなくて吸血鬼流のおもてなしをしてあげないと」
訪問者は明らかに友好的な態度ではなかった。お客さんではなくてショックを受けるが仕方ない。
俺たちは外へ出て、招かざる客を迎えることにした。
「グヘヘ! 人間の女だ!」
「凄い可愛いぞ!」
「孕み袋にしてやるぜ!」
「男は殺せ殺せ!」
俺たちが姿を現すと、ゴブリンたちは一斉にエリザの方に注目した。
下衆な視線を浴びせ、その肢体を舐め回すように見ている。下半身の様子を見るに、酷く興奮しているらしいな。
不愉快だ。俺の愛する眷属のエリザをそんな目で見るなんてな。
クズ共が、皆殺しにしてやる。ダンジョンの糧にしてやる。
「ヒャッハー!」
「孕み袋ぉお!」
「犯せ犯せ!」
ゴブリンたちはもう我慢できないといった様子で、持っている棍棒を掲げると、俺たちの方へと向かってきた。
哀れな奴らだ。俺たちが弱そうな人間だと思っているらしい。自分たちのことを狩る側だと思い込んでいるようだな。
その認識、正してあげよう。
「――グヒ」
近寄ってきたゴブリンの顔面に回し蹴りをくらわせてやると、一撃で首が吹っ飛んでいった。
脆いものだな。吸血鬼と小鬼では基本スペックからして違うらしい。
「そんな汚いもの、私に近づけないでくださいます?」
エリザの方を見れば、彼女も豆腐を切るようにしてゴブリンを屠っていた。
完全に玩具扱いして遊んでいるな。嗜虐的な笑みが魅力的だ。猟奇的なエリザも素敵だぜ。
「エリザ、一匹も逃すなよ。ダンジョンの敷地内で全員仕留めるんだ。ダンジョンマナを稼がないとだからな」
「かしこまりましてよ。ご主人様」
最初に突貫してきた二匹を瞬く間に屠ってやると、ゴブリンたちの足が一斉に止まった。
そんなゴブリンたちを、俺とエリザは獰猛に笑いながら追い回していく。
「ひぃいっ、何だこいつらぁあ!」
「ばっ、化け物ぉおお!?」
哀れな獲物共をダンジョンの敷地内で順番に潰していく。一匹二匹三匹――。
ある程度数を減らして余裕ができたら、戦闘中だが吸血に挑戦してみる。侵略者相手に優しく噛んでやる必要はないので、荒々しく牙を突き立ててやる。
「ギャアアア! 力が抜けるぅうう!」
「うーん。不味いなぁ」
血を飲んでみると、酷く不味い味がした。
このゴブリンたち、かなり悪行を重ねているようだ。魂が腐っていて、血が腐っている。この前吸血したゴブリンたちの血がご馳走に思えるくらい、本当に不味い血だった。
――スキル【吸血】発動。経験値獲得。
――初めての対象であるのでボーナスを獲得。
――力が1増えた。
「不味すぎる。もういいや」
「――ぐひ」
一応レベリングにはなるが、あまり積極的に飲みたくない血である。
スキル【吸血】が発動するくらいまで吸ったら、そのまま牙を深く立てて絶命させてやった。
「こいつら吸血鬼だったのか!?」
「許してくれぇえ! お助けぇええ!」
俺たちの正体が吸血鬼だとわかった途端、ゴブリンたちは命乞いを始めた。
愚かな奴らだ。力の差がわからず挑んだ挙句、命乞いをするなんてな。無様にも程があるだろう。
俺たちの住処を荒そうとした上、エリザに下衆な視線を向けた奴らだ。許す必要なんてない。
それに非童貞みたいだしな。生かしてあげようという気がまったく起こらない。非童貞死すべし。
「吸血鬼の住処を荒そうとしたんだ。その命をもって償いな。非童貞みたいだし、思い残すこともないだろう?」
「ひぃっ、ひぃいいい!」
「非童貞だからって死にたくねえよぉお!」
「お助けぇええ!」
残ったゴブリンたちは吸血して弱らせた上で、コウモリたちに止めを刺させる。
俺たちが止めを刺したところで経験値はもらえないので意味ないからな。蝙蝠たちの成長の糧にしてやろう。
「戦闘終了。危なげなく終わったな」
「おめでとうございますご主人様」
「ああ完勝だな」
俺たちの前に横たわる無数の小鬼の骸。
ゴブリン十五匹、あっという間に仕留めることができた。
「153マナゲットか」
ダンジョンログを確認すると、ダンジョンマナが153増えていた。一匹当たり10前後といったところか。
ともあれ、初めてダンジョンマナをゲットできて嬉しい限りだ。これでようやくトイレや風呂などの水周りの設備が拡充できる。やって来たお客さんに最高のおもてなしができそうだ。
「さて。死体はスライムたちにくれてやるとするか」
「そうですね」
仕留めたゴブリンの死骸は、この間獲得したスライムの魔石を使って生み出したスライムにくれてやる。
「スライムたち、たんとお食べ。あ、ゴブリンの魔石だけは食べちゃ駄目だからね」
俺が指示を出すと、スライムたちがゴブリンの死体にワーッと群がっていく。ゼリー状の身体をプルプルと震わせ、消化して食べている。
スライムは時間経過によって勝手に増えるので、ダンジョンに収まらない奴らはダンジョンの外に放逐している。家の掃除用にも、トイレの汚水処理用にも、もう十分すぎるくらい数を確保したからな。
そのうち、ここら一帯に生息しているスライムは、俺のダンジョン産の奴らに入れ替わることだろう。
「今回はスライム警戒網はあんまり役に立たなかったな。蝙蝠たちはよく働いてくれたけど」
俺が生み出したスライムは眷属であり、それが分裂して生まれたのも眷属である。
眷属がやられるとダンジョンログに残る。例えば、「スライムAがやられた」という感じに残るのだ。
どこで誰にどのようにやられたとかはログには残らないのだが、どこでやられたかに関しては工夫することで把握することができる。
例えば、スライムAをダンジョンの東百メートル付近で生活させるようにしておけば、スライムAがやられた際にはそこに敵がいるということがわかる。
ザコスライムはそんな風にして、索敵レーダーみたいに使うことができる。
今回のように敵がスライムを無視してダンジョンにやってくるという可能性もあるので万全ではないものの、それでも保険にはなるだろう。やらないよりはマシである。
どの道増えすぎたスライムの処理に困っているので、余ったスライムはそういう風に使い潰すように運用することにした。
今回、スライムはともかく、蝙蝠はよく働いてくれた。俺とエリザが察知するよりも前に敵の接近に気づいてくれた。
これなら夜間でも問題なく対応できそうだ。
「さて初めてのマナ収入が入ったことだし、ショップでお肉でも買ってお祝いするか。今夜は焼肉にしよう。シャンパンも開けて、俺たちの宿屋の開店記念を祝おうぜ」
「わぁ、素敵ですわ。ありがとうございますご主人様」
初めてのダンジョン戦が何事もなく終わったことを記念して、俺たちは祝杯をあげるのであった。
♦現在のヨミトのステータス♦
名前:ヨミト(lv.10)
種族:吸血鬼(ノーマル)
HP:58/58 MP:67/67
【変化】【魅了】【吸血】【鬼語】【粗食】【獣の嗅覚】【獣の視覚】【獣の聴覚】【獣の味覚】
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる