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【10】悪役令嬢、逃げる
「冷たっ」
急に出現した水が顔にかかり私は小さく悲鳴を上げる。恐らくヒロインの魔法だろう。
ゲーム内でヒロインは複数属性の魔法を覚えて使うことが出来る。
リコリスは闇、ルシウスは炎。力の大小はあっても、一属性しか扱えないのが普通の世界。
けれどヒロインは闇以外ならどの属性の魔法でも覚えることが出来る。これはとても珍しいことだ。
だからこそ彼女は貴族学園に魔法特待生として通える。
更に得意魔法の系統によって攻略対象キャラが出現したり好感度の上がりやすさが変わる。
ゲーム開始時の質問で得意魔法に水属性を選ぶと同じ水属性の男子と出会ったり好かれやすくなるのだ。
ヒロインが使用したのが、ルシウスと相性の良い炎属性の魔法でなかったのが意外だが廊下で燃やされるのも困る。
喫茶店で彼氏の浮気相手に御冷やをかけられるというシチュエーションを思い出しながら私は袖で頬の水を拭った。
そして目の前の光景に一瞬呆然とする。頬どころか全身ずぶ濡れ状態の婚約者がそこにいた。
コップの水レベルではない。川にでも落ちたのかと見間違うほどだ。
「なーにやってるんですか、ルシウス先輩!ここは学校ですよ!」
「ナ、ナズナ?これは……俺は……」
「先生に見つかる前に頭を冷やしてください!」
後輩であるヒロインに叱られ、ルシウスは子供のように狼狽えている。
先程まで女生徒に囲まれ虐められていたとは思えない剣幕でナズナという名の少女はルシウスに詰め寄っていた。
彼女が恋敵の私ではなく彼氏相手に激怒していることに若干好感を抱きながら私はこの隙を逃がさなかった。
ヒロインに怒られているルシウスからそっと離れ、一目散に女子トイレへ逃げ込む。
そして個室に入り制服のポケットから携帯電話によく似た道具を取り出した。
これはマジカルフォンといって通信魔法が使えない者でも同じ機器を持っている相手と遠隔通話が出来る便利アイテムだ。
ゲーム内ではヒロインが攻略対象を休日デートに誘う為に使う。高級品だが非常に便利なので学園内の生徒は大抵持っている。
私も入学の際に父からこの端末を与えられた。震える指でマジカルフォンを操作し、家に連絡を取る。
電話に出た使用人に体調不良で早退する旨を伝え迎えの馬車を裏門に手配するよう頼んだ。
通話を切ると深々と溜息を吐く。やっと帰宅の目途がついて安堵と疲労が一気に押し寄せて来た。
気配を窺いながら個室から出る。自分以外誰もいなかった。
流石にルシウスは女子トイレまでは追ってこないようだった。危惧していたヒロインの存在もない。
ナズナという少女は予想以上に気が強い性格のようだった。なるべく彼女とは対立したくない。
私はもうルシウスと絡むつもりはないので先程の件は恋人同士の問題として処理して欲しい。
ヒロインの説教でルシウスが正気に戻ってくれればいいのだが。
授業開始のベルが鳴るのを待って私は廊下に出る。そしてそのまま馬車を待つ為校舎の外へ出たのだった。
急に出現した水が顔にかかり私は小さく悲鳴を上げる。恐らくヒロインの魔法だろう。
ゲーム内でヒロインは複数属性の魔法を覚えて使うことが出来る。
リコリスは闇、ルシウスは炎。力の大小はあっても、一属性しか扱えないのが普通の世界。
けれどヒロインは闇以外ならどの属性の魔法でも覚えることが出来る。これはとても珍しいことだ。
だからこそ彼女は貴族学園に魔法特待生として通える。
更に得意魔法の系統によって攻略対象キャラが出現したり好感度の上がりやすさが変わる。
ゲーム開始時の質問で得意魔法に水属性を選ぶと同じ水属性の男子と出会ったり好かれやすくなるのだ。
ヒロインが使用したのが、ルシウスと相性の良い炎属性の魔法でなかったのが意外だが廊下で燃やされるのも困る。
喫茶店で彼氏の浮気相手に御冷やをかけられるというシチュエーションを思い出しながら私は袖で頬の水を拭った。
そして目の前の光景に一瞬呆然とする。頬どころか全身ずぶ濡れ状態の婚約者がそこにいた。
コップの水レベルではない。川にでも落ちたのかと見間違うほどだ。
「なーにやってるんですか、ルシウス先輩!ここは学校ですよ!」
「ナ、ナズナ?これは……俺は……」
「先生に見つかる前に頭を冷やしてください!」
後輩であるヒロインに叱られ、ルシウスは子供のように狼狽えている。
先程まで女生徒に囲まれ虐められていたとは思えない剣幕でナズナという名の少女はルシウスに詰め寄っていた。
彼女が恋敵の私ではなく彼氏相手に激怒していることに若干好感を抱きながら私はこの隙を逃がさなかった。
ヒロインに怒られているルシウスからそっと離れ、一目散に女子トイレへ逃げ込む。
そして個室に入り制服のポケットから携帯電話によく似た道具を取り出した。
これはマジカルフォンといって通信魔法が使えない者でも同じ機器を持っている相手と遠隔通話が出来る便利アイテムだ。
ゲーム内ではヒロインが攻略対象を休日デートに誘う為に使う。高級品だが非常に便利なので学園内の生徒は大抵持っている。
私も入学の際に父からこの端末を与えられた。震える指でマジカルフォンを操作し、家に連絡を取る。
電話に出た使用人に体調不良で早退する旨を伝え迎えの馬車を裏門に手配するよう頼んだ。
通話を切ると深々と溜息を吐く。やっと帰宅の目途がついて安堵と疲労が一気に押し寄せて来た。
気配を窺いながら個室から出る。自分以外誰もいなかった。
流石にルシウスは女子トイレまでは追ってこないようだった。危惧していたヒロインの存在もない。
ナズナという少女は予想以上に気が強い性格のようだった。なるべく彼女とは対立したくない。
私はもうルシウスと絡むつもりはないので先程の件は恋人同士の問題として処理して欲しい。
ヒロインの説教でルシウスが正気に戻ってくれればいいのだが。
授業開始のベルが鳴るのを待って私は廊下に出る。そしてそのまま馬車を待つ為校舎の外へ出たのだった。
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