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第一章 ティタノボアの箱庭世界
14.星空に誓う言葉
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全5戦を終え、熱狂のコロシアムは静かに幕を閉じた。
観客たちは、それぞれ余韻を胸に帰路につく。
あの後も、目を離せない激しいバトルが繰り広げられた。
強者であることを証明するために、選手たちは強力な能力を自在に操り、容赦なくぶつけ合った。
なによりも、選手たちが見せる、絶対に勝ってやるんだという勝利への貪欲な渇望に、俺は心惹かれた。
気迫に圧倒され、血が飛び交う戦場に恐怖しながらも……
それでも俺の胸を熱く揺さぶったのは、プライドをかけて全力でぶつかり合う彼らへの、興奮だった。
確かに最初は、殺し合いを娯楽とするこのイベントに、疑念と抵抗を抱いていた。
しかし、コロシアムにかけられている魔法の仕組みを知り、死の恐怖が待ち受けているにもかかわらず立ち向かっていく選手たちの姿を目の当たりにすると、その凛々しさに、心を奪われていた。
気づけば俺は、このコロシアムの魅力に、深く引き込まれていた。
---
ティフィンと共に外へ出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
店の明かりもほとんど消えており、寂しい静寂が街を包んでいる。
「遅くなったな…。んで、ティフィン。どっか寄っていくんだっけ?」
「うん!時間はかからないからさ。ちょっとついてきて欲しいの」
ティフィンは、無邪気な笑顔を浮かべながら、少し速足で道を歩いていく。
俺も、置いていかれないように彼女のあとを追った。
店が並ぶ街を抜け、カフェの道とは違う道をかけていく。
俺たちを照らしていた街の明かりが徐々になくなっていき、頭上に浮かぶ、満月になり切っていない大きな月あかりだけが頼りになってきた。
先ほどの石造りの道と違い、雑草の生えた土の道が続いている。
湿った土の匂いが感じられるようになってきた。
ティフィンはいったい、どこに向かっているのだろう。
「あ、ぬし、そろそろ明かりつけるから、ちょっと離れてて」
前を歩いていたティフィンが立ち止まり、俺の方を見ながらそんなことを言った。
「お、おう?」
明かりをつけるのに、離れる必要があるのか?
疑問に思いながらも、俺は素直に彼女の言葉に従った。
俺が数歩後ずさったのを確認して、ティフィンは目を閉じた。
すると、ばちっという何かが弾けるような小さな音がして、ティフィンの身体がほんのりと光を帯び始めた。
その光は少しずつ強くなっていき、足元を照らすライトのような明るさとなって、ティフィンと俺を包む。
足元と、少し先の道が見えるようになった。
「す、すげぇ…。これはティフィンの能力、なのか?」
俺は近づいてティフィンの身体を覗き込む。
彼女の身体の周りには、ぱちぱちと小さな電流が走っていた。
「わたしの能力は”帯電”。ぬし、触っちゃダメだよ、感電しちゃうから!」
そっと触れようと伸ばした手を俺は引っ込めた。
「だいぶコントロールできるようになったんだ!バトルで使うときは、もっともーっとすごいよ」
文字通りの眩しい笑顔で言うティフィン。
彼女の感情に呼応するかのように強くなった光に、俺は目を細めた。
「さ、ぬし。ここだよ。ここが、わたしのお気に入りの場所なの」
ティフィンの明かりを頼りに進んでいくと、河川敷のような場所に出た。
今いる道から、草の生えた下り坂があり、その先に小さな川が流れている。
