87 / 106
御曹司のやんごとなき恋愛事情.87
しおりを挟む
『・・・副社長はどうしたいと?』
『今は佐竹さんに会う事しか頭にないようですので、具体的なことは私が手配することになると思います。その前に、一応佐竹さんのご了承を取っておきたいというのが、私が今日お電話した目的です』
今度は単刀直入にその目的を明示してきた。
『その・・・、何とか副社長を説得するのは・・・』
『・・・できる限りお話させていただきましたが、やはり無理でした・・・』
栗本がそう言うのなら、万策尽きたのだろう。
『分かりました。詳しいことが決まったらまた連絡ください』
『はい・・・、私の力不足で、ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
『栗本さんが悪いんじゃないわ。誰の手にも負えないのよ。あの人が一度言い出したら・・・』
『佐竹さんなら分かってくださると思ってました』
まったく、栗本は要領がいい。
『では、詳細が決まり次第ご連絡させていただきます』
そう言って電話は切れた。
優子はやっと俊介のいない日々に慣れたと思った矢先にこのタイミングで帰ってきてしまうという俊介の予想外の行動に戸惑いを隠せない。
だが、そんな俊介の感情剥き出しの行動こそが、優子が求めていたものだということをまざまざと思い知らされる。
離れたくなかった・・・。
本当に無茶苦茶で、困らされてばかりなのに、それくらい俊介が自分を求めているという事実が、優子の心を満たす。
フロアに戻り残りの仕事を片付ける間も、頭の中は常に俊介の顔がチラついて仕方がなかった。
会社から帰る道すがら、優子はこれからのことを考えていた。
俊介の望みを受け入れ、これからも彼との関係を続けるのなら、もうこれ以上伊波を巻きこむわけにはいかないということを・・・。
そして、俊介とそういう関係に戻るということは、遅かれ早かれ桑原商事を辞める覚悟をしなければならないということだ。
優子の本当の願いは社員として一生俊介のそばで、彼を支えていくということだった。
しかし、身体の関係を続けるなら、仕事はきっぱりと辞めるつもりだ。
どちらもという選択肢は優子にはなかった。
桑原商事に入って十年以上、優子はこの会社で働くことにずっとやりがいを感じていた。
だから、会社を辞めることは本意ではない。
だが、優子は俊介を選んだ。
この自分が仕事よりも男を、しかも正式な恋人にも妻にもなれない関係を選ぶことになるなんて・・・。
優子は人は追い込まれないと自分の本心さえも分からないものなんだな・・・、などと、やけに冷静に自分の気持ちを分析していた。
「ただいま・・・」
優子はマンションの玄関を開けるのを今日ほど苦痛に感じたことはなかった。
「おかえり~、今日は遅かったね」
伊波はソファに腰掛けてくつろいだ様子でテレビを観ていた。
「・・・うん、ちょっと色々あって・・・」
優子はあえて意味深な言葉を使った。
「何かトラブルでもあったの?」
伊波はテレビから視線を外し、優子の方に向き直った。
「・・・うん、まあね。あ~、お腹すいちゃった」
優子は冷蔵庫を開けて伊波が作ってくれた夕食を取り出すとレンジで温めた。
「いつもごめんね。最近はほとんど夕食作ってもらってる」
「そんなの別に構わないよ。どうせ一人暮らしの時だって作ってたんだから」
『今は佐竹さんに会う事しか頭にないようですので、具体的なことは私が手配することになると思います。その前に、一応佐竹さんのご了承を取っておきたいというのが、私が今日お電話した目的です』
今度は単刀直入にその目的を明示してきた。
『その・・・、何とか副社長を説得するのは・・・』
『・・・できる限りお話させていただきましたが、やはり無理でした・・・』
栗本がそう言うのなら、万策尽きたのだろう。
『分かりました。詳しいことが決まったらまた連絡ください』
『はい・・・、私の力不足で、ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
『栗本さんが悪いんじゃないわ。誰の手にも負えないのよ。あの人が一度言い出したら・・・』
『佐竹さんなら分かってくださると思ってました』
まったく、栗本は要領がいい。
『では、詳細が決まり次第ご連絡させていただきます』
そう言って電話は切れた。
優子はやっと俊介のいない日々に慣れたと思った矢先にこのタイミングで帰ってきてしまうという俊介の予想外の行動に戸惑いを隠せない。
だが、そんな俊介の感情剥き出しの行動こそが、優子が求めていたものだということをまざまざと思い知らされる。
離れたくなかった・・・。
本当に無茶苦茶で、困らされてばかりなのに、それくらい俊介が自分を求めているという事実が、優子の心を満たす。
フロアに戻り残りの仕事を片付ける間も、頭の中は常に俊介の顔がチラついて仕方がなかった。
会社から帰る道すがら、優子はこれからのことを考えていた。
俊介の望みを受け入れ、これからも彼との関係を続けるのなら、もうこれ以上伊波を巻きこむわけにはいかないということを・・・。
そして、俊介とそういう関係に戻るということは、遅かれ早かれ桑原商事を辞める覚悟をしなければならないということだ。
優子の本当の願いは社員として一生俊介のそばで、彼を支えていくということだった。
しかし、身体の関係を続けるなら、仕事はきっぱりと辞めるつもりだ。
どちらもという選択肢は優子にはなかった。
桑原商事に入って十年以上、優子はこの会社で働くことにずっとやりがいを感じていた。
だから、会社を辞めることは本意ではない。
だが、優子は俊介を選んだ。
この自分が仕事よりも男を、しかも正式な恋人にも妻にもなれない関係を選ぶことになるなんて・・・。
優子は人は追い込まれないと自分の本心さえも分からないものなんだな・・・、などと、やけに冷静に自分の気持ちを分析していた。
「ただいま・・・」
優子はマンションの玄関を開けるのを今日ほど苦痛に感じたことはなかった。
「おかえり~、今日は遅かったね」
伊波はソファに腰掛けてくつろいだ様子でテレビを観ていた。
「・・・うん、ちょっと色々あって・・・」
優子はあえて意味深な言葉を使った。
「何かトラブルでもあったの?」
伊波はテレビから視線を外し、優子の方に向き直った。
「・・・うん、まあね。あ~、お腹すいちゃった」
優子は冷蔵庫を開けて伊波が作ってくれた夕食を取り出すとレンジで温めた。
「いつもごめんね。最近はほとんど夕食作ってもらってる」
「そんなの別に構わないよ。どうせ一人暮らしの時だって作ってたんだから」
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる