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56.嘘つきは誰か
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「私は生憎そういったことについて知識が浅いんだ、自分には必要のない行為だと思って生きてきたから」
まだ頬を若干赤く染めながらアリオスが言う。
その発言を俺は途中まで微笑ましく、その後は氷を飲み込んだような気持で聞いた。
「あ……」
そうだ、彼は言っていた。自分は子供を作れない体だと。
体を蝕む毒が自分の子供にも影響するかもしれないからと。
初心だとか純粋培養だとかそんな事情ではなく、彼に許されない行為だからその手の知識から遠ざかっていたのだ。
「ごめん、俺……」
「君が謝る理由がわからない、寧ろ私が謝罪する立場だ」
自分の都合で言葉を選び間違えて伝えてしまった。
そう頭を下げるアンブローズ家の現当主を見て、俺は初めて彼に毒を盛った人物を憎いと思った。
己でも不思議なほど許せないと感じたのだ。犯人のことをほぼ何も知らないのに。
「いや、謝る必要は無いよ、俺は偽者の花嫁だし。俺こそずっと騙し続けてごめん!」
「……先程話した通り私は最初から君がセシリア嬢ではないと気付いていたが」
「でも俺が嘘を吐き続けていたことは変わらないから、そこはきっちり罰して欲しい」
ついこの前まで罰せられるのを恐れ続けていた自分の発言とは思えない。
でも彼について理解が深まった今、こんな相手を騙そうとしていた罪悪感に耐えられなくなったのだ。
アリオスに最初から気づいていたと言われ、更に怒っていないアピールをされてからの謝罪なので情けないことこの上ないが。
「罰か……」
ぼそりと呟かれる。
そこまで酷い目には遭わされないだろうという意地汚い打算は正直ある。
しかし、罰という単語自体はやはり怖い。俺は目をぎゅっと瞑った。
「罰が必要なのは君の両親だと私は思うが」
静かな声で言われ俺は父と母の姿を頭に思い浮かべた。
それはそうだ。セシリアの失踪を花婿のアリオスに告げず俺を替え玉にする判断をしたのは二人なのだから。
「確かに計画を立てたのは俺の両親だけど、でも俺だって偽者花嫁になることを受け入れたわけで……」
「君は偽者花嫁ではないよ、セレスト・リード伯爵令息」
急にフルネームで呼ばれ、驚いて目を見開く。
氷色の瞳は見つめられるだけで凍えそうな雰囲気を纏っていた。先程までのアリオスと全然違う。
これはもしかして、深く怒っているのか?
「……身代わりではあるが偽者ではない。リード伯爵夫妻は何も知らない君を私への贄に差し出したんだ」
人形公爵が長く独身で居続ける理由を邪推したのだろう。
そう淡々と言いながら彼は一通の手紙を服から取り出した。
まだ頬を若干赤く染めながらアリオスが言う。
その発言を俺は途中まで微笑ましく、その後は氷を飲み込んだような気持で聞いた。
「あ……」
そうだ、彼は言っていた。自分は子供を作れない体だと。
体を蝕む毒が自分の子供にも影響するかもしれないからと。
初心だとか純粋培養だとかそんな事情ではなく、彼に許されない行為だからその手の知識から遠ざかっていたのだ。
「ごめん、俺……」
「君が謝る理由がわからない、寧ろ私が謝罪する立場だ」
自分の都合で言葉を選び間違えて伝えてしまった。
そう頭を下げるアンブローズ家の現当主を見て、俺は初めて彼に毒を盛った人物を憎いと思った。
己でも不思議なほど許せないと感じたのだ。犯人のことをほぼ何も知らないのに。
「いや、謝る必要は無いよ、俺は偽者の花嫁だし。俺こそずっと騙し続けてごめん!」
「……先程話した通り私は最初から君がセシリア嬢ではないと気付いていたが」
「でも俺が嘘を吐き続けていたことは変わらないから、そこはきっちり罰して欲しい」
ついこの前まで罰せられるのを恐れ続けていた自分の発言とは思えない。
でも彼について理解が深まった今、こんな相手を騙そうとしていた罪悪感に耐えられなくなったのだ。
アリオスに最初から気づいていたと言われ、更に怒っていないアピールをされてからの謝罪なので情けないことこの上ないが。
「罰か……」
ぼそりと呟かれる。
そこまで酷い目には遭わされないだろうという意地汚い打算は正直ある。
しかし、罰という単語自体はやはり怖い。俺は目をぎゅっと瞑った。
「罰が必要なのは君の両親だと私は思うが」
静かな声で言われ俺は父と母の姿を頭に思い浮かべた。
それはそうだ。セシリアの失踪を花婿のアリオスに告げず俺を替え玉にする判断をしたのは二人なのだから。
「確かに計画を立てたのは俺の両親だけど、でも俺だって偽者花嫁になることを受け入れたわけで……」
「君は偽者花嫁ではないよ、セレスト・リード伯爵令息」
急にフルネームで呼ばれ、驚いて目を見開く。
氷色の瞳は見つめられるだけで凍えそうな雰囲気を纏っていた。先程までのアリオスと全然違う。
これはもしかして、深く怒っているのか?
「……身代わりではあるが偽者ではない。リード伯爵夫妻は何も知らない君を私への贄に差し出したんだ」
人形公爵が長く独身で居続ける理由を邪推したのだろう。
そう淡々と言いながら彼は一通の手紙を服から取り出した。
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小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
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