今は夜だからあまりよく見えないが、昼だと川を流れる水が陽の光を反射してきらきらした、素晴らしい景色が広がっているのだろう。
ティフィンは、下り坂を少し進み、適当な場所で腰を下ろして座り込んだ。
俺もその隣に腰を下ろす。
そのまま空を見上げると、現世では見ることのできない、無数の星が輝く綺麗な星空が目に入った。
「おぉ……綺麗だな…」
もっとよく見たくて、俺はそのまま仰向けに倒れて、視界いっぱいに星空をおさめた。
頬を優しくなでる風も、ふわりと漂うみずみずしい草の匂いも、何もかもが気持ちいい。
星空に釘付けになっている俺の隣で、ティフィンも同じように仰向けに寝転がった。
そして、自身をまとっている明かりを消す。
今、俺たちを照らしているのは、目の前にある星の輝きと、月明かりだけになった。
「いい場所でしょ。よくここで考え事するの」
夜の静寂の中、ティフィンの声がよく聞こえた。
「考え事?」
「うん。この姿になったからさ、たくさん考え事できるようになったの」
暗くて表情は良く見えなかったが、きっと今、穏やかな表情でほほ笑んでいるんだろうなと、彼女の声から感じとれる。
「ヒトってすごいね。いろんなことを考えて、いろんなことを想って……いろんな夢を見ることができるんだね。ぬしに飼われてた時に比べてね、いろんな感情を知ることができたんだ」
「感情、かぁ。そうだよな、複雑な感情ってのは、人間特有のものだって。……それがいい事なのか悪い事なのかはわからないけど」
その感情ってやつに縛られるのが人間だ。
現世で50年も人間をやってきた身としては、それがよくわかる。
成長するにつれ、人間社会で暮らしていくにつれ、人間の悪い感情に晒されることが多くなり、それらにがんじがらめにされてしまう。
傲慢で、他者を見下してマウントを取り合ったり、孤独を感じて、誰にも必要とされていないと虚無に陥ったり、恋愛感情を持つことによって、嫉妬に狂ったり……。
いろんな醜い感情を、俺は見てきたし、自分の中にあるそれらの感情にも、嫌気がさしたときもあった。
「いらないよ、感情なんて……」
ボソッとつぶやいた俺の言葉が、彼女に届いていたかはわからないが、この静寂の中だったら、聞こえていたかもしれない。
そんな俺の言葉をもみ消すかのように、ティフィンは再び帯電した。
ぱあっと俺の隣に明かりがともる。
「感情って、すごいね!ぬし!」
「え…?」
さっきまで見えなかった表情が、今度はちゃんとよく見える。
文字通りの眩しい笑顔は、ずっとそのままだった。
「ミィちゃんと一緒に過ごして楽しいって、ぬしとまた会えて嬉しいって、そんな感情がね、わたしの身体を……んー、なんて言うんだろ……。満たしていく、って言うのかな?なんかそんな感じがしてね、それがね、ぬし、」
ティフィンは上半身を起こし、そのまま俺の方に身体を向けたまま、首を少し傾けて、笑った。
「幸せだなって。これが、幸せって感情なんだって!それが味わえるのが、すごいなって思うの!」
それは、無垢な笑顔だった。
現世で、俺が失いかけていた、無垢な感情だった。
俺の中の醜い感情が全て浄化されるような、そんな存在。
そうだ、この子は、この子たちは、現世でもそうだった。
すさんだ心で家に帰ったとき、家で待っているこの子たちのことを見たら、すさんだ心なんてすぐに浄化される。
俺も、あの空間では、幸せを感じることができていた。
幸せという感情―――。
「ふふ、やっぱり変わらないな、ティフィン」
俺がくすり、と笑うと、ティフィンは少し驚いた顔をした。
「な、なんで!?わたし、こんなに変わったじゃん!いろいろすごくなったんだからね!」
「あはは、そうだな、ごめんごめん」
俺も上半身を起こし、むきになるティフィンの頭をなで―――
バチッ!
