ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.26

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 ドクドクっと精が吐き出されるのを咲那は内側で感じた。



 しあわせ…。

 もう離れたくない…。

 桔平は咲那の中からゆっくりと出ていった。



「咲那…」

 桔平は咲那を抱きしめるとキスをした。

 あまりに嬉しすぎて、咲那は泣いてしまった。



「そんなに痛かったか?」

「違う…」

「だって、泣いてるじゃん」



 嬉しくて泣いたなんて言えない。

 咲那は無理やり涙を止めなけらばならないのが悲しかった。

 本当の気持ちを言って、うざいと思われたくなかったから…。



「もう帰らなくちゃ。お母さんすぐ帰ってくると思ってるし…」

 咲那は桔平の腕の中から抜け出そうとした。

「大丈夫だろ。どうせいつもここに入り浸ってるって知ってるんだし」

 それはそうだけど、こんなことをしてるから後ろめたくて思わずそう言ってしまった。



「う、うん…」

「ねえ、こっち…」

 桔平はもういちど沙耶を自分の腕の中に戻すと、抱き枕の様に手足を絡めてきた。



「…っ…!」
 
 セックスが終わった後も自分のことを求めてくれることが、咲那にとってはたまらなく嬉しかった。

 ただの性欲のはけ口じゃあないと思えるから。



 それは嬉しいのだけど…。

 この状態はいったい何を意味するのか。

 それが咲那には分からない。

 だから嬉しいけれど落ち着かない。

 そんな咲那の不安な気持ちとは裏腹に桔平は食後の運動の程よい疲れが眠気を誘ったのか、またしても寝息を立て始めた。



「ちょ、ちょっと、寝ないでよ」

 桔平の力強い腕でがっしりと抱きしめられたまま眠られてしまっては、身動きがとれない。

 咲那は仕方なく桔平の鼻をつまんだ。



「ん!ぷはっ、お前俺を殺す気か」

「だって、これじゃ動けないんだもん」

「いいじゃん別に…」

 桔平はそう言って寝直そうとする。



「やだ、帰れない」

「じゃ、泊ってけば」

「はあ?」

 桔平の家には嫌というほど来ているけれど、この近さでわざわざ桔平の家に泊まる理由がなくて、記憶にあるかぎりでは泊まったことはない。



「小さい頃は遊びに来てそのまま寝ちまって、よく泊ってったんだぜ」

「それって私が覚えてない位小さい頃の話でしょ?」

「まあそうだけど」

「もう、本当に離してよ、帰るんだから」

「泊ってくの嫌なのか?」

 嫌なわけないけど、親に対する後ろめたさがどんどん増していくのがつらいのだ。



「嫌じゃないけど…、やっぱ無理」

「親はちゃらんぽらんなのに、咲那はしっかりした娘に育ったんだな」
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