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御曹司のやんごとなき恋愛事情.18
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翌日の日曜、俊介は会食でも接待ゴルフでもないのに、事務所に詰めていた。
と言っても仕事をしているわけではなく、応接室のソファに深々と座って栗本を相手に話し込んでいたのだ。
「栗本君、夕べ優子に会ったよ」
「さようでございますか」
「君のこと聞いたよ。銀座のママだったんだね」
「はい」
栗本は穏やかな微笑みをたたえたまま、その表情を崩さない。
年齢の割に妙な貫禄があるのは、銀座のママという経歴のせいだったのだ。
あっちがあんなに上手いから、てっきりヘルス嬢かと思うところだった。
失礼した・・・。
「だけど、どういう経緯でうちの会社に?」
そこまで詳しい話は聞かなかったから。
「以前接待でうちのクラブを使っていただいたんです。その時初めて佐竹さんにお会いしました」
「へえ・・・」
よく考えたら、優子が実際に仕事をしているところを俊介は一度も見たことがない。
「その時の佐竹さんの知識の豊富さ、そして会話のスキルの高さ、その場の空気を読むセンスの良さ、その全てに感服いたしました」
「へ、へえ・・・」
父から優子が優秀だったという話は聞いていたし、教育係の時にはビジネスのイロハを教わった。
しかし現場で優子がどう振る舞っているかは知らない。
「それで、佐竹さんからこのお話をいただいた時、この方のところでなら働いてみてもいいかなと思ったんです。クラブのママはまたいつでも出来ますし」
銀座のナンバーワンと言われるクラブのママにそこまで言わせる優子という女は・・・。
今頃になって、俊介は優子が本当に優秀で、会社にとってはもしかしたら自分なんかより余程必要とされているのではということに思い至る。
そんな話を聞いてしまうと、俊介としてはますます優子を手放したくなくなってしまう。
伊波という男に優子が触れるのかと思うと、今すぐ乗り込んでいって、犯罪レベルのことをしてしまいそうだ。
「だけど、いくら優子でも君に俺のあっちの処理までするように頼むかね?」
これは俊介が引っかっていたことだ。
「いいえ、確かに変な女に引っかからないようにとは言われましたが、その方法までは指示されていません」
栗本はまた俊介の度肝を抜く発言をする。
「じゃ、じゃあなんで、あんなこと・・・」
「簡単に申し上げれば、桑原取締役がとても魅力的な方だからです。そして、殿方はやはり物理的に処理するのが一番かと」
潔いと言えばいいのか・・・。
俊介は何と答えればいいのか答えに窮する。
何だか自分の周りにいる女性のレベルが高すぎて、俊介は自分がそれに相応しいのかと問わずにはいられなくなる。
ただ勢いに任せて、優子のことを自分のものにしようとしていたけれど、自分が優子に釣り合う人間かということを突き付けられた思いだ。
「俺はどうすれば優子に相応しい男になれるだろうか・・・」
俊介は思わず呟いていた。
「僭越ながら言わせていただきます」
「な、何だ?」
俊介の独り言に栗本が反応するとは思っていなかった。
「桑原取締役は社長として人を惹きつける魅力は十分備えていらっしゃいます。ただ、その魅力である素直な性格が災いして、言動がストレート過ぎるのが難点ではないかと思われます。つきましては、アンガーマネジメントを学ばれるとよろしいかと存じます」
「ア、アンガーマネジメント?」
「はい。よろしければ明日にでも受講できる講座を手配させていただきますが」
「そうしてくれ」
「かしこまりました」
と言っても仕事をしているわけではなく、応接室のソファに深々と座って栗本を相手に話し込んでいたのだ。
「栗本君、夕べ優子に会ったよ」
「さようでございますか」
「君のこと聞いたよ。銀座のママだったんだね」
「はい」
栗本は穏やかな微笑みをたたえたまま、その表情を崩さない。
年齢の割に妙な貫禄があるのは、銀座のママという経歴のせいだったのだ。
あっちがあんなに上手いから、てっきりヘルス嬢かと思うところだった。
失礼した・・・。
「だけど、どういう経緯でうちの会社に?」
そこまで詳しい話は聞かなかったから。
「以前接待でうちのクラブを使っていただいたんです。その時初めて佐竹さんにお会いしました」
「へえ・・・」
よく考えたら、優子が実際に仕事をしているところを俊介は一度も見たことがない。
「その時の佐竹さんの知識の豊富さ、そして会話のスキルの高さ、その場の空気を読むセンスの良さ、その全てに感服いたしました」
「へ、へえ・・・」
父から優子が優秀だったという話は聞いていたし、教育係の時にはビジネスのイロハを教わった。
しかし現場で優子がどう振る舞っているかは知らない。
「それで、佐竹さんからこのお話をいただいた時、この方のところでなら働いてみてもいいかなと思ったんです。クラブのママはまたいつでも出来ますし」
銀座のナンバーワンと言われるクラブのママにそこまで言わせる優子という女は・・・。
今頃になって、俊介は優子が本当に優秀で、会社にとってはもしかしたら自分なんかより余程必要とされているのではということに思い至る。
そんな話を聞いてしまうと、俊介としてはますます優子を手放したくなくなってしまう。
伊波という男に優子が触れるのかと思うと、今すぐ乗り込んでいって、犯罪レベルのことをしてしまいそうだ。
「だけど、いくら優子でも君に俺のあっちの処理までするように頼むかね?」
これは俊介が引っかっていたことだ。
「いいえ、確かに変な女に引っかからないようにとは言われましたが、その方法までは指示されていません」
栗本はまた俊介の度肝を抜く発言をする。
「じゃ、じゃあなんで、あんなこと・・・」
「簡単に申し上げれば、桑原取締役がとても魅力的な方だからです。そして、殿方はやはり物理的に処理するのが一番かと」
潔いと言えばいいのか・・・。
俊介は何と答えればいいのか答えに窮する。
何だか自分の周りにいる女性のレベルが高すぎて、俊介は自分がそれに相応しいのかと問わずにはいられなくなる。
ただ勢いに任せて、優子のことを自分のものにしようとしていたけれど、自分が優子に釣り合う人間かということを突き付けられた思いだ。
「俺はどうすれば優子に相応しい男になれるだろうか・・・」
俊介は思わず呟いていた。
「僭越ながら言わせていただきます」
「な、何だ?」
俊介の独り言に栗本が反応するとは思っていなかった。
「桑原取締役は社長として人を惹きつける魅力は十分備えていらっしゃいます。ただ、その魅力である素直な性格が災いして、言動がストレート過ぎるのが難点ではないかと思われます。つきましては、アンガーマネジメントを学ばれるとよろしいかと存じます」
「ア、アンガーマネジメント?」
「はい。よろしければ明日にでも受講できる講座を手配させていただきますが」
「そうしてくれ」
「かしこまりました」
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