れぷたいるず!~転生先の異世界は爬虫類がヒト化した世界でした~

桜蛇あねり

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第一章 ティタノボアの箱庭世界

10.街の様子

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俺は、ミィとティフィンに連れられ、再びミナミの中心街へと足を踏み入れた。

夕日が街をオレンジ色に照らしている。

そんなオレンジ色の街は、先ほど見た時よりも多くの爬虫類でにぎわっていた。


「この時間は人が…いや、爬虫類が多いんだな」


俺はきょろきょろと周りを見渡す。

大きさも髪色も肌の感じも、様々な爬虫類たちが行き交っている。

彼らは周りと言語を交わし、コミュニケーションをとりながら楽しそうに笑い合っていた。


「そうだね、この世界で一番メインのイベントが夜にあるからね」


俺の右を歩きながら、ティフィンは言った。

「イベント?」

「そう。特に今夜はちょっと大きめのがあるんだよ」

「ほぉ?ちょっと大きめのイベント、ねぇ?なんだよ、それは」

「えっとね、」

俺が聞き出そうとしたとき、




「んだよ、っざけんじゃねぇよ!」




背後から大きな怒号が聞こえた。

俺たちは立ち止まり、声の方を振り返る。


街の広場のような場所で、2匹の爬虫類がにらみ合っていた。


片方は、大きな体躯に茶色の短髪、頬には小さな鱗が並んでいる、オスの爬虫類。
おそらくトカゲ……体の大きさがもとの爬虫類に比例するというのであれば、モニター(オオトカゲ)の類だろうか。

表情には怒りが浮かんでいて、先ほどの怒号は、彼から発せられたものだろう。


もう一方には、灰色の髪に、スリット状の瞳孔の瞳を持っている、こちらもオスの爬虫類。
頬のイボイボから見て、こちらはヤモリだろうな。

こちらは、冷静な様子で、相手をじっと見つめていた。

「150ゴールドで買うっていう約束だろうが。とっとと150ゴールド出せ!」

「いやいや、何をいってるのかな?ここまで傷物だとは思わなかった。この傷を差し引いたら50ゴールドがいいところだろ。50ゴールドで買うよ」

2匹は、何やらブローチのようなものをめぐっていい争いをしているようだ。

「何と言おうと、僕は50ゴールド以上は出さないよ」

「てんめぇ……!」

モニターっぽい彼が、右手にナイフを出現させた。

それを見て、ヤモリっぽい方も、両手を前へ出して、戦闘態勢をとる。


「お、おい、なんか喧嘩が始まりそうだぞ!?止めないと!」


こんな往来で戦闘なんてしたら、いろいろと被害が出てしまうはずだ。

それに、暴力では何も解決しない。話し合えば、きっと…!


止めようと走り出そうとした俺を、

「マコト、ストップ」

ミィが腕をつかんで制した。


「ちょ、だってあれ、今すぐにでも戦闘になるよ!?」


「いいんだ、あれで」


「え?」


俺があっけにとられている目の前で、2匹の周りにいた爬虫類たちは皆、後ろに下がり、彼らから距離をとった。

そのまま、まるで2匹の戦闘を観劇するかのように、面白そうに眺めている。


大勢の好機の目線の中、2匹は動き出した。


「くらえぇぇっ!」

「はあっ!」


モニターが、怒りに任せてナイフを振り下ろす。

ヤモリは瞬時に砂の壁を展開し、その一撃を受け止めた。


荒々しい戦闘が繰り広げられた。


「マコト」


2匹の戦闘を唖然として見つめる俺に、ミィが話しかけた。

俺ははっとして、ミィの方を見る。


「私とマコトが出会った時もそうだっただろう?この世界では、強い者が全て。何事にも、もめたら強さで決める」


あぁ、そう言えば、と俺はミィと出会った時を思い出した。

あの時も、俺を巡ってニホンカナヘビの少年と戦闘を繰り広げていたな。

それは、こういう日常でも繰り広げられる掟、ということか…。




「ここでは、こういう戦闘は日常茶飯事だよ。誰もが、自分の強さに誇りを持ってて、それを示したいって思ってるんだ」

横から俺の顔を覗き込みながら、ティフィンが楽しそうに言う。

ふと、そのティフィンの瞳に、鋭い光が宿ったような気がした。


「ん…?ティフィン…?」


「さぁて、ぬし!とりあえずわたし達は街の探索に行こっ!」


「え、あ、あぁ…」


今のは何だったのだろうか。

どこかで見たことのある、ティフィンのあのまなざし。



あのまなざしが何を意味していたのか―――

それを俺が知るのは、少し先の未来のことだった。


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