ヤンチャな御曹司の恋愛事情

星野しずく

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御曹司のやんごとなき恋愛事情.81

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 もう自分の気持ちは散々言い尽くしてきた。

 ただ、今回のことは予定に入ってはいなかった。

 優子は何も言わないから本当の気持ちなど分からないが、どんな時も自分の気持ちだけは確実に優子に届けておきたかった。



「栗本君・・・、忙しいよな?」

 俊介と一緒に渡米する予定の栗本は、秘書業務と並行して商社の業務についての勉強もしているのだ。

「何かお困りですか」

 察しのいい栗本は、すでに俊介の要求は理解しているようだ。



「その・・・、もう一度だけでいい。優子と会えるよう話してもらえないか」

「分かりました、私に出来ることはやってみますが・・・、今度はこの間の様にうまくいく可能性は低いと思います。あまり期待なさらないようお願いいたします」

「わ、分かった・・・。君に任せるよ」

 どうせ自分が接触しようとしても、完全に拒否されるのだから、栗本が万一にでも優子との約束を取りつけてくれたなら、俊介としては言うことはない。

 俊介が栗本に優子と会えるよう頼んでから一週間が経過した。



「おはようございます、副社長」

「おはよう」

 栗本はいつものように俊介の今日のスケジュールを伝えたあと、少し言い出しにくそうに口ごもった。

「どうした?何かあったのか」

 最近は驚かされることばかりで、もうこの上何があっても驚かないつもりでいるが、栗本のこういう態度をとることは珍しいため、よほど良くない話なのかと思わず身構える。



「あの・・・、先日ご依頼されました佐竹さんの件ですが・・・」

「やっぱり駄目だったか・・・」

「いえ・・・、一応会うことは了承してくださいました」

「何だ!よかった!脅かすなよ~」

「ただし・・・」

「ただし?」

「私と伊波さんが同席することが条件だそうです・・・」

「なんだそれ・・・」

 俊介は喜んだのもつかの間、一気に床に叩きつけられたような気分になる。



「それじゃあ意味ないじゃないか・・・」

「・・・」
 
 栗本は口を開かない。

 優子の意志はそれだけ固いということだ。

 だが、やはり諦められない。



「ごめん・・・、栗本君。往生際が悪いことは分かってる。だけど、やっぱりどうしても優子と二人で話したんだ。会うのが駄目なら電話だけでもできないか、もう一度だけ聞いてもらえないか」

 俊介の気持の一番の理解者である栗本が断る理由は無かった。

「分かりました。では、もう一度聞いてみます」

「悪いな・・・。俺、これじゃ栗本君には頭が上がらないな」

 栗本はふふっと小さく笑うと自室に入っていった。



「佐竹さん、今お時間よろしいですか?」

 優子が退社した直後を見計らって、栗本は電話を入れた。

「ええ・・・、別に構わないけど。急ぎなの?」

「はい。お手間は取らせませんので」

「わかったわ」

 優子は駅に向かって歩いていた足を止めた。
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