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御曹司のやんごとなき恋愛事情.19

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 栗本は優子が選んだだけあって、打てば響く素晴らしい逸材だ。

 俊介はせいぜい栗本を活用して、優子に相応しい男になると誓いを立てた。

 癪に障るが、伊波とのことはしばらく静観することにしよう。



 優子自ら俊介のもとへ戻って来たいと懇願するくらいの男になってやる。

 いや、それはハードルが高すぎるな・・・。

 せめて、俊介の申し出をすんなりと受け入れる気になるくらいまでにはなりたい。

 俊介はそう考えられるようになっただけ、少し大人になったのだと前向きに考えることにした。



 翌日の早朝、しつこく鳴る携帯の呼び出し音で目が覚めた。

「誰だよ~、まだ五時じゃないか~」

 しかし携帯の画面に映し出されている名前を見た瞬間、俊介は完全に目が覚めた。



「優子!どうした?何があったんだ」

「社長がご自宅で倒れて病院に運ばれました。私はいま病院に着いたところです。まだ原因は分かりませんが、命に別状はないとのことです」

「そうか、分かった、俺もすぐ行く」

 俊介は病院の名前を聞くとすぐに家を飛び出した。



「優子!」

「取締役・・・」

 父親が倒れたというのに、俊介は優子に堂々と会えた嬉しさが溢れ出てしまいそうで、それを誤魔化すのに苦労する。

「親父は?」

「精密検査をしてみないと詳しいことは分からないそうですが、恐らく過労ではなかということです」

「過労?親父が?」

「このところ出張が立て続けにありましたからね。確かに少しお疲れの様子でした」



 その口ぶりから、優子は社長である行成に同行することも多い様だ。

 俺が社長になったら、優子と一緒に出張か・・・。

 こんな状況でも、不埒なことを考える自分の想像力をどうにかして欲しい。



「あれ、そういえばお袋は?」

「それが、先週から慈善事業組合の慰安旅行でハワイに行ってらっしゃって、ご不在なんです」

「まったく、お袋は相変わらずだな・・・」

 夫婦の関係をとやかく言うことは出来ないが、夫が倒れた時に海外を旅行中とは・・・。

 俊介は頭が痛い。



「取締役・・・、社長とお話になりますか?」

「え、大丈夫なのか?」

 病室に入ると、行成は目を閉じたままベッドに横たわっていた。

 確かに顔色が良くない。



「親父、具合はどうだ?」

「ああ・・・、俊介か・・・。みっともないところ見せてしまったな・・・」

「こんな時まで恰好つけようとするなよ」

「仕方ない・・・、癖みたいなもんだ」



 社長ともなれば、いつも気を張っているのだろう。

 それが日常になってしまっているのだ。

「検査の結果次第だけど・・・、しばらくは休んだ方がいい。その間は俺が何とかするから、安心して休んでくれよ」
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