社長の奴隷

星野しずく

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社長の奴隷.15

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「あの~、お昼ご飯食べてもいいですか?」

 信楽君がパーテーションの端から顔を覗かせた。

 時計を見るとすでに十二時を少しまわっていた。

「もう昼か・・・。藤巻君、休憩してくれ。私は外へ出てくる」

 寛成はそう言うとオフィスをあとにした。



「なんか、結構大変なんですね」

 自分のデスクに戻ると信楽が声をかけてきた。

「まあ、いつものことなんだけどね。社長は商品のことになると、真剣そのものだから」

 弁当を広げながら美緒は答えた。



「そうみたいですね。僕、色々誤解してました」

「・・・?」

 美緒は不思議そうな顔で信楽君のことを見つめた。

「本当に興味本位というか、軽い気持ちで応募したんです、この仕事」

「ま、まあ、普通そうだと思うけど・・・」

 社長の商品に対する愛情が異常なだけなのだから。



「扱ってる商品は失礼ながら下品と言うか・・・、あまりひとに自慢できるものじゃないのに、藤巻さんも、社長も、商品に対してすごく愛情を持って接してる」

 何が信楽君の琴線に触れたのかよく分からないけれど、彼は今確実に感動しているようだ。

「そ、そんな風に見える?」

「見えますよ。っていうか、もうわが子のように可愛がってるじゃないですか」

 わが子はさすがに言い過ぎだろう・・・。

「それは、どうも・・・」

「僕も、もっと頑張って、会社に貢献したいと思います」



 いやいや、ただのバイトなんだから、そこまで本気にならなくてもいいんですよ。

 だいたい、私なんて、社長に対する邪心が原動力なんだから。

 そんなことは言えないけれど・・・。



 昼からは写真撮影をして、今日は美緒も五時で上がりだ。

 日曜は一応五時までが就業時間となっている。

 寛成に挨拶をすると、美緒は信楽君と一緒にオフィスを出た。



「あの・・・、このあと何か予定あります?」

 信楽に尋ねられ、友だちも知り合いもいない美緒に予定などあるはずもなく、「ないけど・・・」と即答した。

「じゃあ、一緒に夕飯食べませんか」

 まさか信楽君に誘われるとは思っていなくて、少し驚きつつも、断る理由もなくOKした。



「ふつうの居酒屋とかでいいですか?」

「ん?私まだ未成年なんだけど」

「え、ええーっ!!」

 喜怒哀楽をほとんど見せない信楽君が初めて見せた驚きの顔だった。



「あれ、言ってなかったっけ」

「き、聞いてないですよ。あんな仕事してるから、てっきり僕より年上かと思ってましたよ。あーびっくりした」

 普段が無表情なだけに、少しでも表情の変化が見られるのが何だか嬉しかった。

「じゃあ、どうしようかな・・・」

 他を考えていなかったらしく、今度は少し困った表情を見せる。
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