れぷたいるず!~転生先の異世界は爬虫類がヒト化した世界でした~

桜蛇あねり

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第一章 ティタノボアの箱庭世界

7.ミィの夢

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所狭しと、店や家が立ち並ぶ石畳の道を進んでいくと、街のはずれへとたどり着いた。

家が少なくなり、草木の数が増えてくる。

「この世界で夢を叶えるためには、お金が必要になる」

道中、ミィはさらにこの世界での生き方について教えてくれた。

「お金の概念あるのか、ここの世界にも。お金の単位は?円?ドル?ペソ?」

「ゴールド、だ」

うぅん、さっきの街並みといい、お金の単位といい……。

絶対ここの創造者、人間社会じゃなくて、そこで親しまれてきたの漫画やゲームの世界観を投影してるだろ。

なーにが『少しファンタジーな要素も入れたけど』だ。

これじゃ、『ファンタジーな世界に人間社会の要素を取り入れた』っていう表現の方が正しいぜ…。


「ふぅん、ゴールド、ねぇ。んで、俺らはきちんと働いて、そのゴールドを稼ぎ、生きるための衣食住を手に入れないといけないわけだ」

「いや、お金がなくても、この世界で生きていくことは可能だ」

「え?そうなの?」

「先ほどの祠の転移先の一つに『食料の森』という場所がある。ここで最低限の食料を調達することはできるし、住む場所と衣服は、転生の際に与えられるんだ」

な、なんだと…?

じゃあなんだ、ここでは働かなくても生きていくことができるのか…?

なんという素晴らしい世界なんだ…っ!

ならば、働かず好きなことだけして生きていけばいいじゃないか!


「じゃあお金なんていらねぇじゃん。なくても生活できるんだからさ」


「あくまで、『最低限の生活』だ。生きるだけが目的なら、それでもいいだろう。だけど、ここには様々な夢や目標を持って生活している者がほとんどだ。おいしいものを食べたい、強くなりたい、綺麗な服を着たい、大きな家に住みたい、といったものだな」


「そうか、そういったプラスアルファの部分でお金が必要だから、みんなお金稼ぐのか」


「そういうことだ」


なかなか面白い作りにしたもんだ。

人間社会では、生きるためにお金を稼がなければならなかった。

そしてその稼いだお金で生きていくのが精いっぱいだった。

だけど、ここでは違う。


『生きるため』ではなくて、『夢を叶えるため』にお金を稼ぐ。


どうやって生きていこう、と考えなくてもいいのだ。



「ミィは叶えたい夢があるのか?」


俺がミィに聞くと、彼女は「あぁ」と軽くうなずき、たたっと駆け出した。

「あ、ミィ!」


彼女が向かう先には、1軒の小屋が立っていた。

コテージのような二階建ての木造の小屋。

控えめな赤茶色の三角屋根に、入り口には広いテラス。

その小屋を覆うように、背の高い木々が青々とした葉を広げている。



その小屋の前で立ち止まり、ミィは振り返った。

そして、



「これが、私の夢だ、マコト」



目を輝かせ、満面の笑みで、希望にあふれる声で告げた。



「私の夢は、世界一のカフェを経営することだ」



世界一のカフェを経営する―――。


それが、ミィがこの世界で叶えたい夢。


「そのためには、人間の力が必要なんだ。マコト、君の知恵を貸して欲しい。一緒にカフェを経営して欲しいんだ!」


「世界一のカフェ、ね。ハハ、かなり大きく出たな」


「目指すところは高い方がいいだろう?」


「そうだな。そういう野心を持つ奴、俺は大好きだ」


いい夢だ。

俺も、その夢に乗っからせてもらおうか!


「よし、わかった!俺の力がどこまで手助けできるかはわからないが、全力で力になるよ。目指すは、世界一、だな!」


俺の言葉に、ミィはさらに笑顔になった。

あぁ、なんて魅力的な笑顔なんだ。


「ありがとう、マコト!」


ミィの隣に立ち、カフェとなるその小屋を見つめた。


どんな素敵なカフェにしようか、考えを巡らせながら。






「さて、マコト。中に入ろっか」

ミィは、小屋のドアをあけ、中へと入っていった。

俺もそれに続く。


中へ入ると、奥に一人の少女の後ろ姿が見えた。


ミディアムヘアで、髪色は明るい黄色。

身長はミィよりも少し小さいくらい。



「ただいまー!」


ミィが声をかけると、その少女はこちらを振り返った。


大きなグレーの瞳、縦に長いスリット状の細い瞳孔。

そして頬はイボイボの肌。


「……っ!」

俺は息をのんだ。


もしかして……、


「ミィちゃん、おかえ……」


視界に入ったのがミィだけでないことに気づき、少女は言葉を切った。


俺の姿を見た彼女は、首を少しだけ右に傾けて、俺の瞳を見つめる。


そのしぐさに、俺は心臓が跳ねるのを感じた。


そのしぐさ、間違いない……。



俺は、その少女の名を呼んだ。



「ティフィン……?」




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