他の出会いでもう一度

ろぐあうと

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ただのトーリ

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俺の名前はトーリ
ただのトーリだ。
貴族様でもないから苗字なんてないし、他に呼ばれるとしたら雑用係のトーリ、田舎者のトーリ、カリュ(母さんの名前)のとこの四男…
もしくは、卑怯者のトーリ。


俺のいる場所は戦争の前線。
毎日、同じ飯を食って、一緒にふざけて笑い合っていた奴が死んでいく。
毎日毎日だ。
だが俺は死ななかった。
特攻に出されても、前線で槍一つで放り出されても、無謀とも言えるお粗末な作戦で戦わされても。
俺だけが生き残った。
そんな事の繰り返しでついたあだ名が卑怯者のトーリ。
どっかに一人逃げて生き延びていると陰口を叩かれる。
どこにも居場所のない前線兵士のトーリだ。

多分、俺は強かったのだ。
体は細く、ヒョロそうに見えるがこれでも力持ちで地元でも力自慢で有名だった。
俵だって俺1人で四俵は余裕だった。
だからこそ、国に売られて今ここにいるわけだが、
結構役に立っていると思っていたが気のせいだったようだ。
兄も姉も容姿がよくいいとこの貴族の愛人となりお金を実家に入れていたから、容姿もさほど良くない俺は必要なかった息子だったのだろう。

今は隣国、アベリーチェと交戦中だ
どうやらアベリーチェがうちの国、リムサに疫病(感染力が非常に強く潜伏期間が長いまた、致死率が非常に高い)を撒き散らそうとしていたとか、
酷いことになるとわからないのだろうか、こちらの国とあちらの国を行き来する商人だっているのだ、学がなくバカな俺でもあちらの国にも被害が出るということくらいわかる。
双方被害しか出ないし、国を奪ったとしても国民は瀕死状態利益などでなさそうなものだが…
それが火種となり戦争が勃発、少々自国側が劣勢である。
悔しい限りだ

そんな戦争の前線に出されている。馬は上官のみが乗れ、一般兵には得意な武器が一本だけ支給される。
そんな状態で戦えと言われるのだ、訓練はするが付け焼き刃で通用なんかするはずもない。
圧倒的な人員不足だ。

そんな中貴重な休憩だ。
向こうが引き、やっとの休息だ。
おそらく引いたのは戦略のためだろうが追わぬが吉だ。
向こうも疲れていたし、死人は少ない方がいい。

ほっと一息つけるのはキャンプの裏にある森の木の上でのみだ。
中は俺を嫌っている奴しかいないから俺はいないほうがいいのだ。
支給されている2つのパンと川で汲んだ水を口に入れる。
そうのんびりしているとガサ…微かに音がした。
ぴたりと体を硬くし下を覗き込むと
血だらけの、黒いマントで全身を覆った男?が現れた。

あまりに血だらけで木から飛び降りる
昔は木登り名人と呼ばれていたほど上り下りは得意なのだ
腰についたポーチに入れていた救急セットから回復薬と包帯を取り出す。
「大丈夫?そこにしゃがんで、怪我見せて」
ザッと構えの体制を取ろうとするが腰の辺りを触り剣がないことに気がついたのか絶望の表情をするが俺に敵意がないが伝わったのかおとなしくなった。
貴族様ならすぐに敬語を使えと怒られるが平民なのでちゃんとした敬語を知らない。
だがこいつは使う必要がないようだ、叱らない。
大人しくなったやつの前にしゃがみ込み血の跡を追う。
足と腕に怪我をしていたが他についていた血は他の人の血らしかった

川で水を早朝に調達してくるのも俺の仕事
俺は力持ちだから1人の方が効率がいいから都合がいい
いつもいく近くの川に連れて行き血を洗い流してやる。

こいつ全く喋らないな。
まぁ、訳ありかな
戦場には精神的ショックで喋れなくなったやつなんてザラだ。
戦場に行ったやつはだいたい精神がやられて元の人格じゃなくなる。
まともな奴は人なんか殺さない。
俺も殺したくない。

