ヤンチャな御曹司の恋愛事情

星野しずく

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御曹司のやんごとなき恋愛事情.60

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「だいたい、須藤さんは今回の同行は大抜擢で、そうとう気合が入ってると思います。緊張してるとも思いますし、そんな変なことをしようなどという気にすらならないと思いますけど」

「そうかな~、俺だったら、用事なんかさっさと片付けて、二人ホテルでしっぽりと過ごすことで頭がいっぱいになっちゃうんだけどな~。仕事なんて、自分のさじ加減で、いくらでも早く終わらせられるじゃん」

「副社長!」

 栗本にキツく睨まれ、俊介は口をつぐんだ。



「いくら同じ会社とはいえ、国が違えば人種も考え方も風習も違うんです。普通はもう少し緊張するものですよ」

「そんなこと言われたって、そういうことあんまり気にならないから仕方ないじゃん。だから余計に優子のことが気になって困るんだけどな~」

「まったく、副社長には呆れるというか・・・驚かされてばかりです」

「へえ、栗本君にそう言ってもらえるとなんか嬉しいな」

「別に褒めてませんので」

「あ、そうなの?」

「そうです」

 そんな漫才のような会話が本社の俊介の部屋では交わされていた。



 しかし、いくら栗本が須藤の評判を社員から聞いたとしても、本人の気持ちまでは分かるはずがなかった。

 つまり、須藤は恋とまではいかないまでも、優子のことを少なくとも憧れの存在、そしてあわよくば特別な存在になれたらなどという下心くらいは持っていた。

 それは、女盛りである優子の色気、そしてデキる女であることを鼻にかけない気さくな性格が影響していた。

 俊介には時として、異常なくらいの拒絶反応を示し冷たい態度をとる優子だが、部下や同僚にはすこぶる評判がよいのだ。

 そんな優子のお供に選ばれて喜ばない男などいないかもしれない。

 いや・・・、中にはそんな優子のことを目の敵にしている人物もいるだろうが、常識的な社員のほとんどは優子に憧れの視線を向けているのだ。

 優子は栗本に、俊介は須藤にそれぞれ勝手に嫉妬の炎を燃やしながら、海外視察は始まりを迎えた。



 俊介の英会話は、優子が家庭教師時代にマンツーマンでみっちりしごいてくれたおかげで、日常会話には困らない。

 英語圏以外ではもちろん通訳をつけるが、今はどの国に行ってみな英語は話せるため、特に苦労することはなかった。



「もう二週間も優子の姿を見てない・・・」

 俊介が二か国目のドイツのホテルでついに弱音を吐いた。

「お電話なさったらいいじゃないですか」

「あいつは俺の電話になんか出ない」

 俊介は拗ねた様に言った。



「まったく・・・しかたありませんね。これから副社長のお部屋に行ってもよろしいですか」

「い、いいけど・・・」

「あ、今いやらしい想像しましたね?」

 栗本は鋭いツッコミを入れる。



「し、してないよ・・・するわけないだろ」

 しかし、元来の女好きである俊介は、そういうシチュエーションに弱い。

 ついズルズルと・・・ということが過去に何度あっただろうか。

 俊介と栗本はもちろん別の部屋だ。

 しかし、今日までの二週間あまり、俊介が栗本の部屋を訪ねて身体を求めたことは一度もなかった。
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