れぷたいるず!~転生先の異世界は爬虫類がヒト化した世界でした~

桜蛇あねり

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第一章 ティタノボアの箱庭世界

12.プライドをかけたバトル

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開始と同時に動いたのはトランだった。

姿勢を低くした状態で、走り出す。

走りながら、トランの身体がみるみる変化していった。

細身の身体にあった筋肉が盛り上がり、たくましい大きな体躯へと形を変える。

口からは大きな牙が覗き、手足には鋭い爪が現れた。

体中に、黄色と黒のストライプ模様の体毛が浮かび上がる。

その姿は、虎と人間が合わさったような―――虎の獣人、と呼ぶにふさわしいものだった。


「がああああっ!」


大地を震わせるような雄たけびとともに、ライメイへ突っ込んでいくトラン。

誰もが恐怖で動けなくなってしまいそうな勢いの中、ライメイは冷静に相手を見据え、右手の掌を相手へとむけた。

雷鳴サンダー

ライメイの掌から迸る雷光が、空気を裂いてトランへと襲い掛かる。

目にもとまらぬ光の速さで向かってくるその雷撃を、トランは身体を右に傾けてやり過ごした。

全てを避けきることはできず、トランの頬に一筋の切り傷が刻まれた。

だが、彼はそんな傷をものともせず、突っ込んでくる。

トランとライメイの距離が縮まった。

ライメイは後ずさるようなそぶりを見せたが、トランの攻撃の方が速かった。

「らあっ!」

鋭い爪を振るう。

「ぐっ……!」

その爪は、ライメイの左肩の肉を深くえぐった。

猛獣に襲われたような、3本の爪痕がくっきりと刻まれ、そこから赤い血が噴き出した。


ライメイはとっさに後ろへ飛び、

雷鳴サンダー!!」

すぐさま反撃する。

大振りな攻撃のあとで、反応が遅れたトランの腹部に、雷撃が槍のように刺さった。

「…っ!」

痺れるような痛みに顔をゆがめるトラン。

そして、その一瞬の隙をライメイは逃さなかった。

両手を横に広げ、叫んだ。

「轟け!響け!黒雷鳴ブラックサンダー!!」

その刹那、フィールドを無数の黒い稲妻が降り注いだ。

雷が落ちるときの轟音が、コロシアム中に響き渡り、会場は大きく振動する。


「あっは!アガってきたぁ…!」


その様子に、ライメイは落雷の中で気持ちよさそうに笑った。

そんな余裕そうな彼とは対照的に、トランは必死に落雷を見極め、避けている。

それでも、全てを避けきることはできず、黒い一撃を、もろに背中に喰らってしまった。


「あ……が……っ!」


刺すような痛みとともに、痺れる電流が身体を巡っていく。

うまく身体を動かすことができない。


「ちっ……麻痺……が……」


無理やり身体を動かして、まだ続く稲妻の連撃をすんでのところで躱していった。

「さすがだなぁ。この一撃を喰らっても動けるなんてなぁ」

「は……こんな一撃で倒れるほど、やわじゃないんでね」

強がるトランに、ライメイは稲妻の攻撃をやめることなく、近づいていく。


「ま、でもこれでおわりだ」


広げていた両手を目の前に持ってきて、その掌をトランへと向けた。


「最期だ。痺れろ、サンダー……」


大技を放とうとした瞬間、トランが動いた。

「……まだ、終わらせねぇ…!」

痺れた身体を、勝利への執念が無理やり動かす。

脚に残った力を振り絞り、ライメイの懐へ飛び込んだ。

「っ!?」

ふいをつかれて息をのむライメイの首元に、大きな牙を突き立てる。

一瞬の出来事だった。

ライメイの首から鮮血が宙を舞う。

「油断したな、ライメイ」

トランは痺れる身体に顔を歪ませながらも、なんとか顎に力を入れて牙をさらに深く差していく。


「………」


ライメイは気の遠くなるような激痛に襲われながらも、倒れなかった。

脚に力を入れ、トランの身体を支えるように、両手を彼の背に回した。

「?な、なにを…」


逃げることのできないトランの背中に掌をしっかりと当てる。そして、

雷撃サンダーボルト


その状態で、雷撃を放った。


トランの身体を凄まじい威力の電流が駆け回った。


「がああああっ!」


絶叫を残し、トランは後ろに倒れる。

電流が残っているのか、何度か痙攣していた。


「っぶねぇ。麻痺らせてなかったら首持ってかれてたかもな」


出血のとまらない首を抑えながら、ライメイはトランの様子をうかがう。


電流による痙攣が起こっているものの、もう意識はないようだった。


能力が解除され、ヒトとしての姿で―――トランは息絶えていた。




「決まったァァァァ!!勝負ありっ!!勝ったのは、『UROBOROSU』のライメイだァァァァ!!」



司会者の声が響き渡り、会場はさらに大きな歓声に包まれる。

俺の周りも、立ち上がって騒ぐ観客で埋め尽くされていた。

だが、俺だけは座ったまま、声を上げることなく、唖然としてバトル場を見つめていた。

目の前で繰り広げられる光景に、あり得ない、と思いながら。


「お、おい、ちょっと待てよ……。あれ、死んでんだよ…な……?」

俺の喉から出た声は、震えていた。

「うん。死んでるよ」

隣で、ティフィンが冷静に答える。

「おいおいなんでだよ…。こんなこと…。ここでやってんのは殺し合いってことかよ…!」

「本気で闘える場所。命のやり取りをする場所。殺さなければ殺される場所。それがここ、コロシアムだよ」


ふと、ここに来る前にティタノボアに言われたことを思い出す。


『所定の場所以外での殺しを禁ず』


この世界での殺しは禁止されていた。

そのルールを破れば、この世界から追放されてしまう。

でも、それを聞いたとき、少し引っかかるな、と思っていた。



”所定の場所以外での”



つまり、殺しを許されている場所がある、ということ。

その場所が、ここ、コロシアムなのだ。



「そういう、ことかよ、あのデカ蛇……。なにが平和な世界、だよ…」


「ぬし、もしかして、ショック受けてる?」


血の気がひいていくような感覚に襲われている俺に、横からティフィンが顔を覗き込むようにして目を合わせてきた。

「だって、殺されてんだぞ。それを、こうやって娯楽にしてさ…」


「あはは!さすがぬし。ごめんね、ここまでショック受けるとは思わなくて」


「笑い事じゃないだろ、だって…!」


「ぬし」


大声を出しかけた俺の口を、ティフィンは優しく人差し指で制した。

あまりにも穏やかなそのしぐさに、俺は口をつぐむ。

「ぬし、ごめんね。でもあんまり否定的なことは、ここでは言わないで。周りの反感買っちゃうから。……今からこのコロシアムの一番の特徴を説明するから、聞いて」


ティフィンは指を俺の口から離し、そのまま指をバトル場へもっていった。

俺の視線は、それにつられてバトル場へ移動する。

その視線の先で、俺はまたもやあり得ないものを目にした。





傷だらけのライメイと、息絶えているトランの身体が一瞬にして消え去ったのだった。





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