あらかた綺麗にしてやると衣服を剥いで洗濯してやる。
ただ迷い込んだだけの町人のようだ
少し抵抗されたが力で俺に敵う奴はいない
そこらの木に落ちている棒を掛け衣服をかけてやる。
洗い流した綺麗な体に強い酒をかけ消毒してから回復薬を塗り込み包帯を巻いていく。
「ありがとう」
いきなり誰の声かと思って驚いたが、どうやら目の前のこいつの声だったらしい。
「喋れたのか、てっきり喋れないものかと。他にどっか怪我はないか?」
少し体を動かした後
「ないようだ、少しフラフラするが」
ぐぅ~~~
長い音が鳴る
男は顔を真っ赤にして下に向けていた
「あっはは、いい音鳴らすなぁ。ちょっと待っててくれ。」
そういうとすぐそこの穴に隠れていた蛇やウサギを狩り血抜きを済ませ持ち帰った。
煙が上がらないように焼きたらふく食わせる。
よほどお腹が空いていたのか喉に少し詰まらせていた。
俺は胃が小さくてあまり食べられないからひとが食べるのを見るのが好きだ。

「何から何まですまない。あんなに美味しいうさぎ肉もヘビ肉も初めてだ!」
岩塩を軽く振っただけなのに誉めすぎだ
空腹だったからだろう
少し照れながらありがとうと言った。

次の日から休息になるとすぐに肉を取りに行き彼、アレンの容態を見た。
洞窟にちょっとしたものを揃え人が住めるようにした。上から自然に草を垂らす。
田舎はこんな知識ばかりだ。
特に猟師もしていたため、無用の長物だと思っていた知識に光が当たった。
休息は夜が多いが奇襲に備えての見張りの役が来る時があった。
そんな日は前日に多めに肉や食べられる野草を摘んで置いておいた。
アレンが1人で時々どこかに行っているのは知っていたが見て見ぬ振りをしていた。
そうしたかった。

俺は強いからと揶揄われいつも見張りは1人だった。
普通は2人か3人体制だ
不安で眠れなくなるんじゃないかと思うこともあったが、みんな熟睡しているようだ。
信用されているのかいないのか…不思議である。

そんな日が長く続いた。
前線は後退してこそいないものの、物資は途絶え尽き始めていた。
たくさん人が死に、人は送られてこなくなり。
食料も減った。

もういつ崩壊してもいいほどだった。
俺は無我夢中で敵を薙ぎ倒し敵の大将らしきやつと相見えた。
貴重な馬に乗っているし、特別な雰囲気を纏っている。
うちの大将はまだまだ後ろにおり、くるまでに俺は殺されるだろう。
槍を強く握る。
決死の覚悟でむかい相手の持っている手綱に先を引っ掛け切る。
毎日手入れして切れ味抜群のそれは容易く革でできた手綱を切る
後ろも警戒しながら馬を強く叩く。
馬は大きく嘶き上のやつを振り落とす。
手綱も失いバランスを崩したやつを槍の反対側で強打し意識を失わせた。
その後は奪った馬に乗って暴れ回り無我夢中で覚えていない。
だがやはり、戦争の終わりは近いだろう。
圧倒的な人数差、物資力、知識量。
罠に嵌められて死んだ奴もいた…
俺も…そろそろそっちにいくよ。ジョン、キーラ、トコニ…

いつのまにか戻ってきていた時には満身創痍の状態だった。
だがアレクの食料調達のために重い腰を上げて狩りに行く
ここのところは軍の食料も調達している。
森のために少しずつだが、

ここのところ気づいたことがある。
それは俺がアレクを好きということだ。
食べ物を食べて嬉しそうにしているアレク、ちょっとした会話で楽しませてくれるアレク、俺を気遣ってくれるアレク。
思い返すと顔が熱くなる。
心拍数も上がり深呼吸をする。

だが、体の関係なんてものは望んではいけない。

いつからか、軍の性欲処理担当になってしまっていたのだ。
よくわからないが普通の軍にもあって投票制で決めるらしい。
俺は田舎の平民だから軍の普通がわからないで、軍隊で習う処理の基礎的な知識も知らずに上手くできず初めの頃はよく怒られた。
だが根気よく教えてくれて今ではかなり慣れたものだ。
何もわからない人間に教えるのは苦労するだろうに、口調は荒かったがそういうものなのだろう。ありがたい。
軍の性欲処理担当は恋愛厳禁で軍の人間以外とは体の関係を持ってはいけないらしい。
なので俺はアレクとどうこうなる気は一切ないのだ。
それに、これは一本通行だ。
お返しを期待してはいけない。俺は今のままで充分だ。

これくらいでいいだろうと洞窟に行くと人の気配を感じた。
アレクではなくピリピリと張った出産後のメスの獣のような危険な感じだ。
音を立てないようにそっと身を隠した。
すると洞窟の中からアベリーチェ国の兵服を着た上の地位っぽい男が3人出てきた。
衝撃が走り身構えてしまった。
そのせいで勘のいいやつに気づかれかけたがなんとかバレなかったようだ。
少し経って十分にいなくなったことを確認してから気が抜けた。
立てなかった。

