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第一章 ティタノボアの箱庭世界
1.それは至福にして最高な最期
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高川 誠、50歳。
今俺は、我が最高の人生を、最高の形で終わらせようとしていた。
「おい!ワニに襲われてるぞ!」
「そこの人!大丈夫か!今助けるからな!」
周りがなんだか騒がしいが、異国(たぶんマダガスカル語。ここ、マダガスカルだし)の言葉だから俺には分からない。
でも何となく、俺を助けようとしているのが伝わってきた。
だから俺は叫んだ。
伝わらないとはわかっていても、日本語で、強い意志を持って叫んだ。
「助けるなァァァァ!!!俺はこのまま!!!ワニ様の栄養となって息絶えていきたいんだァァァァァ!!!!!」
その瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
どうやら完全に飲み込まれたらしい。
あぁ、なんと素晴らしき最期なのだろう。
爬虫類の中で1番憧れていたワニ様に俺を召し上がってもらって死ねるとは。
爬虫類愛好家として、これほどに最高な終わり方があるのだろうか。いや、ない!
25年前に爬虫類の魅力にとりつかれ、それまでずっと爬虫類を愛してきた。
トカゲ、ヤモリ、ヘビ、カメ.........そして、ワニ。
ヤモリとヘビは一緒に暮らしてきたし、トカゲやカメも触れる機会が多かった。
しかし、ワニだけは触れるどころか見る機会も少なく、ずっとずっと憧れの存在だった。
ずっとずっと触れてみたい、抱きしめてみたい、噛まれたい、食われたいと思っていた。
それが!!今日!!叶ったのだ!!!
ワニから与えられるこの身体を貫かれるような(実際に貫かれている)痛みですら、俺にとっては甘美な快楽でしかない。
ズキリ、と脳髄まで劈くような鋭利な激痛に思考がすべて奪われていく。
そう、俺は今、このワニによって与えられる激痛しか感じることを許されない。
満たされていく、この身体が、思考が、感情が……ワニの激痛によって。
脳が焼き切れてしまいそうな激しい刺激に、俺は身も心もゆだね、快楽に溺れていく。
あぁ......ダメだ...それ以上は......我慢できない........っ!!
もう......ムリ......っ!
い......逝く........っ!!!
俺は、強すぎるその快楽に、それまで少しでもこの快楽を享受しようとわしづかみにしていた意識を手放した―――。
「いや、あんたの場合、”爬虫類愛好家”じゃなくて”爬虫類狂愛者”だからね!?それもかなり異常なまでの!!」
どこからかツッコむ声が聞こえた。
少し低めの鋭い女性の声……。
俺はその声に、そっと目を開ける。
「……っ!まぶしっ!なんだ、ここ!?」
俺の眼前に広がるのは、ただひたすらに真っ白な空間だった。
上下左右、すべて真っ白で、空も壁も地面もない。
地面がないことを認めると、俺はふわふわと浮遊していることに気づいた。
……あれ?
もう一つ、この異常な空間で俺は気づく。
「身体が……若返ってる!?」
確か俺は、50年という現代社会を生きる日本人にしては短い生涯を、ワニに喰われて終わる、という至福にして最高の最期を迎えたはずだ。
一緒に暮らしていた爬虫類たちが、天寿を全うしたのを見届けた後、行き場を無くした爬虫類愛をどこに捧げようかと考えた挙句、一番憧れているワニに会いに行ってそこですべてを捧げよう、と決意し、文字通りすべてを捧げてきた。
その瞬間、俺は50歳だった。
腕が上がらなくなってきたり、疲れやすくなってきたり、老眼に悩まされる日々を送っている50歳独身男性だったはずなのだが……。
「今のあんたは、25歳の頃に戻ってるわ」
俺が自分のしわやしみのない身体をまじまじと見つめていると、先ほどの女性の声がどこからともなく聞こえてきた。
「え!?25歳!?……っていうか、誰!?どこにいんの?」
周りを見渡しても、誰もいない。
「よし、片づけ終わったし、こっち呼ぶかぁ。いいよ、私の世界へ入っておいで」
「え?世界って……う、うわああああああっ!?」
突然、俺の身体はものすごい勢いで落下し始めた。
体感1分くらいの激しい浮遊感に襲われた後……
「ぁぁぁぁああああああああっ!んがっ!?」
どさっ、と俺は地面に叩きつけられた。
しかし、勢いよく叩きつけられたものの、痛みは感じない。
「なんなんだよ……ったく…浮いたり落ちたり……」
ぶつぶつと訳のわからないこの状況に悪態をつきつつ、俺は立ち上がる。
そこは、ジャングルのような空間だった。
巨大な樹木が生い茂り、踏みしめている地面は少し湿っていた。
少し先には、湖のようなものも見える。
そして、その空間の中、俺の目の前に一人の女性が立っていた。
2メートルは越えていそうなほどに巨大な女性。
すらっとした細い身体、腰までまっすぐに伸びているダークグリーンの髪、猫の目を想起させるような縦長に細い瞳孔をたたえた黄金の瞳、そして頬のあたりを覆っている、蛇の鱗。
その人と蛇の間のような姿をした彼女は、にやりと笑い、俺に告げた。
「ようこそ。高川 誠。あなたを、私の箱庭世界に招待するわ」
今俺は、我が最高の人生を、最高の形で終わらせようとしていた。
「おい!ワニに襲われてるぞ!」
「そこの人!大丈夫か!今助けるからな!」
周りがなんだか騒がしいが、異国(たぶんマダガスカル語。ここ、マダガスカルだし)の言葉だから俺には分からない。
でも何となく、俺を助けようとしているのが伝わってきた。
だから俺は叫んだ。
伝わらないとはわかっていても、日本語で、強い意志を持って叫んだ。
「助けるなァァァァ!!!俺はこのまま!!!ワニ様の栄養となって息絶えていきたいんだァァァァァ!!!!!」
その瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
どうやら完全に飲み込まれたらしい。
あぁ、なんと素晴らしき最期なのだろう。
爬虫類の中で1番憧れていたワニ様に俺を召し上がってもらって死ねるとは。
爬虫類愛好家として、これほどに最高な終わり方があるのだろうか。いや、ない!
