れぷたいるず!~転生先の異世界は爬虫類がヒト化した世界でした~

桜蛇あねり

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第一章 ティタノボアの箱庭世界

17.カフェ「れぷたいるず!」

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俺は夜の河川敷に立っていた。

頭上では無数の星が輝いている。

……あれ、なんで俺、ここにいるんだっけ?

何も聞こえない静寂の中で考えを巡らせていると、俺の横を黄色い影が通り過ぎていった。

ん?あれは……。

すぐさま横を見ると、そこにはキリっとした表情のティフィンがいた。

彼女の視線は俺を捉えておらず、まっすぐ前を見つめている。

「ティフィ……」

俺が声をかけようとすると、

「わたしは、世界最強の爬虫類になるの!」

突然、ティフィンの大声が静寂を打ち破った。

俺は思わず肩を震わせる。

っていうか、ティフィン、君はどこを見て言っているんだ?

俺はここにいるぞ。

すると、いつからいたのか、ティフィンと対峙する形でミィが立っていた。

ミィはファイアベリーや稲妻パイン、魔キャベツなどの多くの食材をかかえている。

「ティフィン、最強になりたいのなら、私からこの食材を奪ってみろ!」

ミィの凛としたその声を皮切りに、2匹は跳躍した。

ティフィンの帯電と、ミィのリボンが激しく衝突する。

バチバチと、互いの能力が交わる音が弾けた。


次の瞬間、場所が変わっていた。


河川敷ではなく、コロシアムのバトル場。

ティフィンとミィが闘っている周りには、多くの観客が歓声をあげていた。

………いや待て。

今、ティフィンと闘っているのはミィじゃない。


変わったのは場所だけじゃなかった。

ティフィンと闘っている相手もまた、変わっていたのだ。

あれは……あの稲妻は……。

雷撃サンダーボルト!」

コロシアムで見た、ライメイが技を放った。

その攻撃に、ティフィンは避けることなく突っ込んでいく。

電気と雷が衝突し、大きな衝撃波となり―――

なぜか俺に向かって飛んできた。

あ、あ………、




「うわあああああああっ!!!!」



叫び声をあげながら、俺はソファ席から転げ落ちた。

どしん、と鈍い音がして、打ち付けた身体に痛みが走る。

その痛みが、先ほど見ていたのが夢で、今いるここが現実であることを俺に教えてくれた。


「ぬし、大丈夫!?」


音を聞きつけて、ティフィンがやってくる。

その後ろから、ミィも心配そうに顔を覗かせていた。


「あー、なんかすごい夢を見てた」

「夢?」

「まぁ、とりあえず悪い夢じゃなかったし、大丈夫だ。心配すんな」

俺が笑いかけると、2匹はほっとしたような表情を見せた。

「ぬし、ごめんね。わたしの電気で気絶させちゃって」

「私も、止めればよかったのだが……。悪い、マコト」

先ほどまで凄まじいほどの戦闘を繰り広げていたティフィンとミィは、しょんぼりと大人しくなっている。


「いや、ミィとティフィンを止めようとした俺が悪かったんだ。この世界はそういう世界なんだから、止めるべきじゃなかったなって、今になって思うよ……」

この世界のルールを思い出し、止めようとしたことを後悔した。

2匹が争っている時、険悪な雰囲気は全くなく、むしろミィもティフィンも闘っていることが楽しい、と言わんばかりの活き活きとした表情をしていた。


闘うことが、生きがいとなっているような。


「あ……」

ふと俺は思いついた。

夢の中で、食材を抱えたミィと、世界最強の爬虫類になりたいと豪語したティフィンが対峙していた様子を思い浮かべる。

この世界に来た俺に、この2匹は各々が思い描く夢を語ってくれた。

ミィは、世界一のカフェを。

ティフィンは、世界最強を。

この二つをうまく掛け合わせて、同時に夢に向かっていける場所を作れたのなら。







バトルカフェ。







客が闘ってみたいスタッフを指名し、カフェの空きスペースや店外でバトルをする。

能力を上げる食べ物や飲み物の効果を、バトルで試してもらうのもいいかもしれない。

もちろん、ひどいケガのないように配慮したり、ルールの設定等をする必要は出てくるだろうが、これほどこの世界にピッタリのカフェはないんじゃないか。



「これだ!これにしよう!!」


バッと俺はソファから勢いよく立ち上がった。

急な俺の行動に、ミィとティフィンが目を丸くする。

「マコト、どうした急に」

「ぬし?」



「バトルカフェをやるんだ。バトルができるカフェ!バトルが生きがいの、この世界の爬虫類たちのために!」


「バトル……」

「カフェ……?」

ティフィンとミィは交互にそのワードを口にした。

少し考えた後、先に反応したのはティフィンの方だった。

「バトルカフェ!それ、すっごくいいよ!ぬし!賛成っ!」

遅れて、ミィも

「なるほど!その発想はいいな、マコト!私も賛成だ!」

賛成の意をとなえた。

よし、カフェのコンセプトさえ決まってしまえば、あとはそれに合わせた準備をしていくだけだ。

あと、決めるべきは……

「カフェの名前をどうするか、だな」

そう、このカフェの名前。看板となる部分だ。

どんなものにしようか、と考えを巡らす前に、ミィが手をあげた。

「マコト。カフェの名前なんだが。私が現世にいた時のカフェの名前を継ぎたいんだ」

「あぁ、ミィがいたっていう爬虫類カフェの?」

「あのカフェでの生活は楽しかったからな。他に名前の候補がないようだったら、その名前にしてほしい」

はにかみながら言うミィ。

この子にとって、その爬虫類カフェはとても居心地がよかったのだろう。

そのカフェの店員さんがどれだけ愛情をそそいで、爬虫類たちを育てていたのがわかる。

「わかった。このカフェはミィの夢なんだから、ミィの付ける名前にしよう」

「ありがとう、マコト!」

「じゃあミィ、このカフェの名前を教えてくれ」


俺とティフィンの輝く視線を受けながら、ミィは笑みを浮かべて、このカフェの名を告げた。



「カフェ『れぷたいるず!』だ!!」






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