アレクは、敵国の兵士だったのだ。
敵だったのだ
えもいえぬ不安感、不快感、懐疑心が心の中に渦巻いた。
本当は、心の底では気づいていた。
最初から。
だが目を背けていたのだ。
だが、見てしまった…現実を

落ち着いてから洞窟に入る。
足跡もなく痕跡がない。手慣れているものだ。
「おかえりトーリどうだった?」
沈黙する俺にアレクも気づいたのか顔色が変わる
「もしかして…みた?」
沈黙で応える。
「違うんだトーリ聞いてくれ。」
「いいや、何も違わない。見たまんまだろう?お前は敵だった。」
お前と呼んだことにショックを受けたのか少し唖然とすると
真面目な顔をして話し出した
「本当は記憶喪失だったんだ。どこかで頭を打ったのか、よくズキズキと痛んでた。でも半年前に記憶が戻って、もっと前の記憶も戻って。すぐにアベリーチェと交信した。
ごめん。交信の方法は言えない。
でも記憶が戻るまでは本当に私はリムサの国の出身だと思い込んでて…
本当はもっと酷い立場なのにね…、交信してから私はアベリーチェに命令を受けて前線の状況や、双方の数…色々調べさせられた。」

半年…アレクと出会って大方10ヶ月だ、
いつから裏切っていたかなんてもう考えたくもない。
打ちひしがれていた。

「そして…ある日トーリの上官を暗殺する命令があって、トーリ達のテントの中見て把握してたら…トーリが…他の奴らに犯されてて。トーリも喘いでて…結局その日は何もできなくて、次の日の戦場のどさくさに紛れて殺した。」
「死んだ上官…」
死んでいった仲間なんて膨大すぎて思い出すことができない。
確かに仲良いのがいた気がするのだが。
上官もたくさんいた。
死んで補充されて。
今も補充、上官だけは補充されているはずだ。
「俺はお前を殺さないといけない。アベリーチェの奴らは殺さないといけないんだ。」
でも、アレクは殺したくない。
殺したくないなぁ…
いつからか出なくなった涙が出る。
アレクはそんな俺を見てあわあわとし
「とっとりあえずご飯でも食べよう!」
と明るく言った。

満腹になって、敵と分かっている俺の前で穏やかな寝息を立てる。
俺にはこれしか道がないのに、
迷ってはダメだ。
消して殺してはいけない。
こいつはアベリーチェの人間だ。
皆殺しにしないと。
抑えきれなくなりそうで外に出る。
この槍で首根を掻っ切ってやるだけでいいんだ。
それがお国のためになる。
生かしておいたらダメなんだ。
俺しか知らない。
俺がしないと。
アレクは俺の大事な人。
きっと対して悪いことなんてしてない。
殺さなくていい。
殺したくない。
いつのまにか朝になっていて。
俺はいつの間にか何を考えていたのか忘れてしまった。
とても大切なことだった気がする。
でも今は、敵をやっつけないと…

…?なんだかすごく嫌な気がした。
やっつける?え?俺がそう思った???
足元がぐらつく。膝をつき頭を抱える。

戦場に長くいてはならない。きっと呑まれてしまうから。

駆けて逃げようとするがどこにいけばいいのかわからない、必要のない情報は与えられないのだ。
とりあえず戦場の反対側へと走り出す。
自分の心も体も戦争の意識に染まっていったのか汚く感じる。
吐き気が込み上げてきて途中で吐いた。
走る気力も無くなって、歩いていると舗装された道に出た。

そこで意識を失った。


「…と、…漬けにしておく…られなく…奴隷…試し」
そんな声がかすかに聞こえ起きようとするが頭がぼーっとして覚醒しない。
そうこうしているとジュッ嗅ぎ慣れた肌の焼ける匂い激しい痛み
「あ"あ"ぁぁ…」
誰かの血が垂らされる。

また気を失った。


目が覚めるとよく見慣れたテントの中、体が揺れている目の前には小太りの知らない男。

ベットの中でだけは誰も俺を卑怯者と呼ばない。トーリ、トーリちゃん、平民風情…卑怯者とは誰もいはない。
どんどん与えられる快楽に溺れるようになっていた。
どんどんその行為が好きになっていった。
その中でみんなが言うことの多くはアベリーチェへの怒り。
人間を人間とも思わない、邪智暴虐な行い。アベリーチェへの批判。何も見ないでも言えるほど頭の中に染み付いている。

