れぷたいるず!~転生先の異世界は爬虫類がヒト化した世界でした~

桜蛇あねり

文字の大きさ
5 / 18
第一章 ティタノボアの箱庭世界

5.この世界のルールは「弱肉強食」

しおりを挟む
目の間の少女の表情が険しくなる。

完全に、あの少年に敵意むき出しだ。

そしてそれは、対面している少年も同じことだった。


「悪いが、おれも人間が必要なもんでね。ここは譲れない」


少年の殺気が強くなる。

しかし、ニシアフ少女はそれでもなお、臆することなく真っすぐに相手をにらんでいた。


「そうか。それはお互い様だな。私だって、ようやく巡り合えた人間なんだ。渡すわけにはいかない!」


両者、一歩も引かず、火花を散らし合う。


そんな中、状況が把握できていない無能な人間がここに一人。



ええっと、どういう状況なんだ…?


俺を取り合って、戦争しようとしているのか?


この俺が、爬虫類たちに求められて、争いの火種になっている……?


なんだこの状況……今までにないきゅんきゅんするシチュエーションじゃないか!


だとすれば、ここで俺が発する言葉はただ一つ!!!





「二人ともっ!俺のために、争わないでっ!!」





乙女チックな表情を作り、現世では絶対に言うことのない、しかし言ってみたい言葉トップ10に入るであろうその言葉を叫ぶ俺。



にらみ合う二人の間に入ろうとした刹那―――



「はっはぁ!だったら、やることはひとつだよなぁ!お嬢ちゃん!!」


ひゅう、と突風が少年の周りをうずまいた。


俺のふざけた空気を切り裂くようなその突風に、俺は足を止め、その場で固まった。



土埃を巻き上げ、風は少年の周りを激しく包む。


その中で、少年は右手を高々と上げた。


「強いやつが正義。おれと……戦闘だっ!」


風がおさまり、いつの間にか現れた長身の日本刀をその右手に握っている少年がそこにいた。


不敵な笑みを浮かべ、その日本刀を構える。

「お、おい、あれ本物か!?やべえって、逃げよう!」

切れ味の鋭そうな刀身を見た俺は、少女に逃げるよう呼びかけた。

生身の俺たちが、あんな武器に太刀打ちできるはずがない!


しかし、彼女は堂々と、相手を見据え、両手を横に広げた。


「いいだろう。勝った者が、彼を手に入れられる。受けて立つ…!」

彼女の両手に、1対の鞭のようなものが現れる。

鞭、というよりかは、リボンのような武器だ。

バトンのように長い柄に、さらに長くてひらひらとした、それでいてしっかりとした強度をもったリボンが備わっている。

左手に、オレンジ色のリボンを。

右手には、黒色のリボン。黒色のリボンには、小さなとげのようなものがいくつも付いていた。


「ニシアフリカトカゲモドキ、ミィ。お前に勝つ!」

「上等だ!ニホンカナヘビ、大地。参るっ!」


二人は同時に動いた。


その速さに、急に二人が姿を消してしまったように見えた。


キィン―――


上空で打ちあう音が聞こえ、すぐさま視線を上へとやる。

日本刀で切りつけるニホンカナヘビの少年に、それを柄の部分で受け止めるニシアフ少女。


左手のリボンで受け止めた少女は、右手のリボンを振り、攻撃で無防備になった少年の横腹を打つ。

「くっ!」

その衝撃を避けようとしたが、リーチの長さに避けきることは難しかった。

一撃をくらい、少年は態勢を崩して地面に叩きつけられる。

彼が態勢を立て直そうとするも、すぐに少女は二本のリボンで連撃を放ち、その暇を与えなかった。


「やああああっ!」


「くそっ!」


日本刀で迎え撃ち、さらに続く連撃に防戦一方となってしまう。


この子……強い……!


「さぁ、トドメだ!断華一閃だんかいっせん!」

オレンジ色のリボンが相手の足を絡めとる。

「う、動けな……」


縛られた足に気を取られたその一瞬、もう一本の黒いリボンが、少年の身体を横一文字に叩きつけられた。


「ぐはっ……!」


後ろ向きに倒れる少年。うぅ、と痛みに呻きながら、腹部の傷をおさえている。


「私の勝ちだ。悪いが、手を引いてもらおうか」

彼女は両手を開き、リボンを手放した。

すると、そのリボンは跡形もなく消えてしまった。

同じように、少年の日本刀も消え去っている。


「うぅ……くそ……」


少年は何か反論するでもなく、おもむろに立ち上がり、ゆっくりとした足取りで、森の奥へと去って行ってしまった。


「あ、おい!君、そんな怪我で!」

俺がとっさに引き留めようとした手を、

「引き留めるな。ここはこういう世界なんだ」

ミィと名乗っていたニシアフ少女はそっと止めた。

「ここでは、強さがすべて。何事にも、強いやつが正義とされる弱肉強食の世界なんだ。決着がついてしまえば、弱者は強者に従い、去るしかない」

「……そう、か。そこは野生と変わらないんだな、この世界は」

「あぁ。おそらく我らの本能なのだろう。私がこの世界に来た時から、ずっとそうだった」


じっと少年が去っていった方向を見つめるミィ。

きっとこの子も、あの少年と同じ立場だった時期があったのだろう。



あれ、そう言えば、ここに来る前、ティタノボアが言っていたルールがあったような……。


「なぁ、ここって、殺しは禁止されてんだよな?なのに決闘って、大丈夫なのか?」

そうだ、ここでは殺しはご法度。ルールを破れば、この世界には居られなくなってしまう。

「その通り、ここでは殺しは禁止。だから、皆、こういうところで決闘をするときは、互いに殺さない様に、殺されない様に、考えながら闘うんだ」

「それはなかなかにしんどそうだな…。生死をかけた戦闘なんてしたことないからわかんないけど…」

弱肉強食の本能を持ったまま、殺しが禁止された世界で生きていく。

それはかなり難しいのではないだろうか…?

何を思って、ティタノボアはこのような世界を創ったのだろう?


まだまだ、この世界はわからないことだらけだ。


「さて、そろそろここから移動しようか。また人間を求める輩に見つかると面倒だからな。私の住む街に案内しよう


ぱっと、彼女の空気が変わり、戦闘前に見せていた笑顔になる。

そして、俺に向き直り、手を差し出した。

「私はミィ。これから、この世界で一緒に過ごして欲しい」

新しく生きることになったこの世界で、初めて出会った少女、ミィ。

これからどんな困難が待ち受けているのか、どんな楽しいことが待っているのか、俺には全く予想ができないが、でも、

「あぁ。俺は高川 誠。マコト、とでも呼んでくれ。よろしくな、ミィ」

ヒト化したとはいえ、大好きな爬虫類たちと過ごす日々は、きっと楽しいに違いない。

俺はしっかりと、ミィの手を握ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

処理中です...