「いった!?」
手に電流が走り、俺はすぐさま手を離す。
「ああちょっとぬし!言ったじゃん、感電するから触っちゃダメだよって!」
「そうだった……つい…」
強めの静電気をくらった程度の痛みだったので、それほどダメージはないが……ビックリした…。
いい雰囲気だったのに締まらない……。
軽い気まずさを感じている俺のことは全く気にすることもなく、ティフィンはその場に立ち上がった。
視線は星空を捉えている。
「あのね、ぬし。わたし、ここに来て、いろんな感情を知ってね。いろんな仲間たちと交流して、この街で暮らして、そしてコロシアムを見て……。夢ができたんだ」
「夢……」
俺の視線の先にいるティフィンの瞳には、夜空の星が映ってキラキラと輝いていた。
「夢だったんだけど、ぬしに出会えて、それが実現できるかもしれないって思って」
ティフィンは少しだけ歩いて、俺の隣から、坂を下って前へと移動する。
俺と距離をとったあと、くるりと振り返って身体を俺へと向けた。
「ぬし、わたしのお願い、聞いてくれる?」
ティフィンと目が合う。
彼女の瞳には、鋭い光が宿っている。
今日、街中を歩いていた時にみた、ティフィンのあのまなざし。
どこかで見たことがあると思っていたが、今はっきりと思い出した。
現世で一緒に暮らしていた時、敵の存在しない空間で、一瞬彼女たちが野生に戻る瞬間、というのがあった。
ご飯をあげるとき、目の間に現れたコオロギを確実にとらえるためにみせる、ハンターのようなまなざし。
この子たちが捕食者であることを実感させられる、あの瞬間だ。
目の前でティフィンは、人差し指を星空へと突き上げた。
無数の星が輝く夜空の下、その輝きに負けない光を発しながら、ティフィンはしっかりと告げた。
「このわたしを、世界最強の爬虫類にしてほしい!!」
瞳に強さへの貪欲な渇望を宿し、身体にはその決意を電流としてまとわせる彼女は、コロシアムで見た参加者と同じ熱気をはらんでいた。
それは、死への恐怖すらも凌駕する、強い欲望。
俺を今までにない興奮へといざなった、プライド高きコロシアムの参加者と同じ決意。
あの弱肉強食の世界に、俺も飛び込めるのか。
ティフィンとともに。
「一緒にコロシアムに出よう、ぬし」
そう言い放ったティフィンに、
「あぁ……!俺と一緒に最強を目指そうか、ティフィン!」
俺も力強くうなずいた。
今の俺の瞳にも、彼女と同じものが宿っていると感じながら―――。
観客たちは、それぞれ余韻を胸に帰路につく。
あの後も、目を離せない激しいバトルが繰り広げられた。
強者であることを証明するために、選手たちは強力な能力を自在に操り、容赦なくぶつけ合った。
なによりも、選手たちが見せる、絶対に勝ってやるんだという勝利への貪欲な渇望に、俺は心惹かれた。
気迫に圧倒され、血が飛び交う戦場に恐怖しながらも……
それでも俺の胸を熱く揺さぶったのは、プライドをかけて全力でぶつかり合う彼らへの、興奮だった。
確かに最初は、殺し合いを娯楽とするこのイベントに、疑念と抵抗を抱いていた。
しかし、コロシアムにかけられている魔法の仕組みを知り、死の恐怖が待ち受けているにもかかわらず立ち向かっていく選手たちの姿を目の当たりにすると、その凛々しさに、心を奪われていた。
気づけば俺は、このコロシアムの魅力に、深く引き込まれていた。
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ティフィンと共に外へ出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
店の明かりもほとんど消えており、寂しい静寂が街を包んでいる。
「遅くなったな…。んで、ティフィン。どっか寄っていくんだっけ?」
「うん!時間はかからないからさ。ちょっとついてきて欲しいの」
ティフィンは、無邪気な笑顔を浮かべながら、少し速足で道を歩いていく。
俺も、置いていかれないように彼女のあとを追った。
店が並ぶ街を抜け、カフェの道とは違う道をかけていく。
俺たちを照らしていた街の明かりが徐々になくなっていき、頭上に浮かぶ、満月になり切っていない大きな月あかりだけが頼りになってきた。
先ほどの石造りの道と違い、雑草の生えた土の道が続いている。
湿った土の匂いが感じられるようになってきた。
ティフィンはいったい、どこに向かっているのだろう。
「あ、ぬし、そろそろ明かりつけるから、ちょっと離れてて」
前を歩いていたティフィンが立ち止まり、俺の方を見ながらそんなことを言った。
「お、おう?」
明かりをつけるのに、離れる必要があるのか?
