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御曹司のやんごとなき恋愛事情.10
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もちろん、伊波とつきあうのは本当だし、結婚も真剣に考えている。
ただ、どちらも形式上は本気というだけで、そこに優子の気持ちはない。
だが、優子はそういう生き方を選んだ。
それはつまるところ、すべて俊介を思ってのことだった。
ただ、それを俊介に告げることは一生ないだろうけど。
優子は自宅マンションまで伊波の車で送ってもらった。
別れ際、キスをした。
優子にとってはおやすみの挨拶の意味しかもたないそれも、伊波にとっては翌日からの一週間をウキウキした気分で過ごせてしまうくらいの威力を持っていた。
車を発進させた伊波は、触れた唇の感触とそのときの優子の香りや温もりを思い出しては、顔が緩むのを止めることができなかった。
そしてつい、その先のことを妄想してしまうのだ。
優子と初めて身体を重ねたのは十年も前のことなのに、今でもその時のことは鮮明に覚えている。
というより、嬉しすぎて忘れることなど出来なかった。
たとえ勝算がなかろうと、騙されていてもいい。
優子と再び恋人の関係になれた喜びが、伊波を満たしていた。
「桑原取締役、もうすぐお時間です」
「分かってるからさ、キスしてよ。そしたらやる気出る」
「しません」
事務所では、いつもの茶番が繰り返されていた。
「なんでだよ~。ここにチュッとするだけだぜ?それで俺のやる気が出るんなら、秘書としてはやるべきだろう」
「いいえ、それは秘書の仕事ではありません」
俊介はこうしてねばれば、必ずもらえていたキスがいつも通り与えられると思っていた。
「優子~」
俊介は優子の腕を掴むと自分の方へ思いきり引き寄せた。
いつもなら多少は抵抗しながらも、俊介の言いなりになる優子が今日は違っていた。
俊介の掴んだ手を全力で振り払うと、厳しい顔つきで言った。
「これからは、こういうことは一切止めていただきます。でなければ、私は辞めさせていただきます」
「おいおい、どうしたんだよ急に・・・」
さすがの俊介も、優子の態度がいつもとは違うことに気づく。
「至極普通のことを言ったまでです。さあ、もうお迎えの車が参りました」
「あ、ああ・・・」
俊介は優子のことを見つめるが、その表情は硬いままだ。
「お時間です」
「わかってるよ」
俊介はカバンと掴むとオフィスを後にした。
どうしたんだ?
俺、何か気に障るようなこと言ったか?
優子の突然の変貌ぶりに、その理由が全く思い浮かばない。
その日の会食はつい散漫になってしまい、このぐらいで仕事に支障をきたすとは自分もまだまだだなと思い知らされる。
会食を終えオフィスに帰ると、そこにいるはずの優子がいなかった。
『申し訳ありません。急用が出来ましたので、先に帰らせていただきます』という書置きがデスクの上にあった。
ただ、どちらも形式上は本気というだけで、そこに優子の気持ちはない。
だが、優子はそういう生き方を選んだ。
それはつまるところ、すべて俊介を思ってのことだった。
ただ、それを俊介に告げることは一生ないだろうけど。
優子は自宅マンションまで伊波の車で送ってもらった。
別れ際、キスをした。
優子にとってはおやすみの挨拶の意味しかもたないそれも、伊波にとっては翌日からの一週間をウキウキした気分で過ごせてしまうくらいの威力を持っていた。
車を発進させた伊波は、触れた唇の感触とそのときの優子の香りや温もりを思い出しては、顔が緩むのを止めることができなかった。
そしてつい、その先のことを妄想してしまうのだ。
優子と初めて身体を重ねたのは十年も前のことなのに、今でもその時のことは鮮明に覚えている。
というより、嬉しすぎて忘れることなど出来なかった。
たとえ勝算がなかろうと、騙されていてもいい。
優子と再び恋人の関係になれた喜びが、伊波を満たしていた。
「桑原取締役、もうすぐお時間です」
「分かってるからさ、キスしてよ。そしたらやる気出る」
「しません」
事務所では、いつもの茶番が繰り返されていた。
「なんでだよ~。ここにチュッとするだけだぜ?それで俺のやる気が出るんなら、秘書としてはやるべきだろう」
「いいえ、それは秘書の仕事ではありません」
俊介はこうしてねばれば、必ずもらえていたキスがいつも通り与えられると思っていた。
「優子~」
俊介は優子の腕を掴むと自分の方へ思いきり引き寄せた。
いつもなら多少は抵抗しながらも、俊介の言いなりになる優子が今日は違っていた。
俊介の掴んだ手を全力で振り払うと、厳しい顔つきで言った。
「これからは、こういうことは一切止めていただきます。でなければ、私は辞めさせていただきます」
「おいおい、どうしたんだよ急に・・・」
さすがの俊介も、優子の態度がいつもとは違うことに気づく。
「至極普通のことを言ったまでです。さあ、もうお迎えの車が参りました」
「あ、ああ・・・」
俊介は優子のことを見つめるが、その表情は硬いままだ。
「お時間です」
「わかってるよ」
俊介はカバンと掴むとオフィスを後にした。
どうしたんだ?
俺、何か気に障るようなこと言ったか?
優子の突然の変貌ぶりに、その理由が全く思い浮かばない。
その日の会食はつい散漫になってしまい、このぐらいで仕事に支障をきたすとは自分もまだまだだなと思い知らされる。
会食を終えオフィスに帰ると、そこにいるはずの優子がいなかった。
『申し訳ありません。急用が出来ましたので、先に帰らせていただきます』という書置きがデスクの上にあった。
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