前の男に体を委ね達しそうになると足を絡ませて奥まで入れ込む。
突かれるたびに空気が出て意図せず声になる。
「あっ、あ、あっ、んっ」
奥まではいかないが気持ちいい。
パチュパチュと肌と肌が打つ音が聞こえる。
中で男がいったのがわかる。
足を解き中のものを出そうとする。
だがいつもなら股をひらけば勝手に溢れ出すほどのそれは何も出てこなかった。
疑問に思っていると
「奴隷は男女構わず孕むことができるようになるのだ、性処理が楽でいい。勝手に吸収するからな。
まぁ、足りぬならこれでもさしとけ」
そういいプラグを差し出される。それを穴に入れ男の前に立つ。
「わしがお前の主人だ。逆らうことなど許さん。よいな?」
「はい…」
機械的な返事だ。
「お前の名前は今日から一号だ、今までの名前は捨てろ。」
「はい。」
「一号食堂に案内しろ。」
「はい。」
俺は下半身裸のまま食堂へ向かった。

食堂に着くが誰も俺を見て驚かない。目の焦点などあっておらずぼーっとしている。
「お前はわしの膝の上だ。」
横抱きのような形になる
座るとそれが合図のように他の奴らも食べ出した。
「はは、よく食べおるわ。おぞましい」
ご主人がぼそっと言った。
「ほら口を開けろ、一号」
そういうと全て食べさせてくれた。
倒れていた俺を気遣ってくれているのだろう。
なんていいご主人様なんだ。
謎の酩酊感がありいつもより頭がふわふわする。
「ほらもっと食べろ」と心配もしてくれる
お腹はいっぱいだがご主人様が手で俺のために取ってくれたと思うといくらでも食べることができた。
きっと俺のご主人様は神のようなお方なんだ
俺は恵まれているな。

食べ終わるとそのまま作戦会議に移った。
ご主人様が途中で元気になり作戦会議の前の席だと言うのにこんな俺に入れてくださった。
「敬語がなっておらんな。毎日躾けてやるからな。一号、お前の中は気持ちがいい。名器だ。」
「あんっ、あっ、ありがとっ、ございますっあぁっ!」
ご主人様に褒められて嬉しすぎていってしまった。
「主より先にいくでない」
そう叱られ何度もお尻を叩かれる。
結局あまり作戦は頭に入らなかった。
でも武器を持って左と右に分かれて挟むらしい。
全勢力で叩くと言う。
素晴らしい作戦だ。
そんな真面目の作戦会議の中俺はご主人様よりもたくさん達してしまい丸い輪っかをちんこにつけられた。
ご主人様からの初めてのプレゼントだ、毎日つけることにした。

俺たちは配置につき敵を待った
だがいつになっても来なかった。
俺たちは一旦各テント、拠点に戻った。
ハトが手紙を届けてくれる。
それを見たご主人様は怒り、俺を殴り、何度も踏んづけた。
ご主人様が与える試練だと、ご主人様の気持ちがこれで晴れるならと、喜んでご主人様からの愛を受けた。

俺たちは国に戻ることになった。
どうやら負けたらしい。
また、アベリーチェはせこい策略で酷い手を使ったのだろう。
なんで奴らだ。
俺も、他の兵士もみんな怒っていた。

俺たちはその後城の地下に連れて行かれた。
一人一人に部屋が与えられ木でできたベットがある。
毎日3食運ばれてくるご飯を食べ、訓練をし、命令に従順になった。
夜になると大浴場に行き体を洗う。
他の奴らの体も洗う。俺はそう言う役割だから。
役割持ちは偉いのだ。俺は昇格していた。
奴らのちんこを口で綺麗にすると石鹸をつけた手で洗ってやる。
最後に自分の体も洗いご主人様のところへ向かう。

「今日も卑しい奴隷に種付けをお願いします。」
何もしていなくても溢れてくる腸液、もう性器になってしまったそこを開いてご主人様に懇願する。
その日は5発出された全部受け止め喘ぎすぎて喉が枯れた。

次の日、ご主人様がどこからか仕入れてきた薬を俺に打ち込んだ。
するとドクンと心臓が跳ねゾワゾワと空気が肌を伝う感覚でさえ達してしまった。
その日は死にかけるまで抱いていただいた。
俺は、妊娠してしまった。

俺たちに特殊任務が課せられた。
それはアベリーチェ国王の暗殺だ
俺の他に5名、他の奴らは他の貴族の暗殺を命じられていた。
この日のためにどんな厳しい訓練でも頑張ったんだ。
「「「アベリーチェのゴミどもに報復を!」」」
声を揃えていい闇に身を隠すマントを羽織る。

アベリーチェへは地下を通っていく。
城は厳重だが少しのとっかかりを使い壁をスイスイと登り縄を垂らす。
侵入すると分かれて俺たちは王を探し始めた
メイドを追っていると豪華そうな扉が見えた。
きっとあそこだ。

