56 / 107
君に溺れてしまうのは僕だから.56
しおりを挟む
ほどなく田所さんが電話に出て、旦那様と代わりますと言った。
伊織は昨日の坂口とのことが頭をよぎり、一層緊張が高まる。
「もしもし、伊織か?」
「はい、お父さん」
「田所さんから聞いているが、えらく突然決めたんだね」
「すみません、ちゃんとお話ししてから出かけたかったんですが…」
「まあ、それはいい。で、一緒にいるのは坂口君か?」
「い、いえ違います。女の友達です」
「伊織は私に嘘をつくのかい?」
もうすでに嘘はついている。
田所さんには女友達と泊まると告げてきたのだから。
しかし武彦は、はなから信じていなかったようだ。
「…」
伊織は言葉が出てこない。
「そこにいる女友達とやらに電話を変わりなさい」
「い、今はちょっと外に行っています」
「ふうん、そうかい。一つ嘘をつくと、次から次へと嘘をつかなければならくなるようだ。私は伊織をそんな風に育ててしまったんだね」
「ち、違います。これは…、帰ってからちゃんと説明します」
「今日帰ってくるのかい?」
「はい」
「じゃあ、気をつけて帰って来なさい。坂口君によろしく」
そう言うと、武彦はプツリと電話を切ってしまった。
「村井んち、やっぱ変わってるね。親父さんに敬語なんてさ」
「そうだよね。でもうちではそれが普通なんだ」
「そっか。で、親父さんは何て?」
「坂口君といるんだろうって」
「へえ、鋭いね。で、何て答えたの」
「最初は女友達といるって言い張ったんだけど、じゃあ電話口に出してって言われて、もう黙り込んじゃった」
「それじゃあ、俺といるって言ってる様なもんだね」
「うん、私、こういうの苦手」
伊織は早く家に帰って、武彦に全てを話してしまいたかたった。
そして、罰を受けるなら受けて、許してもらいたかった。
「帰ったらどうするの?俺と泊まったって言うの?」
「うん…、そのつもりだけど、ダメかな」
「ダメっていうか、どこまで話すつもり?まさかセックスしたことも言うの」
「どうしよう。どこまで話せばいいんだろう。さっき、おじさまに、あ、普段はおじさまって呼んでるの、へんだよね」
「まあ、それが村井んちでは普通なんだろう?」
「うん、でね、さっき電話で、ひとつ嘘をつくと次から次へと嘘をつくことになるって、そんな風に育ててしまったんだなって言われて…」
「なかなか精神的に追い詰めてくるね、君のお父さんは」
「わ、私が悪いの。だって、彼氏がいるっていうのも嘘だし、女友達っていうのも私が勝手についた嘘なんだから」
伊織は昨日の坂口とのことが頭をよぎり、一層緊張が高まる。
「もしもし、伊織か?」
「はい、お父さん」
「田所さんから聞いているが、えらく突然決めたんだね」
「すみません、ちゃんとお話ししてから出かけたかったんですが…」
「まあ、それはいい。で、一緒にいるのは坂口君か?」
「い、いえ違います。女の友達です」
「伊織は私に嘘をつくのかい?」
もうすでに嘘はついている。
田所さんには女友達と泊まると告げてきたのだから。
しかし武彦は、はなから信じていなかったようだ。
「…」
伊織は言葉が出てこない。
「そこにいる女友達とやらに電話を変わりなさい」
「い、今はちょっと外に行っています」
「ふうん、そうかい。一つ嘘をつくと、次から次へと嘘をつかなければならくなるようだ。私は伊織をそんな風に育ててしまったんだね」
「ち、違います。これは…、帰ってからちゃんと説明します」
「今日帰ってくるのかい?」
「はい」
「じゃあ、気をつけて帰って来なさい。坂口君によろしく」
そう言うと、武彦はプツリと電話を切ってしまった。
「村井んち、やっぱ変わってるね。親父さんに敬語なんてさ」
「そうだよね。でもうちではそれが普通なんだ」
「そっか。で、親父さんは何て?」
「坂口君といるんだろうって」
「へえ、鋭いね。で、何て答えたの」
「最初は女友達といるって言い張ったんだけど、じゃあ電話口に出してって言われて、もう黙り込んじゃった」
「それじゃあ、俺といるって言ってる様なもんだね」
「うん、私、こういうの苦手」
伊織は早く家に帰って、武彦に全てを話してしまいたかたった。
そして、罰を受けるなら受けて、許してもらいたかった。
「帰ったらどうするの?俺と泊まったって言うの?」
「うん…、そのつもりだけど、ダメかな」
「ダメっていうか、どこまで話すつもり?まさかセックスしたことも言うの」
「どうしよう。どこまで話せばいいんだろう。さっき、おじさまに、あ、普段はおじさまって呼んでるの、へんだよね」
「まあ、それが村井んちでは普通なんだろう?」
「うん、でね、さっき電話で、ひとつ嘘をつくと次から次へと嘘をつくことになるって、そんな風に育ててしまったんだなって言われて…」
「なかなか精神的に追い詰めてくるね、君のお父さんは」
「わ、私が悪いの。だって、彼氏がいるっていうのも嘘だし、女友達っていうのも私が勝手についた嘘なんだから」
0
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる