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御曹司のやんごとなき恋愛事情.90
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マンションに帰ると、伊波はいつもと変わらない優しい表情で迎えてくれるが、それがかえって息苦しい。
だから、今の優子にとって会社が最も安らげる場所だった。
引越しまであと一週間となった今日も、出社時間より随分早く来てしまった。
携帯が鳴り、画面を見ると栗本だった。
「もしもし、おはようございます。栗本です」
「おはよう」
「早くにすみません。今よろしいですか?」
「ええ、今、会社に着いたところ」
「随分早いんですね・・・」
「まあ、色々あって・・・」
察しのいい栗本のことだから、今の一言で何かしらの変化があったことを理解したかもしれない。
「副社長が日本に着くのは今度の土曜日です。もっとも翌日には帰国してもらいますけど」
「そう・・・」
土曜日は引越しの翌日だ。
家具も家電もその日に届けてもらうことになっている。
優子は元々栗本に隠すつもりはなかったから、前回の電話以降で伊波との間で交わされた話し合いのすべてを話した。
「・・・本当にそれでよろしいんですか?」
「ええ・・・、伊波さんのおかげで自分というものをよく知ることが出来たわ。彼には感謝しかないの・・・」
「そうですか・・・。では、日程はお伝えしましたので、詳しい到着時間はまたメールで連絡させてもらいます」
栗本は伊波とのことを詮索することなく、淡々と話を進め、電話は切られた。
引越しが終わって生活が落ち着いたら、社長に話しをしなければならない。
自分が今やっている仕事の引継ぎには時間がかかる。
まず誰に引き継いでもらうか・・・。
どちらにしても迷惑をかけてしまうんだな。
だけど、優子は全てを捨てて俊介を選んだことを後悔していなかった。
それこそが自分が最も望んでいたことだとやっと分かったのだから。
優子は引越しのため金曜日に有休を取っていた。
引越しの日は伊波がいない平日を選びたかった。
そして、偶然にも、その翌日俊介が帰国する。
「今まで一緒に暮らしてくれてありがとう」
木曜日の夜、このところまともに会話をしていなかった伊波に、優子は最後のあいさつのつもりで話しかけた。
「こちらこそ・・・。幸せな時間をありがとう」
悲しそうな笑顔を見せられ、優子は思わず泣きそうになる。
「予定通り明日の日中に引越しは済ませます」
「・・・そう」
もう、ごめんなさいという言葉は聞きたくないだろう。
本当は謝りたかったけれど、実はそれも自分を守るためだと分かっている。
だから、優子はあえてそれ以上言葉を重ねるのはやめた。
「彼と幸せに・・・」
最後にそんな言葉・・・。
どこまでも優しい伊波は泣き崩れる優子をそっと抱きしめた。
俺もズルいよな・・・。
どうしても最後に優子に触れたかった・・・。
だけど、神様もこれぐらい許してくれるよな・・・。
伊波は自分から身を引くことに対するご褒美をありがたく頂戴した。
だから、今の優子にとって会社が最も安らげる場所だった。
引越しまであと一週間となった今日も、出社時間より随分早く来てしまった。
携帯が鳴り、画面を見ると栗本だった。
「もしもし、おはようございます。栗本です」
「おはよう」
「早くにすみません。今よろしいですか?」
「ええ、今、会社に着いたところ」
「随分早いんですね・・・」
「まあ、色々あって・・・」
察しのいい栗本のことだから、今の一言で何かしらの変化があったことを理解したかもしれない。
「副社長が日本に着くのは今度の土曜日です。もっとも翌日には帰国してもらいますけど」
「そう・・・」
土曜日は引越しの翌日だ。
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「・・・本当にそれでよろしいんですか?」
「ええ・・・、伊波さんのおかげで自分というものをよく知ることが出来たわ。彼には感謝しかないの・・・」
「そうですか・・・。では、日程はお伝えしましたので、詳しい到着時間はまたメールで連絡させてもらいます」
栗本は伊波とのことを詮索することなく、淡々と話を進め、電話は切られた。
引越しが終わって生活が落ち着いたら、社長に話しをしなければならない。
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まず誰に引き継いでもらうか・・・。
どちらにしても迷惑をかけてしまうんだな。
だけど、優子は全てを捨てて俊介を選んだことを後悔していなかった。
それこそが自分が最も望んでいたことだとやっと分かったのだから。
優子は引越しのため金曜日に有休を取っていた。
引越しの日は伊波がいない平日を選びたかった。
そして、偶然にも、その翌日俊介が帰国する。
「今まで一緒に暮らしてくれてありがとう」
木曜日の夜、このところまともに会話をしていなかった伊波に、優子は最後のあいさつのつもりで話しかけた。
「こちらこそ・・・。幸せな時間をありがとう」
悲しそうな笑顔を見せられ、優子は思わず泣きそうになる。
「予定通り明日の日中に引越しは済ませます」
「・・・そう」
もう、ごめんなさいという言葉は聞きたくないだろう。
本当は謝りたかったけれど、実はそれも自分を守るためだと分かっている。
だから、優子はあえてそれ以上言葉を重ねるのはやめた。
「彼と幸せに・・・」
最後にそんな言葉・・・。
どこまでも優しい伊波は泣き崩れる優子をそっと抱きしめた。
俺もズルいよな・・・。
どうしても最後に優子に触れたかった・・・。
だけど、神様もこれぐらい許してくれるよな・・・。
伊波は自分から身を引くことに対するご褒美をありがたく頂戴した。
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