疑問に思いながらも、俺は素直に彼女の言葉に従った。
俺が数歩後ずさったのを確認して、ティフィンは目を閉じた。
すると、ばちっという何かが弾けるような小さな音がして、ティフィンの身体がほんのりと光を帯び始めた。
その光は少しずつ強くなっていき、足元を照らすライトのような明るさとなって、ティフィンと俺を包む。
足元と、少し先の道が見えるようになった。
「す、すげぇ…。これはティフィンの能力、なのか?」
俺は近づいてティフィンの身体を覗き込む。
彼女の身体の周りには、ぱちぱちと小さな電流が走っていた。
「わたしの能力は”帯電”。ぬし、触っちゃダメだよ、感電しちゃうから!」
そっと触れようと伸ばした手を俺は引っ込めた。
「だいぶコントロールできるようになったんだ!バトルで使うときは、もっともーっとすごいよ」
文字通りの眩しい笑顔で言うティフィン。
彼女の感情に呼応するかのように強くなった光に、俺は目を細めた。
「さ、ぬし。ここだよ。ここが、わたしのお気に入りの場所なの」
ティフィンの明かりを頼りに進んでいくと、河川敷のような場所に出た。
今いる道から、草の生えた下り坂があり、その先に小さな川が流れている。
今は夜だからあまりよく見えないが、昼だと川を流れる水が陽の光を反射してきらきらした、素晴らしい景色が広がっているのだろう。
ティフィンは、下り坂を少し進み、適当な場所で腰を下ろして座り込んだ。
俺もその隣に腰を下ろす。
そのまま空を見上げると、現世では見ることのできない、無数の星が輝く綺麗な星空が目に入った。
「おぉ……綺麗だな…」
もっとよく見たくて、俺はそのまま仰向けに倒れて、視界いっぱいに星空をおさめた。
頬を優しくなでる風も、ふわりと漂うみずみずしい草の匂いも、何もかもが気持ちいい。
星空に釘付けになっている俺の隣で、ティフィンも同じように仰向けに寝転がった。
そして、自身をまとっている明かりを消す。
今、俺たちを照らしているのは、目の前にある星の輝きと、月明かりだけになった。
「いい場所でしょ。よくここで考え事するの」
夜の静寂の中、ティフィンの声がよく聞こえた。
「考え事?」
「うん。この姿になったからさ、たくさん考え事できるようになったの」
暗くて表情は良く見えなかったが、きっと今、穏やかな表情でほほ笑んでいるんだろうなと、彼女の声から感じとれる。
「ヒトってすごいね。いろんなことを考えて、いろんなことを想って……いろんな夢を見ることができるんだね。ぬしに飼われてた時に比べてね、いろんな感情を知ることができたんだ」
「感情、かぁ。そうだよな、複雑な感情ってのは、人間特有のものだって。……それがいい事なのか悪い事なのかはわからないけど」
その感情ってやつに縛られるのが人間だ。
現世で50年も人間をやってきた身としては、それがよくわかる。
成長するにつれ、人間社会で暮らしていくにつれ、人間の悪い感情に晒されることが多くなり、それらにがんじがらめにされてしまう。
傲慢で、他者を見下してマウントを取り合ったり、孤独を感じて、誰にも必要とされていないと虚無に陥ったり、恋愛感情を持つことによって、嫉妬に狂ったり……。
いろんな醜い感情を、俺は見てきたし、自分の中にあるそれらの感情にも、嫌気がさしたときもあった。
「いらないよ、感情なんて……」
ボソッとつぶやいた俺の言葉が、彼女に届いていたかはわからないが、この静寂の中だったら、聞こえていたかもしれない。
そんな俺の言葉をもみ消すかのように、ティフィンは再び帯電した。
ぱあっと俺の隣に明かりがともる。
「感情って、すごいね!ぬし!」
「え…?」
さっきまで見えなかった表情が、今度はちゃんとよく見える。
文字通りの眩しい笑顔は、ずっとそのままだった。