25年前に爬虫類の魅力にとりつかれ、それまでずっと爬虫類を愛してきた。
トカゲ、ヤモリ、ヘビ、カメ.........そして、ワニ。
ヤモリとヘビは一緒に暮らしてきたし、トカゲやカメも触れる機会が多かった。
しかし、ワニだけは触れるどころか見る機会も少なく、ずっとずっと憧れの存在だった。
ずっとずっと触れてみたい、抱きしめてみたい、噛まれたい、食われたいと思っていた。
それが!!今日!!叶ったのだ!!!
ワニから与えられるこの身体を貫かれるような(実際に貫かれている)痛みですら、俺にとっては甘美な快楽でしかない。
ズキリ、と脳髄まで劈くような鋭利な激痛に思考がすべて奪われていく。
そう、俺は今、このワニによって与えられる激痛しか感じることを許されない。
満たされていく、この身体が、思考が、感情が……ワニの激痛によって。
脳が焼き切れてしまいそうな激しい刺激に、俺は身も心もゆだね、快楽に溺れていく。
あぁ......ダメだ...それ以上は......我慢できない........っ!!
もう......ムリ......っ!
い......逝く........っ!!!
俺は、強すぎるその快楽に、それまで少しでもこの快楽を享受しようとわしづかみにしていた意識を手放した―――。
「いや、あんたの場合、”爬虫類愛好家”じゃなくて”爬虫類狂愛者”だからね!?それもかなり異常なまでの!!」
どこからかツッコむ声が聞こえた。
少し低めの鋭い女性の声……。
俺はその声に、そっと目を開ける。
「……っ!まぶしっ!なんだ、ここ!?」
俺の眼前に広がるのは、ただひたすらに真っ白な空間だった。
上下左右、すべて真っ白で、空も壁も地面もない。
地面がないことを認めると、俺はふわふわと浮遊していることに気づいた。
……あれ?
もう一つ、この異常な空間で俺は気づく。
「身体が……若返ってる!?」
確か俺は、50年という現代社会を生きる日本人にしては短い生涯を、ワニに喰われて終わる、という至福にして最高の最期を迎えたはずだ。
一緒に暮らしていた爬虫類たちが、天寿を全うしたのを見届けた後、行き場を無くした爬虫類愛をどこに捧げようかと考えた挙句、一番憧れているワニに会いに行ってそこですべてを捧げよう、と決意し、文字通りすべてを捧げてきた。
その瞬間、俺は50歳だった。
腕が上がらなくなってきたり、疲れやすくなってきたり、老眼に悩まされる日々を送っている50歳独身男性だったはずなのだが……。
「今のあんたは、25歳の頃に戻ってるわ」
俺が自分のしわやしみのない身体をまじまじと見つめていると、先ほどの女性の声がどこからともなく聞こえてきた。
「え!?25歳!?……っていうか、誰!?どこにいんの?」
周りを見渡しても、誰もいない。
「よし、片づけ終わったし、こっち呼ぶかぁ。いいよ、私の世界へ入っておいで」
「え?世界って……う、うわああああああっ!?」
突然、俺の身体はものすごい勢いで落下し始めた。
体感1分くらいの激しい浮遊感に襲われた後……
「ぁぁぁぁああああああああっ!んがっ!?」
どさっ、と俺は地面に叩きつけられた。
しかし、勢いよく叩きつけられたものの、痛みは感じない。
「なんなんだよ……ったく…浮いたり落ちたり……」
ぶつぶつと訳のわからないこの状況に悪態をつきつつ、俺は立ち上がる。
そこは、ジャングルのような空間だった。
巨大な樹木が生い茂り、踏みしめている地面は少し湿っていた。
少し先には、湖のようなものも見える。
そして、その空間の中、俺の目の前に一人の女性が立っていた。
2メートルは越えていそうなほどに巨大な女性。
すらっとした細い身体、腰までまっすぐに伸びているダークグリーンの髪、猫の目を想起させるような縦長に細い瞳孔をたたえた黄金の瞳、そして頬のあたりを覆っている、蛇の鱗。
その人と蛇の間のような姿をした彼女は、にやりと笑い、俺に告げた。
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