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御曹司のやんごとなき恋愛事情.11

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 俊介はあわてて優子の番号に電話をかけてみたが、留守電に変わってしまい、その日はついに連絡を取ることができないまま過ぎてしまった。

 優子の様子、絶対おかしかったよな・・・。



 優子は一番近いところにいるようで、実は彼女が普段、誰と何をしているのかは全く分からない。

 俊介が平日デザイン会社にいる間は、本社で何か仕事を任されていることは知っている。

 彼女は元々優秀な人材だったのだから、会社でも十分価値のある存在のはずだ。



 しかし、俊介にとってはそんなことはどうでもよかった。

 優子は自分のそばにいて、いつも自分を甘やかしてくれる存在でいて欲しかっただけだ。

 そんな日がいつまでも続くとのん気に構えていた。

 だから、今日の優子の反応は俊介にとって捨て置けないものだった。



 気になって仕方がない。

 優子のマンションを訪ねようか。

 いや、そこまでしなくても、きっと今度の休みにはいつもの優子に戻っているはずだ。

 親父に何か言われたのかもしれない。

 いつもの様に抱いてしまえば、またいつもの優子に戻るはずだ。

 そう自分を言いくるめて、その週は何とかやりすごした。



 そして迎えた土曜、俊介はいつもより早くオフィスに着いた。

 一刻も早く優子の顔が見たかった。

 ドアを開けてもそこに優子の姿は見えない。

 しかし、給湯室から物音がしている。

 よかった、ちゃんと来てる。



「おはようございます。本日から佐竹さんに代わり秘書を務めさせていただきます。栗本茜と申します」

 そこに現れたのは、優子ではなかった。

 随分と若い、まだ二十代前半ではないかと思われるその女性は、今日から優子の代わりとしてやってきたと言った。



「何も聞いてないぞ」

「そうでしたか。それでも、引継ぎはしっかりしてまいりましたので、お仕事には差し支えないと思います」

 差し支えない?

 大有りだよ!



「優子・・・、いや、佐竹は今どこにいるんだ」

「それは分かりかねます」

 栗本は当然のことのように答えた。



 そう答えるだろうとは思った。

 しかし、聞かずにはいられなかった。

 自分より年下と思われる女性にだだをこねる訳にもいかず、俊介は黙り込んだ。

 優子・・・、何があった。

 とりあえず、今日の会食の後、父の行成に詳しいことを聞いてみるしかない。 

 栗本は優子に言われたのだろう、らんぷの珈琲を俊介の前のテーブルに置いた。

 いつもは美味いその珈琲も、今日は全く味気ない液体となって俊介の喉を通り過ぎて行った。



「親父、何で勝手に俺の秘書変えたんだよ」

「何か問題があるか?」

「も、問題は・・・」

 この歳になって、優子じゃなきゃ嫌だとも言えず、俊介は言葉に詰まる。

「佐竹君とは、元々そういう約束だったからな」

「えっ?」

 聞いてないぞ、そんな話・・・。
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