「ミィちゃんと一緒に過ごして楽しいって、ぬしとまた会えて嬉しいって、そんな感情がね、わたしの身体を……んー、なんて言うんだろ……。満たしていく、って言うのかな?なんかそんな感じがしてね、それがね、ぬし、」
ティフィンは上半身を起こし、そのまま俺の方に身体を向けたまま、首を少し傾けて、笑った。
「幸せだなって。これが、幸せって感情なんだって!それが味わえるのが、すごいなって思うの!」
それは、無垢な笑顔だった。
現世で、俺が失いかけていた、無垢な感情だった。
俺の中の醜い感情が全て浄化されるような、そんな存在。
そうだ、この子は、この子たちは、現世でもそうだった。
すさんだ心で家に帰ったとき、家で待っているこの子たちのことを見たら、すさんだ心なんてすぐに浄化される。
俺も、あの空間では、幸せを感じることができていた。
幸せという感情―――。
「ふふ、やっぱり変わらないな、ティフィン」
俺がくすり、と笑うと、ティフィンは少し驚いた顔をした。
「な、なんで!?わたし、こんなに変わったじゃん!いろいろすごくなったんだからね!」
「あはは、そうだな、ごめんごめん」
俺も上半身を起こし、むきになるティフィンの頭をなで―――
バチッ!
「いった!?」
手に電流が走り、俺はすぐさま手を離す。
「ああちょっとぬし!言ったじゃん、感電するから触っちゃダメだよって!」
「そうだった……つい…」
強めの静電気をくらった程度の痛みだったので、それほどダメージはないが……ビックリした…。
いい雰囲気だったのに締まらない……。
軽い気まずさを感じている俺のことは全く気にすることもなく、ティフィンはその場に立ち上がった。
視線は星空を捉えている。
「あのね、ぬし。わたし、ここに来て、いろんな感情を知ってね。いろんな仲間たちと交流して、この街で暮らして、そしてコロシアムを見て……。夢ができたんだ」
「夢……」
俺の視線の先にいるティフィンの瞳には、夜空の星が映ってキラキラと輝いていた。
「夢だったんだけど、ぬしに出会えて、それが実現できるかもしれないって思って」
ティフィンは少しだけ歩いて、俺の隣から、坂を下って前へと移動する。
俺と距離をとったあと、くるりと振り返って身体を俺へと向けた。
「ぬし、わたしのお願い、聞いてくれる?」
ティフィンと目が合う。
彼女の瞳には、鋭い光が宿っている。
今日、街中を歩いていた時にみた、ティフィンのあのまなざし。
どこかで見たことがあると思っていたが、今はっきりと思い出した。
現世で一緒に暮らしていた時、敵の存在しない空間で、一瞬彼女たちが野生に戻る瞬間、というのがあった。
ご飯をあげるとき、目の間に現れたコオロギを確実にとらえるためにみせる、ハンターのようなまなざし。
この子たちが捕食者であることを実感させられる、あの瞬間だ。
目の前でティフィンは、人差し指を星空へと突き上げた。
無数の星が輝く夜空の下、その輝きに負けない光を発しながら、ティフィンはしっかりと告げた。
「このわたしを、世界最強の爬虫類にしてほしい!!」
瞳に強さへの貪欲な渇望を宿し、身体にはその決意を電流としてまとわせる彼女は、コロシアムで見た参加者と同じ熱気をはらんでいた。
それは、死への恐怖すらも凌駕する、強い欲望。
俺を今までにない興奮へといざなった、プライド高きコロシアムの参加者と同じ決意。
あの弱肉強食の世界に、俺も飛び込めるのか。
ティフィンとともに。
「一緒にコロシアムに出よう、ぬし」
そう言い放ったティフィンに、
「あぁ……!俺と一緒に最強を目指そうか、ティフィン!」
俺も力強くうなずいた。
今の俺の瞳にも、彼女と同じものが宿っていると感じながら―――。
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