俺が先陣を切ることになった。
近くの窓から外に出ると部屋の窓らしき場所に飛び移り割って入る。
そこには2人の男がいた。
迷うことなく両方殺そうとするが、片方の男が強く逆に捉えられてしまった。
男は武器を取り後から来た奴らも斬り殺してしまった。
関節を外され立てずにいると冷酷な目をした男がこちらへと近づいてくる。
きっと護衛だ。
と言うことはもう1人の男がそうか、立てなくても殺せる。
仕込んでいた毒針を取り出そうとすると腕を切り落とされた。
「お前はどこのものだ。まぁ、予想はつくが…」
「グッ」
殺されると思ったその時
「うっ、ちょっと待てシード、こいつ変な匂いがするぞ。
いや、殺したやつからもだ。これは…使役草」
「と言うことはあまり情報を出せそうにないですね。
殺してしまいましょう。きっと拷問してもしゃべらないでしょう。」

スッ
と綺麗な太刀で俺の首を切ろうとする。
「まてまて、何か手がかりがあるかもしれないだろう。
お前がリムサを嫌いなのは知っているがこいつは操られているんだ、治したら何か聞き出せるかもだろ。」
「そうですか、好きになさってください。王太子殿下。」
「もう国王だよ…シード」

シードと呼ばれていた男は退室し、俺は両足脱臼で立ち上がれなかった。
「取り敢えず魔法で止血しておくね。また襲われると怖いから縛っておくけど。痛くはしないから」

服を脱がされ風呂に連れて行かれる
「はっ?え、奴隷紋に妊娠…?その上薬漬け…、えっ、」
俺の裸を見て男が驚く。
「取り敢えず上がったら解呪しよう。使役草の解毒薬もあるけど。効くまでには時間がかかりそうだ。」

丁寧に風呂に入れてくれ上がると凄そうな魔法を使い始めた。
俺は全力で抵抗した、ご主人様との唯一のつながり。この所有印とお腹の子だけだ…
でも所有印は消えてしまった。
心にぽっかり穴が空いたようで立ち直れなかったがそんな俺に無理に何かを飲ませた。
鼻を摘んで水で流し入れられた
「薬を毎日飲んだらきっと良くなる。災難だったね」
災難?俺は幸せだった。
でも、これからどうやって生きればいいのだろう。心の支えがなくなってしまった。

それから毎日薬を飲まされた。
いつの日からかそいつも俺を抱くようになり。
俺も何故かそれを受け入れていた。
そいつは俺を誰とも合わせようとせず軟禁状態だった。

何日か経ち自分の状態をやっと理解してきた。
でもまだ記憶は曖昧で、理解できてない部分の方が多かった。

ある日。唐突に、気がついた。
俺は過ちを犯していたことに。
でも遅すぎた。
最後に、最期に一目、あいつに会ってから死にたい。
たくさんの人を殺した。
たくさんの人に強姦された。
たくさんのことを忘れた。
今もまだ名前も思い出せないが、あいつが俺の好きだったやつだとわかる。
癖に無意識に気づいていたんだろうか。
剣を握る手が独特だと思ったんだ。
王の寝室から抜け出し訓練場へといく。
何故か足が軽い
今から死ぬと言うのに。
彼に会えるからだろうか。

あの時とは違い少し筋肉がついた。
髪は少し切ったのか、それもまた似合っている。気づかれないように彼の姿を堪能する。

もっと違う時に会えてたら、そう思わずにはいられない。

そろそろと思い腰を上げると訓練場が騒がしくなってきた。
どうやら侵入者のようだ
いち早く侵入者の居場所に気づき彼を狙っているのを見て俺は駆け出した。
あの侵入者はリムサ王国のものだ。
責任は俺が取ろう
彼の前に立ち盾となる。勢いをつけた侵入者は止まれず、毒が塗ってあるであろうそれを俺に突き刺した。
その瞬間膝で鳩尾を蹴り抜き男は吐いて気絶した
俺も立っていられなくてその場に倒れる。
彼は唖然とした顔をしてハッとする。
まるで変わっていない。
何か叫んでいるがもう何も聞こえない。
お前だけが俺の居場所だと信じていたよ
さよならアレク、愛していたよ。
「お前なんか大嫌いだ」
未練を残したくなくてそう言ったつもりだが届いただろうか

アレクって名前は嘘だったんだな、シード。
お前はもっと幸せになれる。
俺が縛っていい人間じゃない。
もしも次があれば。もっといい出会いを。
そこで俺は息絶えた。











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