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努力追放編
3000人だからどうしたというのか
しおりを挟む次の日の昼、俺達は街の外で待機していた。
前方付近から馬車が数台やってきて、俺の前でピタッと止まる。
中央の木製の荷台には幌が取り付けられており、中の様子は見えないようになっている。
幌から顔を出したのは、 皮ローブに身を包んだ男性だった。
「へへへへ! 依頼を受けてくれたのは君たちですかい?」
男性の快活な声や表情に俺が吐き気を堪えたのはしょうがないだろう。
無造作に男性に1000パラを投げつけられ、荷物が入っていない馬車に俺達は乗り込んだ。
▽
ゴトゴト、ゴトゴト……。馬車に揺られてもう何時間か。
途中で出会ったモンスターは俺が一瞬で倒した。
……。
俺達が乗っている馬車の後ろでは、 荷物を搭載した例の馬車がついてきている。
そして、馬車はついに目的地に到着したようだ。
俺は馬車の外に出て、男性に荷物を確認させろと迫る。
「へへへ、それは契約違反ですぜ」
バキッ! ボコッ! ……ドサッ。
元から話し合う気などない。
男性を気絶させてから、俺は馬車の中ですっかり弱りきっているエルフ達を見つけた。
「アイリ! 回復魔法を頼む!」
「はいなのです! 」
そう言うとアイリは馬車から出て、 すぐに回復魔法を唱えた。
アイリの回復魔法のお陰で元気になったエルフ達は安堵の息をもらす。
だが、その数はあまりにも少ない。
どこか一ヶ所にエルフ達が集められている可能性は高い。とすると、役割を分担する必要がある。
そして、俺達は草原に戻った。空を見上げると煌めく星が浮かんでいて、月明かりに照らされた草木が風に揺れて波打つようにうねっていた。
【索敵スキル発動!】
「さぁ、いくぞ」
俺は呟くと同時に、全力で駆け出した。
草原を走り抜ける俺の姿を見た魔物たちは逃げ惑い、木々の間を縫って走る。
アイリ達には、エルフ達の救出を頼んでおいた。
【神速移動発動!】
人が大勢いるところに、 きっといるはずだ。
そして……。
あった! 俺の目に飛び込んできたのは、真っ白の大きな建物だった。
「なんだ? この匂い……」
俺は思わず顔をしかめる。遠くからでも鼻をつくような刺激臭が漂ってくるのだ。
建物の入り口に二人、中の警備兵は
何人いるか分からない。
その中に俺は剣を振りかざして飛び込む。
ザンッ! キンッ! ゴッ……!
入り口を守っていた二人を地面に伏せさせると、 建物の中に入り、中の様子を伺った。
すると、一人の兵士が慌てて飛び出してきた。
俺はすかさず斬りかかる。
ズバッ!
「ぐああっ!!」
相手は肩口から鮮血を吹き出しながら倒れた。……一応治療してやろう。
俺は倒れている兵士達を踏み越えると、奥へと進むことにした。
薄暗い廊下を通り抜け、階段を上る。最上階までたどり着くと、そこには大きな扉があった。
俺は勢いよく扉を開けると、中にいた兵士たちに向かって叫ぶ。
「全員動くなっ!」
そして、中にいた兵士の数はざっと30人程だった。
中には武装している者もいるが、ほとんどが武器を持っていないようである。
俺は剣を構えつつ部屋の中に入り、
中央にいる人物に話しかけた。
「おい、エルフのみんなを解放しろ」
「ああ、君か。偉大なマルティネ様の足を引っ張り、あげくの果てにマルティネ様の資金源まで断とうとしている。 一体どういうつもりなんだか」
やれやれと首を振ると、中央の男は口を開く。
「私はこの世界で一番の商人であり、同時にマルティネ様の右腕でもある。
君みたいな小僧が私に勝てるわけがない」
「さっさと終わらせるかな」
俺はニヤリと笑うと、一気に間合いを詰める。
俺が目の前の兵士の腹を斬ろうとした瞬間、 商人と名乗った男が、
「もうすぐマルティネ様も到着なさるし、3000人の兵士が後数分もしないうちに君を始末しにやってくるよ」
嘲るように笑みを浮かべている。
「3000人でも、何でもいいけどエルフの居場所どこなの?」
俺が気になるのはこいつらが、エルフを人質に取る可能性だけである。
本当はこんな施設ぶっ壊して、ついでにマルティネもボッコボコにしたいのだ。
この施設にはエルフはいないようである。
なので俺が全員引き付ければアイリ達は楽に救出活動を行えるだろう。
よし。ちょっとだけ兵士達で遊んであげよう。兵士の攻撃くらっても、0ダメージなので痛くないからね。
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